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『銃器使用マニュアル』から読み解く“銃の現実” その1

初めに



日本国内では「銃器」は法規制も厳しく、一般人にとっては縁遠いものではあります。大多数の日本人が銃器について知るのは、主にフィクションを介してになるかと思います。

近年、日本国内においても銃を使った重大事件(安倍元首相を自作銃で暗殺した事件や猟銃での警察官殺害など)が起きています。日本の一般人もこれからは銃と無縁ではいられなくなるのかな、と思う次第です。

私個人としても、下記に紹介する本を購入して、銃器に対する知識をアップデートしたいと思いました。この記事は備忘録としても書いていきたいと思います。

今回参照するのは以下の本です。


そもそも銃とはなにか?銃弾にはどんな種類があるのか?そして、銃で撃たれると人体はどうなるか?などが詳しく書かれている本です。ここから要約して紹介したいと思います。

キーワード解説

【カートリッジ】
弾丸に爆薬を内蔵していない火工品。 弾薬の一種であることから、弾薬と呼ばれる場合もある。

【ブレット】
弾丸のこと

【薬莢】
弾薬を保持する器のこと。弾のパーツの一種であり、鉄砲の弾丸を撃つのに必要な火薬を詰める容器としての役割を持つ。映画などで銃を撃つシーンで銃身から飛び出しているアレ。

【バレル】
銃身。弾に加速とライフリングによる回転を与える場所。

【ライフリング】
銃の銃身内部にある螺旋状の溝であり、弾丸を回転させることで弾道を安定させる。

【マガジン】
火器の弾薬をあらかじめ装填しておき、発射の際に次弾を供給するための銃の部品のひとつ。日本語で弾倉。

【ベルトリンク】
横一列に並べた銃弾を布や金属製のベルトでつなげたもの。日本語で弾帯。金属製のベルトが“リンク”である。

【キネティックエナジー】
運動エネルギーのこと。

「銃」とはなにか?

人力により輸送可能な銃器、いわゆる小火器は5つのカテゴリーに分かれます。
・ハンドガン
・ライフル
・ショットガン
・サブマシンガン
・マシンガン
以上の5つになります。まず、それぞれの小火器の定義と特徴を簡単に説明します。

ハンドガンの定義

ハンドガンは、シングルショットピストル、デリンジャー、リボルバー、オートローリングピストル(オートマティック)の総称です。

その中でも有名なのは、リボルバーとオートローリングピストル(以下オートマティック)でしょう。ちなみに、リボルバーをピストルと呼ぶのは間違いであるそうです。

オートマティックの特徴は、カートリッジ内のガンパウダーの燃焼ガスを利用して空薬莢を弾き飛ばしてから、次弾の装填までを全て自動で行うところです。

ライフルの定義

ライフリングを刻んだバレルを装備し、片付け姿勢で発射する銃器です。アメリカ連邦法は銃身長40.64センチ以上を持ってライフルと定義しています。

①アサルトライフルについて
直訳すると突撃銃となります。アサルトライフルの定義は1.オートローディングである、2.弾数が多い(20発以上)、3.フルオートマティックが可能(引き金引いた状態で、次々と弾を発射する。)、4.中型はライフルカートリッジを発射する、になります。

②アサルトライフルで撃たれると 
軍事目的に開発されたアサルトライフルの威力は、通常のライフルのそれと比べて損傷度が高いと思われがちですが、これは間違いであるそうです。実際、旧式のハンティングライフルで打たれるよりも損傷は軽度で済みます。これは損傷とが、人間の体内で、急速に失われるキネティックエナジー(運動エネルギー)の消費量と大いに関係しているからです。軍用のカートリッジは、鉛を金属でコーティングしたフルメタルジャケットが使われるために、柔らかな鉛製ブレッドのように体内で炸裂することがありません。

ショットガンの定義
ライフルと同じく片付け姿勢で発射する銃器です。ただし、中心にライフリングはなく、鏡のようにつるつるとしています。通常は1度に多数のペレット弾(鉛の散弾」を発射しますが、スラッグのようにライフリングをあらかじめ刻み込んだブレッドを発射する場合もあります。アメリカ連邦法は約45センチ以下を持って違法としています。

サブマシンガンの定義
肩づけまたは腰だめに構えて、ピストル用カートリッジを、ライフリングをきざんだバレルで発射し、さらに降るオートマティック発射が可能な銃をサブマシンガンもしくはマシンピストルと呼びます。正確にはこれはマシンガンではありません。

