大好きな監督 ウディ・アレンについて(2)

はい、昨日の続きです。
誰がこれ二回に分けてまで見るんですかね。まぁいいですね。そんな事は。

というわけで、前回は結果的にウディアレン作品の見どころというかこういうところに注目したら面白いよ的な話で終わりましたので、今回は具体的にどの作品を見たら良いのかというオススメ作品を書いていきたいと思います。
なるべくネタバレはしないようにしたいですが、そうなると良いところとかも書きづらくなっちゃうので、ネタバレ気にする人は太字にしたタイトルだけ見てください。

まず最初に初めて見るのにオススメのウディアレン作品を黄金時代のから1本、比較的最近のから1本の2本紹介しますね。

・ハンナとその姉妹
カイロの紫のバラとも迷いましたが、やはりハンナで。
1番有名なアニーホールを初めに見る人が多いと思うのですが、本当にウディアレン作品を一本も見ていない状態だと、アニーホールはあまりにもウディアレン味が強すぎる気がすぎる気がするんですね。アニーホールでスタートしてしまうとあまりの味の濃さに苦手だと判断してしまう人が多いのではと思い、自分は初めてにはハンナとその姉妹をお勧めします。
話はタイトルそのままハンナとその姉妹、そして各々の夫や恋人も含めて、恋愛や人生の悩みを描いた群像劇です。これがまた良くできているんですよ。
また、いつものごとく不倫の話もあるんですが、キャラが多くてそれぞれ別の話をしているのだけどちゃんとまとまっている。特に好きなのはウディアレンが演じるキャラで、人生に絶望し、いつか来る死に怯えて悩む男が後半映画館で映画を見ながら人生について理解し、語るシーンは落ち込んだときに何度も見ているぐらい大好きな名シーンです。
またなぜ初めてにオススメかというとウディアレンには珍しく全てがある程度スッキリして終わるので、初めて見る方にもウディアレンってなんか色々理屈っぽいけど悪いやつじゃないなって思ってもらえるかなと思ったからです。
ウディアレンらしさが詰まってて、こういう監督だよってのが伝わる素敵な作品だと思います。

・ミッドナイト・イン・パリ
比較的新しめの方は順当にもうこれですね。よく考えたらこれとハンナと〜がウディアレン作品の収入1位と2位ですかね。まぁそれは良いか。
まぁもうこれもめちゃくちゃ有名ですよね。ウディアレンの作品って意識しないで見た人もたくさんいるかもしれません。
まぁ近年で1番売れているってのもあるし、話の展開がうまい上にわかりやすくて革新的という本当初めての人でも普通に楽しめる一本かと。
パリ旅行に来た婚約中のカップルの男が真夜中のパリをふらついていると一台の古い車に乗せられて昔の黄金時代と言われたパリにタイムスリップしてしまうという話ですね。
またこれがタイムスリップだけでなく不倫とかの要素もしっかり入れてくるし、この「どの時代だって人は昔が良かったとないものねだりを繰り返している」っていう自分を皮肉るようなメッセージ性ももうめんどくさい奴の考えなんだけど、わかりみありすぎてたまんないですよね。
この作品はウディアレンは出演してないのですが、主演のオーウェンウィルソンがもう明らかにウディアレン的な喋り方とか手の動きをしててもはや乗り移ってるような域なので、しっかりウディアレンらしさを感じられる作品になってますね。
まぁ普通にウディアレンということを意識しなくても素晴らしい作品なので、新しめの作品から入りたい人はぜひ。

