[前置きあり]CAP A ROCK対談 コヤマシュウ(SCOOBIE DO)&田淵智也

※田淵による前置き

「CAP A ROCK対談」SCOOBIE DOよりコヤマシュウさん、そして田淵の対談を公開します。

日々大変な状況が続いているなか4月から実際に始動するはずだったCAP A ROCKも沢山のイレギュラーが発生しております。
僕が通常やっている仕事での対応もあり、CAP A ROCKの全ての準備に抜かりなく取り掛かれているかというと自信がないです。
それを見越して3月いっぱいで動けるところは動いていたのですが、それでも日々やることが増えるので、そうこうしている間にこんなタイミングになってしまっています。

正直当初の予定通りの開催は難しいと思っています。正式なアナウンスは近日中に出すのでもう少々お待ちいただければと思いますが
もともとこのあたりのタイミングでCAP A ROCKの企みをより深く認知してもらうべく、出演者との対談を公開予定でした。
開催が危ぶまれている上に昨今のライブハウスにおける環境の悪さを指摘する行政&世間の声のこともあり、そもそもライブハウスの良いところをアピールしていくみたいなのはいささかタイミングが悪いとは思っています笑
が、ここは初志貫徹、というか現在「止まっている世界」でするべきこととして「動き出した世界」前提で話をしておく、というのは別段悪いことではないと考えました。

ライブハウスへの風当たりが強い、それは今現在現場からの声として批判的な意味で耳にすることが多いです。
でもこの状況下では風当たりが強いのも仕方ないと思ってます。科学的に見て今デメリットがあるとされる場所として反論できる余地はないです。
今後もし状況が改善されたとしてもしばらくは風評被害(というと批判もあるかもしれませんが)が続きそうで、そうなったらできる対策は考えられると思いますが、少なくとも今は無理です。

ただ、今「動き出した世界」前提で話をしたいのは、それでもライブハウスの魔法を信じているからです。
ライブハウスがなければロックバンドは魅力がきちんとユーザーに届かないまま、一つの音楽として認識されると思ってます。
もちろん今のままの環境でノーテンキなことは言ってはいけません。世界的危機という形で新しい価値観が生まれたのだからそれを受け入れる形で生まれ変わらなければいけないと思っています。
そこに心血注いで取り組めるのは、やはりライブハウスを愛する人だけになると思います。僕含め、それが試されるタイミングなのかなと。
バンド、音響や照明や楽器などのテクニシャンスタッフ、 イベンターをはじめとした運営スタッフ、店長や店員、そしてライブハウスを愛するファン。
沢山の素晴らしい人たちが作り上げてきた素晴らしい文化です。
その文化を守るために、がんばらなきゃいけないことは今を受け入れ、未来を考えることです。
誰かの幸せな未来を考えるためには、怒りで解決できることはあまり無いです。それよりもポジティブに前を向いて真剣に考えること。
皆さんの目に見えないところでも、たくさんの人たちが今日も真剣に考え、がんばっています。

話が長くなりましたが、「ライブハウスでロックバンドを見ること」の未来を真剣に考えてるのは今もそうですが元からそうです。
なので、当初の予定通り対談記事を公開します。
対談は3月中旬に行われました。世の中の状況もすでに深刻ではありましたが「止まる前の世界」のつもりで話したということをあらかじめお断りしておきます。
インタビュアーはレジーさん(https://twitter.com/regista13)に担当していただきました。

「動き出した世界」で力を貸してくれる人がこのブログの読者の中にいるのであれば、心よりお待ちしています。

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CAP A ROCK対談 コヤマシュウ(SCOOBIE DO)&田淵智也 「踊れるライブハウスは作れるのか?」

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インタビュー・文/レジー

「自分たちの音楽で、聴いている人を踊らせたい」っていう気持ちはずっとある

---初回のCAP A ROCKの出演バンドという非常に重要な役割をScoobie Doに託そうと思った理由からまずは教えてください。

田淵 今回のイベントには「キャパの6割までしかチケットを売らない」「ドリンクが飲みやすい」という基本的な考え方があるんですけど、そういう「お客さんに動くスペースがあって、かつお酒も飲める環境」で見てもらいたいバンドを考えたときに真っ先に思い浮かんだのがスクービーだったんですよね。スクービーのライブで展開されているような、お客さんが楽しそうに踊っている光景をいろんな人に見てもらいたい!と思って今回お声がけさせていただきました。

