バレエ感想㉛「バレエの美神2023」東京公演
これだけの一流ダンサーを見れる機会はないので、このガラを開催してくださった光藍社様、バレエファンとして心から感謝しています。
今回の公演ではアンジェリーナ・ヴォロンツォーワが他の追従を許さない存在感と技術力で圧倒していました。ナチョ・ドゥアトのコンテ"Cor Perdut"をエルネスト・ラティポフと踊っていましたが、アンジェリーナの力強さと身体能力がすごく、表現力も力強かったです。
自分はコンテンポラリーに興味がないと思っていましたが、上手な人は何踊っても上手だし、上手な人の踊りならなんでも興味あると思いまいた。振り付けを自分ものにしていて、独自の世界観に圧倒されました。もちろんクラシックもドンキは大盛り上がりで、タリスマンは今まで見た中で1番のタリスマンでした。衣装がピンクのキラキラのスカートで、本当に可愛かったです。
ガラ公演だと省エネモードのダンサーもいますが、前回も今回もアンジェリーナは120%の踊りを見せようとしてくれているのがよく伝わってきて、本当に嬉しかったです。レヴェランスも全部の階のお客さんをきちんと見渡し、深々とお辞儀する様子がとても印象的でした。
怪我でAプロを降板したオリガ・エシナは、Bプロで演目をプティの「こうもり」アダージオに変更し登場。前回も今回もオリガ・エシナ目当てにチケットを買ったので、やっと見れて本当に嬉しかったです。この世のものとは思えない神々しさがあり、やはり特別なバレリーナだと感じました。早く怪我が治って、またすぐに元気なオリガを見れますように。
ヤコブ・フェイフェルリックの動きはポジションといいポーズの決め方といい、ルグリそっくりで、まさにルグリチルドレンだと思いました。ヌレエフ時代のルグリを彷彿とさせる優雅な動きで、見た目の優雅さと相まって、ものすごい存在感でした。
永久メイさんはすっかり少女から女性になったなとしみじみ。初々しいと言うよりも、ものすごく色っぽくてドキドキしてきました。ジゼルは腕の動きが繊細で、本物のウィリのようでした。オーロラはキラッキラで、群を抜いて綺麗だと思いました。
スチョーピンも派手な感じというよりは、きっちり真面目に決めるという感じでしたが、動きが端正で、ロシア仕込みのパがとにかく美しかったです。ムンタギロフもですが、ロシアで厳しい基礎訓練を積んだダンサーの5番ポジションの美しさたるや、芸術品です。
吉山シャールルイ・アンドレさん、バレエアステラスも今回もパートナーが降板というトラブル続きで大変そうでしたが、久々にカッコいいコンテンポラリーを見れて楽しかったです。
吉山さんの存在感と情熱の強さを感じましたし、照明やスモークをうまく使い、吉山さんの演目には裏方さんの熱い思いも感じました。振付家と試行錯誤しながら、沢山の人と一緒に舞台を作りあげている、そんな誇らしい気持ちがよく伝わってきました。
コジョカルは何にでもなれるダンサーで、オーロラの初々しさが本当に可憐でした。オーロラの衣装はドガの踊り子みたいな色合いとスタイルで、よく似合っていてとても素敵でした。オーロラではキラキラの純真なお姫様でしたが、マノンは本当に色っぽくて、それでも恋する様子がよく伝わってきて、まさしく女優だなと思いました。ムンタギロフは相変わらず端正で。ザ・王子様、という感じです。
コワリョーワはすっかりボリショイのダンサーになったなと感じました。ワガノワやマリインスキーに代表されるサンクトペテルブルク的な優雅さはすっかり消え失せ、ブイブイバンバン踊るボリショイの女に。もちろん美貌とスタイルは素晴らしいのですが、前回見た時は少女のようだったアリョーナはゾベイダが似合う艶やかな女性となり、1人の女性の成熟を見た気がしました。
最後に、戦争の影響かロシア組のトウシューズが変わったことが気になりました。メイさんヴォロンツォーワ含め、ロシアのダンサーはゲイナーミンデンを使う方が多かったですが、メイさんはグリシコ、ヴォロンツォーワも足音がするメーカー、コワリョーワは多分ブロックを使っていました。
足音としてはコジョカルのゲイナーより、コワリョーワのブロックの方が静かだなと。オリガ・エシナは以前はゲイナー使っていたけれど、今はなんなんだろう・・・。多分ゲイナー?
早く世界に平和が戻り、またすぐに沢山の舞台が見られることを願ってます。