ではここからは、普通に何作かオススメの作品紹介していきますね。

・アニー・ホール
満を持して大傑作アニーホールですね。もうウディアレンの最高傑作とも言われている1作ですね。
ダイアンキートン演じるアニーホールとウディアレン演じるアルビーシンガーの出会いから別れまでをアルビーシンガー自身のこれまでの人生と共に振り返っていくという話。
これなぜ初めて見る作品に選ばなかったかはさっき上でも書いているんですが、アニーホールって意外とウディアレンの作品群の中だと異質な方に分類されると思うってのもあるんですね。
黒い背景に白字でタイトルが出てジャズが流れて作品が始まるっていうのがウディアレン作品のほぼ決まりと言ってもいい共通事項なのですが、この作品はジャズが流れないんですね。というか音楽がほとんど無い。一曲だけ流れるのはダイアンキートンが歌う歌だけ。これはウディアレン作品だと珍しいですね。
他にも実験的な演出がすごい多くてスタートからして観客に向かって話しかけて、終始第4の壁を破り続けるし、話していることと別に心の声を字幕にしてみたり、途中にアニメを挟んでみたり時系列をバラバラにしてみたり、とにかく色んな事を試している作品なので意外とウディアレンの作品群全体で見てみるとちょっと毛色の違う印象を受けます。
ただ、ウディアレン演じるキャラはもうこれぞウディアレンというキャラなのでもう結局がっつりウディアレン味が強くはなっているのですが。
とにかくこのアニーホール以降と以前で分けてもいいぐらい、それまでのただ面白くシニカルな視点の作品ではなく、人生や人間を切なく面白く描くようになった変革の作品であり、言うまでもなくウディアレン作品では最も重要な作品です。
まぁ何はともあれ必ず見た方がいいでしょう。

・カイロの紫のバラ
これは世間的にも有名な部類に入るという認識で大丈夫ですかね。。ウディアレン自身もお気に入りとして上げていて、自分的にはオールタイムベスト10に入れるくらい大好きで大事な作品です。
ウエイトレスのセシリアは仕事もうまくいかないし夫は失業中でダメダメで、唯一の楽しみは映画を観に行く事だけでだったんですが、ある日お気に入りの映画を何度も観ているうちに映画内の登場人物が自分に話しかけて来て挙句画面から飛び出て来てしまって騒動になるという話です。
セシリアの現実描写とは裏腹にめちゃくちゃにファンタジーなストーリーなんですが、これがまた良くできているのなんのって、この作品90分にも満たないんですが、だからこそ本当に必要なシーンしかなくてうまくまとまってるんですよね。
後半映画から出てしまったキャラを演じた本物俳優が会いにくる展開とかもう面白すぎるし、そこからのオチが本当にすごい。
まぁどんなに夢の世界が美しくてもそれは現実逃避でしかなく辛くても現実を生きなきゃいけないってのが大きなメッセージになるんですけど、自分がなぜこの作品が大事に思っているかと言うと全てが終わったその先にあるラストシーンに自分が映画を見る理由の全てが詰まっているからなんです。
本当にこのラストシーンがあるのとないのとでは全然作品の印象が変わったと思います。最後全てを失ったミアファローがどこに行き着き、どんな顔をするのか、映画愛が詰まった至高のラストカットをぜひ観て確かめてもらいたいですね。まぁほぼ答え言っているようなものですが
最後のミアファローの顔が自分が映画を観る理由であり、映画が好きな理由です。本当に大事な作品です。

・ウディ・アレンの重罪と軽罪
これもまたミアファローと組んでた時代の名作の一つですね。
冴えない記録映画の監督が冷めきった夫婦関係等にうんざりし、現場で出会った女性に恋をする話と大成功している医者が不倫相手に家族にバラす脅され、殺害を決意する話の二つの話が同時に進行して最後に出会うという構成になっているのですが、これがね、もう共感の嵐というか。
重罪と軽罪というタイトルそのまま医者の不倫相手殺害と映画監督のちょっとした不倫心の対比を描いているわけですが、もうこれが皮肉的なわけですよね。
結局良いことしようが、悪いことしようが神はいないし、人生に何も影響しないっていう結構暗い結論で終わるんですよね。それがたまらなく良い。
ちょっとここからめちゃくちゃネタバレするんですけど、
特にもう自分が共感してやまないシーンが最後の方のウディアレン演じる冴えない映画監督が恋してた女性がずっと一緒になってバカにしてたと思ってた脳みそ空っぽな男と婚約してた事を知るシーンです。
もうあの幾度となく感じた、なんで!っていうさ、そいつはバカじゃん、どこが良いんだよ!って思うけど、結局こういう素直に愛情を表現できる人が、声のデカイやつが勝つんだなってあの切ない感じ!あの顔!あぁわかる!わかりますよ!って思いまくるわけですね。
だからあの展開だけでも満点なんですね。上で紹介して来た作品は比較的ハッピーかまぁ言ってもベターなラストだったんですがこれは結構暗い方なので、ウディアレンの暗いラストパターンを見たかったらまずこれを観るのが良いでしょう。