マシンガンの定義
ライフルカートリッジをフルオートマティックで発射する銃。普通は射撃手と装弾手の2人で操作するが、射撃手のみで扱えるものもある。マガジン方式もあるが、通常、装弾はベルトリングで行われます。


弾薬

理想的なブレット(弾丸)とはなにか?これはすなわち、いかに殺傷力があるか?になります。本書においては、ブレットが重く、初速が速くそれでいて、貫通力が弱いことが理想だとされています。

つまりそれは、大きな運動エネルギーを生み出し、それを瞬時のうちに消費するようなブレットになります。

ソフトポイント弾

被甲された弾丸の先端だけ鉛をむき出しにした弾丸で、ターゲットへの侵入力が高く、尚かつ先端が潰れ易い

フルメタルジャケット弾

拳銃弾や小銃弾の一種で、弾体の鉛を銅など他の硬い金属でほぼ完全に覆った弾丸をフルメタルジャケット弾といいます。鉛むき出しの弾(リード弾)は人体に当たると体内で変形し、必要以上の深手を与えるといわれ、このためハーグ陸戦条約などで戦争での使用を禁じられています。

ホローポイント弾とその真価


ホローポイント弾とは、先端を凹ませ着弾時に潰れて広がり(マッシュルーミング現象を起こし)易くした弾丸のことをいいます。先述した理想のブレットの定義に照らし合わせれば、この体内でマッシュルームイング現象を起こすホローポイント弾は、まさに理想的な弾丸にみえます。

しかし、本書によれば、80件近くものホローポイントによるハンドガンによる死亡事例を検証したところ、もしこれが通常の弾丸であったとしても、死に至らなかったと言う確証は得られなかったそうです。

法医学の専門家によれば、強力なパワーを持つライフルならいざ知らず、非力なハンドガンで撃たれた場合、フォローポイントも通常の弾丸も傷の程度はさほど変わらなかったそうです。

銃で撃たれるということ


銃で撃たれた部位がどこであれ、銃で撃たれれば、重傷は免れません。ブレットの大小にかかわらず、人体の急所ヒットすれば死亡する場合もあります。

映画などで見かける体内に残った弾丸の摘出シーンなどで見られるブレットの形は、まさに弾丸の形のままです。しかし実際はこのような状態で摘出される事は稀だそうです。あるものはキノコのような状態になり、あるものは粉々にくだけていて、発射前の形状を全くとどめていません。

銃弾の威力

ブレットのような投射物がどのような動きをするのかを探求する学問のことを「弾道学」といいます。これは3つの専門分野に分かれています。

【インターナル•バリスティック】
銃口から飛び出す前のブレットの動きの研究 

【エクスターナル•バリスティック】
発射された後、空気中を進むブレットの動きの研究

【ターミナル•バリスティック】
ブレットが目標に命中した後の貫通対象の研究

形状はどうであれ、投射物は皆、キネティックエナジー(運動エネルギー)を持っていて、エネルギーの大きさは重量と速度によって決まります。例えば、ブレットの場合、次の公式で求められます。

K•E=WV ²/2g

Gは重力加速度9.8m/sec、Wはブレットの重さを、Vは速度を表しています。この公式からもわかるように、ブレッドのキネティックエナジーは、ブレッド、重量そのものより速度と大いに関係しているのです。重量が倍になると、キネティックエナジーは2倍になりますが、速度が倍になると、それは4倍になるのです。

銃創(ガンショット•ウィーンズ)とは、銃器による損傷のことで、医療現場では頭文字をとってGSWと呼ばれています。銃創と聞いて大方の人がイメージするのは回転し、ブレットがドリルのように体内を先行してゆくイメージではないでしょうか。しかしこれは間違いです。侵入したブレットは潰れ、切れ切れにちぎれながら、体内を貫通していくのです。それと同時に高速で通過する際に、周辺の組織を外側に押し広げて行きます(空洞現象)。

ブレットがヒットしてから、1/1000秒の間に起こるこの空洞現象によってさらに瞬間空洞なるものも形成されます。この空洞はブレットの直径よりもはるかに大きいものとなり、徐々に収束しながらやがて消滅します。

この空洞のサイズを形成しているものは、体内を完貫通しながら失われていくキネティックエナジーの消費量、そして打たれた部位の筋肉、内臓などの弾力性と結合性によって決まります。

ハンドガンとライフルのブレット、その違い

ハンドガンはライフルに比べて、キネティックエナジーは少ないです。ハンドガンブレットは瞬間空洞ではなく、永久空洞によってコンタクトした組織に対して直接影響を与えます。