コヤマ ありがとうございます。

田淵 ライブに来ている全ての人たちが思わず踊っちゃう、ああいう空間を生み出せるバンドって決して多くないと思うので。ライブにも行かせてもらってますけど自分も自然に身体が動いちゃいますし、何であそこまで会場の温度が上がっていくんだろう?って不思議にも思います。スクービーとしては、「踊らせてやろう」みたいなモチベーションでライブに臨むんですか?

コヤマ 「自分たちの音楽で、聴いている人を踊らせたい」っていう気持ちはバンドを作ったときからずっとあるね。俺らは結成当初、東京のモッズシーンのバンドが好きで、音楽的にはソウルやファンク、R&Bとかからの影響がものすごく強いから、初めから「踊らせてなんぼでしょ」とは思ってたかな。一緒にバンドを始めたマツキ(タイジロウ)くんにはもしかしたらもっと具体的な目標とかもあったのかもしれないけど、自分にとっては「武道館でやりたい」とかよりも「自分たちの音楽でお客さんが我を忘れて踊ってたら最高にかっこいいな」とか、そういうことの方が大事だった。

田淵 最初から「踊らせる」ことがバンドにとっての重要なポイントだったんですね。

コヤマ うん。ただ、ライブのやり方自体は25年くらい活動を続けている中でだいぶ変わってると思う。今振り返ると、ターニングポイントが2つくらいあったなと。最初のタイミングが、バンドを始めて4年目か5年目くらい。結成当初のバンドの理想形として「60年代あたりのファンクやR&Bを下敷きにした音楽を4人組でドカンと鳴らす」っていうのがあって、そういう感じで曲を作ってたんだけど、いざライブでやってみるとあまりお客さんが踊り出さない。そういう中で、「自分たちが興奮しているものでライブに来ているお客さんをもっと興奮させるにはどうすればよいか?」っていうのを改めて考えるようになったんだよね。その時に自分たちにとってしっくり来たのが、1968年くらいのジェームス・ブラウン(JB)のライブ盤。あの人のライブって「ライブ全体がひとつなぎ」って感じで、お客さんとのコールアンドレスポンスもそれ自体が音楽の要素として成立してたりするんだよね。それまではコールアンドレスポンスってどうにも予定調和になっちゃうからあんまりやりたくなかったんだけど、うまくライブに盛り込むとお客さんとも意味のあるコミュニケーションがとれるんだなって気づいたり。このスタイルだとお客さんのテンションを自然と上げられそうだなと思って、そこからはたとえば「アウトロと次の曲のイントロを無理やりつなげてみる」とか、ライブ単位でいかに盛り上がりを作るかを意識するようになった。で、そこから数年経って、2つ目の衝撃として影響を受けたのが、2003年から2004年くらいに出会ったライムスターのライブ。

田淵 ライムスターですか。なるほど。

コヤマ 彼らのライブを初めて体験したときに、JBのやり方を今時っぽい形にうまくアップデートしてるなと感じたんだよね。さらに、音楽と言葉の組み合わせ方とかも含めて、お客さんを楽しませるのがめちゃくちゃうまい。俺らはすでにメジャーデビューした後ではあったけど、そういうのを見てから「踊らせると一口に言ってもいろんなアプローチがあるんだな」ってさらに試行錯誤するようになった。昔の自分たちのライブ映像を見ると、「踊らせたい」って気持ちが出すぎちゃってたのか結構高圧的なんだよね。言ってることもきつめで、今から考えると「そんなのでお客さん踊るわけないじゃん!」ってことを平気でやってたんですよ(笑)。ライムスターのやり方を知ってからは、単に「踊らない奴はアホ」みたいなモードを前面に押し出すんじゃなくて、「北風と太陽」じゃないけどもっとうまいやり方でお客さんの心を開放できたらいいなと考えるようになったかな。

