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ひとり二役


鏡の中のわたしとにらめっこ。かくれんぼ。鬼ごっこ。わたしがいつも鬼。ニヤニヤ、笑っている。何がそんなにおかしいのってくらい、不幸を面白がっている。キリストをなぞろうとしているときでさえ、ゲラゲラ、嗤っている。そんなんじゃ死なないよ、本気で死ぬ気なんかないでしょう、って。わたしのつまみ食いは、芸能人の不倫。わたしの必死の告白は、元死刑囚の証言。わたしの相似をして世界は罪にまみれている。わたしは無原罪ゆえに許されている、裸の罪人。わたしがころげまわったことで世界はつくられた。わたしは罪人であるがゆえに、あなたを許すことができる。罪は祝福されたもの。悪魔は神の掌の上でころがされている。そう、わたし。自分を天使だと思い込むとき、そこにいるのは悪魔。鬼を飼い慣らせ、不幸を飼い慣らせ、自分をユダと思い込むとき、そこにいるのはキリスト。わたしが幸せであるとき、きっと何かを踏みつけにしている。そう、影。不幸な顔をしたあなた。天国も地獄も心の中にあるのだし、だからわたしはひとり。二役するの、楽しいんだ。一緒に遊ぼう。

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