ライフル用高速ブレットは体内に侵入すると、損傷した組織の後方拡張を引き起こします。その際の瞬間空洞の直径はブレットの11から12.5倍にもなります。そしてこの瞬間に、ブレッドは偏向を開始します。

例えば、M60多目的マシンガンが発射するライフルブレット(7.62×51mm 重量9.7グラム 速度は秒速840メートル)では、体内に入ると、キネティックエナジーを失い、不安定になり、直角に曲がる、もしくは破片となって飛び散ります。破片にならず、そのまま貫通が続くと、変更角度は180度に達し、ブレットは先端を射入孔側に向けた状態で停止することになります。

ブレットとの直接のコンタクトがないにもかかわらず、離れた位置にある血管、神経、臓腑がかなりのダメージを被るケースがあります。これはブレットとの衝突で、破砕、飛散した骨によって行われたものです。ただし、これはブレットとの衝突で破砕、飛散した骨によって行われるものです。ただひこれは、胸部を撃たれた際の肋骨や、頬骨の粉砕を除けば稀な現象であるそうです。

内臓と筋肉の違い

空洞のサイズはキネティックエナジーの量だけではなく、対象となる組織の弾力性と結合性とも大いに関係しています。例えば、肝臓と筋肉組織の密度は近似し、一平方センチメートルあたりのキネティックエナジー吸収量も同じであるそうです。ただし、筋肉が弾力性欠乏性に飛んでいるのに対し、肝臓は非常に脆弱な組織構成であるため、瞬間空洞は肝臓の方が大きくなります。

さらに同じ内臓でも、肺においては、組織の密度は低い割に、弾力性が高いので空洞現象に対して比較的耐性があり、組織の損壊も少ないそうです。

ちなみに、ライフルブレットが頭部をめがけて発射された場合は、間違いなく悲惨な状態となります。密閉された頭蓋内で空洞現象が起きるからです。硬い頭蓋骨によって密閉状態にある脳にとって、瞬時に生じた巨大な圧力を解放する方法と言えば、唯一、“爆裂”するより他にないからです。


粘土とバリスティックゼラチン

テレビなどで見たことがある人もいるかもしれませんが、銃の威力を視覚的に分かりやすく写すために、粘土の塊を銃(おもに.44マグナムなどの大型拳銃)で撃って大穴を開ける、と言う検証映像がよくあります。確かに銃で撃たれたら、軽傷で済まないのは現実ではあります。
しかし、人体と粘土では、その構成物質そのものが全く違います。粘土の損壊具合を見ても参考にはならないそうです。
例えば、粘土ではブレッドの射入口すら大穴状態で残ったり(人体のほとんどの部位ではブレットの直径と同じ穴があく程度)さらには、吹き飛んだりします。現在は、人体に極めて近い弾力性を持ったバリスティックゼラチン(BG)というものが開発されており、それを使って銃撃の威力は検証されているそうです。
ちなみに、.44マグナムでバリスティックゼラチンを撃った画像が載っているサイトがあります。確かに威力は高いですが、粘土を撃ち抜いた時のような激しい損傷はありません。



【日本の事例(南アルプル銃誤射事件)】
ハンティングライフルで撃たれると...

ハンティングライフルで撃たれるとどうなるか?それがわかる事件が昭和61年2月13日、日本で起こっています。狩猟会のリーダーである50歳の男性が山梨県の南アルプス山中でイノシシ狩中、同じ猟友会のメンバーの43歳の男性によりイノシシと誤認され、誤射され死亡した事件です。

発射されたブレットは口径7.8mmの先端の鉛が露出したソフトポイントブレットでした。

後の法医解剖により、70メートル先から発射されたブレットは、おそらくしゃがんでいる姿勢の被害者の背面から射入し、陰茎根部直上から射出したと考えられています。

直接の死因は腹腔内出血ですが、特筆すべきはその威力です。

・第五腰椎と仙骨は粉砕
・周囲に骨片が飛散
・陰茎根本から飛び出したブレットは陰茎包皮を貫通し左大腿部に摩擦銃創を残した
・衝撃波が脊髄を伝播し、脳内出血を誘引していた

加害者の証言から、被害者は即死ではなく数分間生存していた可能性が高いそうです。


今回はここまでとなります。

日本でも熊や鹿や増加で、銃を使用した狩猟が盛んになると思いますが、誤射だけは気をつけてもらいたいものです。

















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