Dive

オフィス街のカフェ
君を待つのかただの休憩なのか
定まらない気分で 苦いラテを啜る

さっき見た
パリの街を切り取った写真はすべて
誰かがふわりと置き忘れた憧れが
濃縮され、現像されていた

疲れ、不安、再起、嘆き、
眠り、渇き、飢え、

嘘の最果てにいる感覚が
僕をここに呼び戻すのだ

才能、能力、自信、不安、欺瞞、虚飾、打算、絶望、小賢しさ、
一切を脱ぎ捨て

Dive 深淵を探る
心に刺さり、えぐり、骨を断ち、血を噴き上げ、傷を癒すもの

心の底にあるものは何?
空虚、虚無、善意、悪意、蠢動、鳴動、愛欲、嫉妬、侮蔑、怠惰、貪欲、諦観、渇望、羞恥、顕示、創造、静謐、辛辣、萌芽、郷愁、孤独、衝動、乱数、思惟、マグマ

本当でない言葉は捨てる
廃棄し埋め立てた言葉でできた僕の島
何て醜悪、何て虚無的

底から這い出てくるもの
逆さまにして零れ落ちるもの
澱のように壜底に残るもの

いつか朽ち果てる肉体
端がもう綻び欠けている
いつか消滅する心
捻じれ縒れて傷んでいる

深海から砂浜まで
重い堆積物を置き去りにして
白く手触りのいい砂を持って行く

凡ゆる言葉が手垢にまみれている
軽薄なナレーションに頭の中で変換され得る

君の心象はそこに有る?
無いものを有るように言うと
吐き出された言葉はズレる

そうして極偶に生まれた心象は
平凡で何ら奇跡的な妙も無く
飾られた言葉の砂に埋もれる

気がつけば何かに成ろうとして
決して何者にも成れはしない
僕は僕でしか有り得なく
他の何かに言い換えても
自分はそれではないのだから
本物のように思えるはずもない

成ろうとするよりも
行うことの方が本当らしいのだ

2015年の晩秋に
そんなことを僕はスマホのメモ帳に
つらつらと書き留めていて
今読み返し掘り返したので
ここにもそっと置いておく

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