・ブルージャスミン
ちょっと古めのが多かったので、比較的最近のものを
夫が詐欺罪で捕まった上、拘置所で自殺したため、財産を失った元セレブのジャスミンが妹の家に転がり込むところからはじまり、再起のために奮闘するも元セレブのプライドが邪魔をしてなかなか上手くいかないが、気にかけてくれる男性が現れ再婚できそうになるけど・・というのがなんとなくのストーリーですね。
まぁこの作品近年のだとミッドナイトインパリに次いで評価され、有名な作品かと思います。何より主演のケイトブランシェットの演技が素晴らしいですね。
最初は面白い元セレブの女が、だんだん人に迷惑をかけたり嘘ばっかつくプライドの高くて嫌な女に見えてくるのに、最後まで見るとただただ純粋に夫を愛してただけの不器用で愛らしい女性に見えるという、見た目は変わらないのに演技だけでここまで見せてくる凄まじさですよ。
あとは情報の出し方がうまい。どこで何を見せるべきか、過去のシーンの挟み方がもう絶妙。ここら辺はさすがウディアレンとしか言いようがないですね。
まぁこれもウディアレン味が薄いし、話の構成や話自体が面白いので、見やすい作品かと思います。
近年でも俄然衰えを知らないウディアレンをこの作品で感じましょう。

とりあえず最初の方に見てみるといいのはこんなところでしょうか。
あとは上記以外のオススメを時期に分けてタイトルだけ羅列するので、上記作品でウディアレンに興味を持ったら続けて見るといいでしょう。
※時期の分け方は勝手に決めましたので、別に公式ではありません。

▪️初期(どうしたんだいタイガー・リリー〜スターダスト・メモリー)
・スリーパー
・マンハッタン
・スターダスト・メモリー
▪️黄金期(サマー・ナイト〜夫たち、妻たち)
・カメレオンマン
・ブロードウェイのダニー・ローズ
・夫たち、妻たち
▪️中期(マンハッタン殺人ミステリー〜メリンダとメリンダ)
・ブロードウェイと銃弾
・誘惑のアフロディーテ
・世界中がアイ・ラブ・ユー
・ギター弾きの恋

▪️海外期(マッチポイント〜ローマでアモーレ)
・マッチポイント
・それでも恋するバルセロナ
・人生万歳!
▪️近年(ブルージャスミン〜女と男の観覧車)
・マジック・イン・ムーンライト
・カフェ・ソサエティ

まぁこんなところでしょうか。あくまで自分の好みですが、この作品なら比較的楽しめるかなぁというのをあげてみました。

ようやくこんなところでウディアレンについて、全く知らない人に向けては説明できたのではないでしょうか。まぁ今回オススメの作品をいくつかあげましたが、監督作品は全て基本的な作品のクオリティが高いので、正直ウディアレンが好きな人はどれ見てもある程度面白いし、満足できます。実際自分がそうなんで。
多作なのでゆっくりと1作1作見ていくと長い事楽しむことができるのでウディアレン修行はとてもオススメです。

結論、良いですよねウディアレン。どこか皮肉っぽく色々言っててもやっぱり人生にどこか希望を抱いてたり人間に対する優しい視点を持ってたりするし、映画に対する考え方も、映画は単なる現実逃避で何か崇高なものなんかではない、でも生きるためにとても大事なものなんだって感じが気取りすぎず優しい距離感があって良いですよね。
自分がなんで映画が好きなのかを改めて知ることができたわけで、それをわからせてくれたウディアレン監督はやっぱり大好きな監督なんですよね。

ウディアレン監督の新作が早く日本でも公開される事を願って、そして今後も生きている内に作品を一つでも多く撮ってくれる事を願って、この辺で終わります。
ウディアレン大好きです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?