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量子力学っておいしいの?→ あなたの未来に関わります。

今年の春、とある集まりで「量子コンピュータ」のさわりだけ解説する機会がありました(解説というか、自分で勉強したことを簡単に説明したと言うべきか)。そのとき仕方なく量子力学についても概略を説明したのです。それから半年以上たち、当時出席していた人に会ったら、こう言われました――「あれから私、量子力学が自分の生活にどう役立つのか考えてるんだけど…、わからない」。
うーん…。正直それに即答できませんでした。まぁ、トランジスタなどの半導体は量子力学を使っていると言えなくもないけれど、あれはもはや“ブラックボックスの中”のモノであって、日常感覚では捉えにくいですよね。
なので今日は、量子力学があなたの生活に!――いや人生に!どう役立つのか考えたというお話です。


さっそくですが、もし、この世界に量子力学的効果が存在しなかったと仮定しましょう。すると、世界のあらゆるものの動きは、たぶん古典力学(ニュートン力学)と電磁気学とゴニョゴニョ…で決まってきます(より正確には、相対論的電磁力学と統計力学などと言うべきかもしれませんが)。 高校で習いましたよね?ニュートン力学。

で、そのような古典力学系は、カオス的な挙動を示すことはあるけれど、しかし「決定論」的だと言ってよいでしょう:つまり、初期条件を(精確に)与えさえすれば、その後の系の挙動が一意に定まるのです。

したがって、古典力学的な世界とは、言わば「運命が決まっている」世界です! ――あなたがこのあと、いつ転び、いつ喜び、いつ結婚したりとか、どんな病気にかかるのか、そしていつ死ぬのかすらも決まっている。

逆に言えば、「自由意志」が存在しない世界でもあります。一見すれば自由意志のようでも、それはあらかじめ決まっていた動きのはずということです。


しかし幸いにも?この世界には量子力学的な効果が存在している――

量子力学の本質とは、「この世界には、確率的な事象がある」という主張です。つまり、現在の科学ではまるで計算できない、確率的でランダムな挙動が、この自然界には一部ビルトインされている!という観察事実(にもとづく理論)。今のところ、実験的にこれは支持されています(たとえばヤングの実験や二重スリット実験→Wikipedia)。

というわけでもう結論はでました: 運命論を否定しうるもの、それが量子力学

あなたがいま飲み物を、コーヒーにするか紅茶にするか考え、どちらかを選んだとする――これはたぶん、あらかじめ決まっていたことではない。実に、あなたの「真なる自由意志」の結果である可能性がじゅうぶんにあります。
このように、もし我々が未来を選択できるのだとしたら、それは量子力学的な効果のおかげだろうというわけです。

推測になりますが、おそらくあなたの脳内の量子たち、その量子効果にこそ、自由意志の存在の余地があるのです! 


理数系の教養は国力の礎。サイエンスのへヴィな使い手の立場から、素敵な科学の「かほり」ただよう話題をお届けしたいと思っています。