バレエ感想⑥英国ロイヤルバレエ団「くるみ割り人形」inシネマ

主演の金子扶生さんのインタビューと日本語キャストはこちら

ロイヤル・バレエの金子扶生に聞く～ロンドンの冬の風物詩『くるみ割り人形』に主演し日本でも映画館公開 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

1幕目

まず、さすがだなと思ったのは、年寄りはきちんと年寄り相応の演技をしてて自然でした。例えばワルツでみんながすぐ立ち上がる所で、ゆっくり立ち上がったり、とにかく動きの全てがナチュラルで、バレエじゃなくて、普通の映画を見てるような自然さでした。

クララ役の前田紗江さんは、子供の中にいると若干お姉さん感は否めないものの、きっとヨーロッパ人から見たらアジア人は全員幼いから大丈夫なんだろうなと思います。足捌きがとても綺麗で、とても可愛い。英語力も確かで、これだけコミュニケーション出来るなら、振付家や他のダンサーともきちんとやり取りできるだろうな、という印象で、前田さんは英国でダンサー生命が長そうと勝手に予想。

戦いのシーンに関しては、さすがヨーロッパ人、ネズミも兵隊もスタイル良すぎて羨ましい。家の模型から湧いてくるネズミ達、お城の模型から出てくる兵隊達など、物語の流れが唐突でないのがとてもいいと思いました。

王子のジョセフ・シセンズは以前のヒップホップとは全然違うイメージで格好良かったです。１幕目は若干硬いかなという印象は受けましたが、とにかく動きが丁寧で滑らかでした。

雪の精で唯一アップになる方がまさかの佐々木須弥奈さん（0:51あたり）で、とても可愛い！Twitterで書いてる人もいますが、コールドの中にはダークなタイツを履いてる人もおり、NYCBの昔のビデオを思い出しました。肌色に合わせたタイツはロイヤルバレエの方針なのでしょうか？

休憩中のTwitterとインタビュー

個人的には、幕間に同時中継を見ている人からの感想Tweetが流れてくるのがとても面白かったです。#ROHnutscrackerと付けられたTweetがどんどん流れてくる様は、世界中で一緒に映画を見ている気分を味わえます。日本では録画のみの放送ですが、次はぜひ生放送してほしいです。

ダーシー・バッセルとトレローニーのインタビューも面白く、司会の2人がセットの巨大プレゼントを前にして「ダーシー、プレゼントをどうぞ！」とかちょいちょい笑えます。とにかくオーケストラも素晴らしいし、セットも素晴らしい。配線を変えて全てLEDにしたらしく、スケールが壮大です。

ちなみに今年は正月から新国立バレエのくるみを連日見ていたのですが、セント・ニコラスの登場や、ワルツの感じなど、振付のウェイン・イーグリングは相当ピーター・ライトバージョンの影響を受けてると感じました。まあずっとロイヤルにいたから当然っちゃ当然ですがね。

2幕目

カメラに映る位置に再びの佐々木須弥奈さん！２幕はクララと王子は金平糖のパドドゥまで出番なしか、座ってみてるものが多い気がしますが、ピーター・ライト版では2人とも踊りっぱなしです。

ちなみに個人的に一番印象に残ったのは、メリッサ・ハミルトンとバレエボーイズのルーカス・ビヨルンボー・ブレンズロッドの「アラビアの踊り」です。なんと、アラビアの踊りで人生初めて眠くならなりませんでした。ルーカスはすっかりセクシーに、そしてバレエ団随一の美人のメリッサ・ハミルトンはものすごく身体能力が高い！美男美女がものすごい技を広げるアラビアの踊り、すごい迫力でした！

中国の踊りも2人の身体能力が高くて凄かったです。1人が日本出身の中尾太亮さん。アジア出身のダンサーが踊るとなんだか自然でいいですね。そしてロシアの踊りはシセンズ王子も一緒になってノリノリで踊ってました！花のワルツは登場人物多くて華やかでした。4人のソリストの佐々木万璃子さん、コールドの佐々木須弥奈さん、と日本人沢山いて嬉しかったです。

金子扶生さんとウィリアム・ブレイスウェルはこれぞプリンシパル！という迫力！コジョカル→ヌニェスと来て、次のロイヤルの女王はナグディか金子さんだなと確信。テクニックも凄いが、存在感と迫力が素晴らしく、コーチのダーシーも褒めちぎっていました。

ピーター・ライト版は最後の結末として、夢で終わるだけじゃなくて、想像の余地があるのがとても良かったと思います。とにかく、見ていてとても楽しいバレエでした。ロイヤル・バレエ団、日本でくるみ割り人形もやってくれないかな。

ロイヤルは多様性アピールを方針にした？

勝手な想像ではありますが、今回のキャストと映画をみた私の第一印象は「ロイヤルバレエの今後の方針は多様性アピールかな？」ということです。例えば主演キャストにしても、金子さん・前田さん→アジア系、シセンズ→アフリカ系、ブレイスウェル→白人・そしてゲイとの情報あり、という感じでかなりバラエティに富んでいます。
また、雪の精や花の精では、ダークな肌を持つ方は同じ色のタイツを履いていました。一度気になるとつい見てしまいますが、大勢で動くとそこまで気になりません。
これだけ沢山の属性を持つ方々がまとまっているのはロイヤルの強みですし、ロイヤルバレエは今後多様性アピールを軸に動いていくのかなという印象を受けました。

とにかく見ていて幸せな気持ちになるくるみ割り人形でした。