消せることはいいことだと思う。
消せることはいいことだと思う。
シャープペンはそう言った。
消しゴムもうなずいた。
それを見ていたボールペンはあざ笑った。
何が「消す」だ。
過去は消せないし記憶も書き換えられない。
自分の発言にも行動にも責任を持てないガキの癖に。
どうあがいたって何も変わりはしないんだよ。
シャープペンの芯は折られた。
消しゴムのカバーは剥がされた。
だけど、と子どもは筆箱の中をかき漁った。
シャープペンの芯は簡単に入れ直すことができるし、
消しゴムはカバーが無くても役に立つ。
それに消せるから紙を無駄にしなくて済む。
ボールペンの芯は入れ替えにくいし、
インクが滲みやすくて使いにくい。
消せないからって嫉妬をするのは良くないよ。
ボールペンはいじけてどこかへ行ってしまった。
シャープペンは呟いた。
いろいろなところに書けて羨ましいのに。
すぐに消えないことだって良いことなのに。
消しゴムは同意した。
そして、これまでの会話を消去した。
2010.12.29
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