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YOASOBIの楽曲制作手法にも見られる「オーダーメイドな芸術」が抽象絵画に革命をもたらす可能性(後編)

前編はこちら。

アーティストの松岡さんがZoom背景個展を開催。インタビューしてオーダーメイドな抽象絵画を創るという制作手法は、YOASOBIの楽曲作りと似てるのではないか?という話です。

あれから時間が経ちましたが、ざっと後編を書いておきたいと思います。

まずは最近のPR状況から

1、毎日新聞で取り上げられました

2、めざまし8で取り上げられました

ということで、皆さん興味あるみたいなんですよね。

PRって広告じゃないので、もちろん仕掛けはするけどどう取り上げられるかはメディア側に委ねられるわけです。

今回のマスメディア2社の取り上げ方を見ると、Zoom背景という「時代に即した用途」と、抽象絵画という「芸術は難しいなぁ、わからないや。という一般的な反応を明確に得られるアートっぽいもの」が組み合わさって、広くお茶の間に伝えたい題材として認められたということだと理解しています。

3、Zoom背景の抽象画とYOASOBIの制作過程を構造的に考える

では、Zoom背景の抽象絵画の制作手法が抽象絵画にどう革命をもたらす可能性があるのか。個人的には、この2点が大きいと思います。

・抽象絵画に具体的な日常生活での使用価値を付与したことで、作品そのものの抽象性をより際立たせることができる

・マネタイズのポイントが増える

まず、Zoom背景とYOASOBIの制作過程を比べてみます。

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YOASOBIは実際に交流があるわけではないので、その制作過程はあくまでも推測ですが、お互い似たような構造を持っていると思います。

このマトリクス、縦軸の「作品」と「行為」の差は割と分かりやすいですが、横軸の「抽象的」と「具体的」はやや分かりづらいです。

「抽象絵画は具体的な作品ではないか?」という気もしますが、この場では作品や行為そのものの抽象性を意図して、抽象的なものと分類しています。

ポイントは3点です。

・第三者に分かる明確なモチーフがあると宣言していること

・そのモチーフと接触可能なこと

・作品の抽象度が高いこと

ただし、Zoom背景についてはモチーフは一般人が主なので、常に接触可能ではないところは差異ではあります。また、YOASOBIの楽曲、特に歌詞の抽象性については、前編で記載したいしわたりさんのコメントを参照ください。

4、一般的な制作過程と比べて考える

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一般的な楽曲と比べたときに、より抽象度の高い状態で作品として発表できるのはこの制作手法の良さです。ユーザーの理解を促すための細かな説明を省くことで、アーティストが伝えたい本質だけを抽出することができます。

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抽象絵画にこの制作手法を用いると、同様に抽象的な要素を際立たせることができます。

その抽象的な要素に依頼者や依頼者の周りの人、さらには抽象絵画だけを見た人がそれぞれどの程度心を揺さぶられるかは別問題としてありますが、具体的な利用価値や明確なモチーフがあることにより、本来表現したい抽象性に焦点を当てることができます。

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もうひとつのポイントは、この手法だと依頼の時点で対価が発生するので、マネタイズする箇所が増えているということです。

タイアップできるほどの人気者であれば別ですが、抽象絵画は通常、アーティストの創作が先にあるものでしょう。無名の新人アーティストに年間数十の依頼があるということは稀だと思いますが、モチーフとの対話をもとに制作するという手法なので、数多くの依頼を受けることが可能になっています。もちろん、重要なのはモチーフとの対話なので、依頼を受けないで制作することも可能です。

5、抽象絵画そのものがどう評価されるか?

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ここまで、Zoom背景としてのオーダーメイド抽象絵画の独自性を考察しましたが、最後に今後の注力ポイントを考えたいと思います。

端的には、抽象絵画そのものが誰にどれだけ評価されるか?がポイントだと思います。

YOASOBIの楽曲は、小説をモチーフにしているものの、小説とセットで聞いている人の数はコアなファンだけでしょう。楽曲単体でも一般的に評価されているのが実情です。

一方で、松岡さんの抽象絵画はZoom背景という取り組みおよび依頼者からは評価されているものの、絵画そのものの評価はこれからだと思います。

ただし、マネタイズのポイントがきちんと存在し、かつモチーフも無限に存在することから、プロの現代アーティストとして継続的な活動ができるはずです。この手の活動はまず続けられる人が強いので、作品そのものへの評価は世界観や技術の向上とともにそのうちついてくるのではないかと思います。

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