田淵 様々なトライアンドエラーを経て、今のスクービーのライブの雰囲気ができ上がってるんですね。長年の活動の中で、お客さんのノリ方や踊り方の変化とかって感じたりしますか?自分の体感として、だんだん「手だけを動かす人」が増えている印象もありつつ、一方では身体全体や足を動かす人が減っている気もするんですけど…

コヤマ ああ、なるほど。確かに動かなくなってきている感じはちょっとあるかもね。「全身で踊る」というよりは「手や腕を使って応援する」みたいな人が増えてたりするのかな。

田淵 今回のイベントでライブハウスにこだわっているのは、そういったお客さんの音楽の楽しみ方の話とも関係しているんですよね。ライブハウスで聴くバンドサウンドって、たとえば野外のフェスで聴くよりも「身体が持っていかれる」みたいな体感があると思うんです。充分なスペースがある状態でそういう音楽に触れたら、今までは手しか動いていなかった人が身体全体を思わず動かしてしまうかもしれないし、他にも今までしたことのなかった楽しみ方を見つける人がいるかもしれない。CAP A ROCKでそういう体験をする人が生まれてくれたらいいなと思う気持ちもあります。


目の前にいる人たちと「楽しい!」って想いを共有する

---「踊らせる」という観点に関連した話題として、2010年代の半ばくらいから「四つ打ちダンスロック」なんて言葉で形容されるロックバンドが複数登場して人気を博しました。「ダンスビートを意識したバンドサウンド」という意味ではそういったムーブメントとスクービーにも共通項がないわけではないのかもしれませんが、先ほどもお話のあったファンクやR&Bといったブラックミュージックの要素の有無から考えるとスクービーのユニークさが際立つように思います。

コヤマ ブラックミュージックをまるまるコピーするところからスクービーは始まったけど、今はもっとオルタナティブなものというか、「ロックンロールバンドがやるファンクミュージック」としてそれなりに独自のものになってるんじゃないかな。四つ打ちのアレンジそのものについては曲に合致していれば別に悪いものではないと思うんだけど、そういうのって「スタイル」として広まっていくのが常じゃないですか。もともとバスドラムの四つ打ちもディスコで鳴っていたもので、そこでそのサウンドが生まれた理由が当然あるんだけど、だんだんそういう意味性が薄れて、形式だけがいろいろな場所で使われていくようになるわけだよね。でも、俺らは昔のファンクやソウルがずっと好きで、そういう音楽が本来持っていたマインドも含めて受け取ってきているつもりです。だから、「それをやる方がフェスで盛り上がるから」みたいな理由で四つ打ちをやるバンドがいるんだとしたら、サウンド面以上にメンタリティの部分でちょっと違うかもしれない。ブラックミュージックって元をたどれば「コミュニティの音楽」だと思うし、ブルースでも何でも「世界的なヒットを目指したい」とかってことじゃなくて「そこにいる人たちと感情を分かち合いたい」っていう気持ちから生まれたものだよね。俺らが音楽をやっていて一番喜びを感じるのもまさにそういうところ、目の前にいる人たちと「楽しい!」って想いを共有することだから。まず自分たちがグッときてる、それと同じポイントで見ず知らずのお客さんもグッときてる、嬉しい、っていうサイクルが大事。なんか原始人みたいな感じだけど(笑)。

田淵 わかります。「同じことを感じる人がここにもいた!」っていうのは、音楽をやっていくうえでの幸せな瞬間ですよね。

---「お客さんを踊らせる」という切り口で考えたときに、田淵さんとしてはUNISON SQUARE GARDENとTHE KEBABSで向き合い方の違いとかはありますか?

