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ネムラの森

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30年にわたって書き続けている短編ファンタジー小説「ネムラの森」。シュウとクロルそしてフェアローゼが深く不思議な森の中で繰り広げる壮大なドラマです。その一部を少しづつご紹介してい… もっと読む
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記事一覧

森の賢者

Forest of Wise A few wise men live in this forest

雨のマロニエ通り。

雨のマロニエ通り。 Marronnier Street in the rain.

森のかんざし。

熊に着られた緑のシャツ

おぃ、そろそろ春だぞ 緑色の、ほらヒラヒラしたあのシャツ 着るから出しといてくれ あら、ブナの木に吊るしておきましたけど? 無いぞッ? あっ、そう言えばさっき 寝起きのクマが着ていたわ ※ Hey, it's almost spring! That green, fluttery shirt. I'm going to wear it. Oh, I hung it up in the beech tree, didn't I? It's not here!

吾輩はネコではない

吾輩は猫ではない 猫ではないから 犬のウン◯を踏んでしまった時の 肉球の感覚も知らないし ネコ踏んじゃった♪の歌を どんな気持ちで聴いているのかも分からない 要するに 吾輩はヒトである ヒトであるから 隣人が買った外車はいくらしたのかとか 他人の不幸話しに花を咲かたり 電車の席を頑なに譲ろうとしない しかし 吾輩はヒトであるから 本当は手を繋ぎたいし 本当はアイツにエールを送りたいし 本当は誰かを助けたいと思っている 吾輩はヒトであるから ※ I am n

精霊に恋した猫

ガジュマルの樹に宿った精霊と恋に落ちた猫 The cat that fell in love with the spirit that inhabited the banyan tree

月がやってきた

仕舞いかけていた夜の帳の隙間から 丸い月が顔を覗かせ ひょいと窓から飛び込んで来た 月はころころ転がりながら 部屋の中を見渡して 本の前にどしんと陣取った その様子が可笑しくて 挽きかけていた珈琲の手を止め 僕はクスッと笑った 笑ったら 月は少し照れて 前よりも明るく灯った 「やぁ、いらっしゃい」

世界のはじまりの終わり

まだこの星に 何もなかった世界のはじまりに 鳥と蝶と虫が現れ 荒れた地にタネを敷き詰めた 敷き詰め終えると 四つの季節が天の風に乗って現れ 光と水をタネに注ぎ 森を七色に染めた それから幾億年もの月日が経ち タネは木に草に花に姿を変えた その日から森は世界のはじまりになった そしてある日灰色の服をまとった人間が現れ 木の一切を切り倒し 草の一切を刈り上げ 花の一切をむしり取り 森をコンクリートで覆い隠した すると森は あっという間に灰色の街に姿を変えた こうして

硝子電燈に泳ぐ月

不思議な夢を見た 赤く燃えたぎったサソリが 月を食べようとしていて それをやめさせようと 僕は手足をバタバタさせるが ちっともサソリに追いつけない すると月の向こうから無数の星が 円を描きながらグングン押し寄せて来て 気がついたらサソリと僕は 硝子電燈の中に押し込められてしまった その時 夢から目が覚めた 手探りで硝子電燈の灯りをつけたら 窓の外に浮かぶ月が 硝子の中で泳いでいた

再生

ネムラの森「シュウとクロルの冬日和」

再生

月と森と(シュウとクロル)

月と森と。 The Moon and the Forest doll artist UZUMAKI direction & photographer ZAKI

硝子電燈に泳ぐ月

不思議な夢を見た 赤く燃えたぎったサソリが 月を食べようとしていて それをやめさせようと 僕は手足をバタバタさせるが ちっともサソリに追いつけない すると月の向こうから無数の星が 円を描きながらグングン押し寄せて来て 気がついたらサソリと僕は 硝子電燈の中に押し込められてしまった その時 夢から目が覚めた 手探りで硝子電燈の灯りをつけたら 窓の外に浮かぶ月が 硝子の中で泳いでいた

この世界のはじまりの終わり

まだこの星に 何もなかった世界のはじまりに 鳥と蝶と虫が現れ 荒れた地にタネを敷き詰めた   敷き詰め終えると 四つの季節が天の風に乗って現れ 光と水をタネに注ぎ 森を七色に染めた それから幾億年もの月日が経ち タネは木に草に花に姿を変えた その日から 森は世界のはじまりになった そしてある日 灰色の服をまとった人間が現れ 木の一切を切り倒し 草の一切を刈り上げ 花の一切をむしり取り 森をコンクリートで覆い隠した すると森は あっという間に灰色の街に姿を変えた

星がキレイな夜でした

「きぃん」と星が流れてゆきました。 そのもっと上の方で別の星々たちが その星のゆく先を眺めていました 僕は電車の窓から顔を出し その星とその星を眺める星々たちを 見上げました。 星がキレイな夜でした