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ことばを砕いて砂にする。噛み締めれば味がするかな。うず高く積めばお城になるかな。閉じ込めて逆さにすれば、時計になるかな。時間は降り積もる、永遠の最中でひとときの幻をみる。空のスクリーンを流れ落ちる涙、水面にひろがる波紋。ひた寄せては砂をさらっていく、お城をとかしていく。海が青いのは空に恋してるからでしょう、なのにひとつになれないのね。だからゆびでぼかしたの、水平線。くすぐったそうな声があがって、ぱしゃんとイルカが跳ねた。水滴が頬に当たった、その冷たさに身体を抱き締めた。影が起きあがった、真昼を闊歩する、日に焼かれて薄墨が滴り落ちていく、その跡は文字になった。意味はわからない。その文字に砂をかけて、かけつづけてみえなくなったころには、太陽が溺れていた。空が燃えていた。思い出を火葬しているのか。泣き晴らした頬、悲しみが尽きないのと同じく、夜は繰り返される。波に洗われ、いっそう輝いてみえる、あれがあなた。

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