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ハグとキスとお辞儀

今朝、X(Twitter)で舞踏家の最上和子さんがこんな呟きをされていた。

日本人はハグでもなく握手でもなく、お辞儀をしてきた、ってことの意味を考えさせられました。所作によって次元が移るんですよね。

最上和子さん  X

自分は今までちゃんとしたお辞儀をしてきただろうか、と自問してみて、考えるまでもなくできてないなと思った。
ご近所さんとすれ違うとき、早足を緩めることもなくおざなりに会釈するのみ。
年配の女性が足を揃えてこちらに向き直ってきちんとお辞儀されるのに出会うと、傍らを止まることなくすれ違った自分を恥じたりもするが、そういう所作を真剣に改めることもなかった。
そろそろ自分も年配なんだしちゃんとしようよ、と思うと同時に、なぜ日本人にはお辞儀という独特の文化があるのだろうと考えた。

少し前に、YouTuber?のナントカさんが不倫じゃなくてセカンドパートナーでハグとキスまでオッケー、みたいな話がXに流れてきた。どうでもいいニュースなのだが、(欧米ならハグとキスは挨拶代わり?)とふと思った。赤の他人が挨拶で抱き合ったり両頬にキスしたり、自分だったらとてもできないと思う。
日本人ほどハグしない民族はむしろ珍しいのではないだろうか。ハグしない代わりにお辞儀するようになったのは何故なんだろう。

私の姉はイタリア人と結婚して向こうに住んでいる。
二十数年前のことだが、結婚式に出席するため、当人である姉と、母と私と私の夫、2歳の娘の5人でイタリアに向かった。結婚式に参列した後、姉の夫が運転する車で北イタリアを旅行して周った。そして最後の日、姉はイタリアに残り、母と私の家族が日本に帰国するという空港の別れのシーンで、私は妙なことが気になって仕方なかった。
姉と母と私、肉親の別れのシーンにしては、私たちあっさりしすぎてない?
泣くでもなければハグし合うでもない。イタリア人の姉の夫が、こんな日本人を見て奇異に思うのではないだろうか、と変に気を遣ってしまった。かといって演技するのもおかしい。日本人でももうちょっと情熱的な家族はいるかもしれないが、私たちは全く気持ちが込み上げたりすることもなく、あっさりじゃあね、と別れた。
最もこれは私ひとりの主観なので、姉と母の間には表面に出ない想いがあったかもしれないが。

身体を触れ合わせる挨拶は、進化の過程で動物から受け継いだ習慣といえると思う。日本人がそれを手放し、自分の子といえど成長したらもう触らなくなり、一定の距離を保つようになるのはどういうDNAなのだろう。
身体的触れ合いよりもより深い魂の触れ合いを大切にする為なのかもしれない。

そういえば神社の参拝や葬儀の焼香など神仏にに礼をするとき、私は後ろに並んでいる人を意識してしまってほとんど気もそぞろである。
これからは、一つひとつの所作に気持ちを込めることを心がけよう。
そこに身体的接触より進化した魂の交流がきっとあるのだと思う。


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