田淵 自分はリスナーとしては「ビートがあればどんな音楽でも踊れる」っていう感覚だし、作り手としても「踊らせたい」という意識は特段持っていないので、「このバンドではこうやって踊らせよう!」みたいに考えたりはしないんですけど…でも作り方によって結果的に差は出てると思います。ユニソンに関しては自分にとっての気持ちいメロディをてんこ盛りにする形で曲作りをするけど、ケバブスについてはその反動もあってかとにかくシンプルなものをやろうとするので、結果的に合わせるビートもシンプルになるんですよね。

---斎藤(宏介)さんと佐々木(亮介)さんのボーカリストとしてのタイプの違いもありますよね。

田淵 そうですね。息継ぎなしでキーの高いメロディを歌いこなせる斎藤くんの特殊技能を活かすことのできるメロディと言葉の詰め方をユニゾンではやろうと思っているし、ああいう人がさらっと棘のあることを言うかっこよさを表現できそうな歌詞を書いています。逆に、佐々木はシンプルな言葉を連呼するのがかっこいい。ケバブスはメロディも言葉もビートもシンプルだから、そっちの方が踊りやすいって人もいるだろうなとは思います。

コヤマ 実はまだケバブスのライブは見たことがないんだけど、ユニゾンの音楽は確かに展開もどんどん変わるし言葉も詰め込まれているから「ライブで踊りやすい音楽」ではないのかもしれないね。でもユニゾンのライブを見ていると、3人が全力全開でぶつかり合ってることへのプリミティブな興奮がすごくある。ユニゾンのファンの人たちは、「踊りたい」ということよりも「3人のエネルギーに乗っかりたい、飲み込まれたい」みたいな気持ちでライブを楽しんでるんじゃないかな。


俺らなりの「踊れるライブ」を見せたい

--コヤマさんは今回の企画趣旨をお聞きになったとき、率直にどんな印象を持ちましたか?

コヤマ 面白いなと思いましたよ。それと合わせて、何も予想ができないなとも思った(笑)。「キャパ6割まで?2回回し?やったことないな」みたいな。ただ、俺らはライブができるんだったらあんまり細かいことは気にしないんですよ。ちゃんと音が出せる環境であれば問題なくて、やったことないことなら楽しそうだからさらにウェルカム。だから、このイベントに出るのはすごく楽しみですね。こういうイベントを田淵くんがやるっていうのも適任だと思うし。大きい会場でもライブをやって、かつ客としてもいろいろなライブに参加して、そのうえで「ライブハウスでこんなことをやりたい」って言っているわけだから、すごく説得力がある。きっとイベントの形もこの先さらに変わっていくのかもしれないね。

田淵 そうですね。いろいろ試しながらベストの形を探っていきたいと思ってます。2回回しをする中でのバンドの負担も想定して1バンド30分にしていますけど、もしかしたら40分くらいの時間があった方がいいライブをやりやすいんじゃないか?とかすでに思っていたりもしていて。自分がスクービーを見るときは2マンが多くて、大体50分くらいで強烈なクライマックスに到達するステージはイメージできてるんですけど、30分となるとやり方は変わりますか?

コヤマ 変わる…と思うよ。でも濃度というか、最高沸点は同じにするつもり。まあやったことないからできるのかもわかんないけど(笑)、状況に応じてどういうライブにするのか考えるのはメンバーみんな好きなので、「ケバブスとやるCAP A ROCK」でどんなステージをやればいいのかはいろいろ練ることになると思います。思いっきり入れ込んだやり方もあれば、あえてちょっと外す、すかしてみる、みたいなやり方もあるだろうし。その時に一番楽しいと思えるやり方で全力でやる、そうやって俺らが夢中になってる瞬間がお客さんに伝わっていくことこそがライブの良さだから、今回も当然そうなるようにやれればと思います。「どうだ、楽しいだろ!俺らも楽しい!」っていう。

田淵 今からワクワクします。もしかしたら普段と少し違う環境かもしれませんが、スクービーにとっても意味のある時間になれば嬉しいです。

コヤマ 新しいイベントに呼んでいただいて俺らとしても感化される部分もあるし、このイベントだからこそできることをやりたいっていうのはほんと思ってる。「踊りやすいスペースががそれぞれのお客さんにある」のがこの日のポイントだと思うので、俺らなりの「踊れるライブ」っていうのがどういうものなのかちゃんとお見せしたいですね。この日ならではのものをスクービーとして4人でガツンとかまします。

田淵 楽しみにしてます!