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創作男女(人外×人外)胸糞注意

ひかりかがやく、かみさま

その陽光に煌めく銀髪に手を置くと眠たげな目が我を見る。
「何か用事?」
我は首を振り「違うに決まってるだろ」と返した。
「そっか、なら良かった。理人、気が済んだらスコーン焼いといて」
「分かった。尽力する」
その者に性別など関係がなく、我にも性別などは最早関係がなかった。我は一応女の身体をしている。人間に生まれたのだから仕方がない。もう元人間でしかない身だが。男か女かの境も薄れている。ただ、我が女という性に心を残しているのは残虐な責めをしたいのと彼の存在だろう。

彼、と称したが彼は男性の形を取っているだけで性別はない。ホムンクルスであり、神であり、教祖である彼に性別などは不要なのだろうと考える。50年は生きている長命なホムンクルス、それが彼だ。宇宙の神の遺伝子を持ち、それが彼を美しい「ヒト」の形に象り、強大な力を与えている。
こんなにも優しく穏やかな青年なのに、その行為は全て祝福であり天災。人類の脅威にまで登り詰めた青年が願うのは人々の安寧。
「なんじゃそりゃ、って言うだろうね。でも俺はなくしたい。戦争も殺し合いも奪い合いも全て」
神殺しであり戦士殺しであり、所謂シリアルキラーな我には全く理解が出来なかった。恐らく彼は凡人のようなことは考えも望みもしないことだけが分かった。
「だから、君に協力して欲しい。水と油は溶け合えないけど共存はできる」

その意味を理解したのは最近だ。彼を理解も同調もする可能性がないから彼は我を傍に置いている。ヒトとして出会っていても我と彼は分かり合えないだろう。なのにこうして一緒にいるのが何処か心地よい。

彼の髪から手を離し、台所へ向かう。整理され、磨きあげられたダイニングは彼自ら整えたものだ。我はヨーグルトと小麦粉を出し、手際はそこまで良くないがスコーンを作っていく。生地を切り、オーブンへ入れ、オーブンの中を中を見つつ、買ったばかりのコーヒーマシンを水とカートリッジを入れて起動する。この操作には慣れないが恐ろしくカンタンに店の味のコーヒーが出来る。我はそれに深く感心した。

ようやく、彼「代田ユリト」が起きてきた。
「やっぱりさ、理人の作るスコーンは旨いよ」
そうニコニコと笑う彼に我は「お前の作るスクランブルエッグとソーセージから比べればまだまだだ」と返した。彼は皮付きから皮なしのソーセージまで綺麗に作れるしスクランブルエッグは生クリームと合わさりふわふわしている。
2人きりの朝食、今日はアスモデウスがいない。彼女なら辛口に今日のスコーンの出来を評価するだろう。彼女曰く愛ゆえに、だそうだが。
ユリトは我の顔を見て、「今日の理人は少し機嫌が良さそうだ」と言う。我は「まあな」と返した。

昨日も捕らえた戦士を電気による快楽堕ち、つまり快楽による洗脳で駒として引き入れた。全ては我が教団のためだが自分の楽しみでもある。

ユリトは優しいから眉を顰め、
「そんな行為はしてはならない」と言うかもしれないが。そのくらいの余興と愉悦は許して欲しい。快楽に溺れる戦士を見るのは気持ちがいい見ていて殺すのが勿体なくなってきたなと思うくらいには。

ユリトは多分我の口元が歪むのを見て察したようだが、多くを語らず「昨日は楽しかった?」と尋ねてきた。
我はすかさず「ああ、楽しめたよ」と答える。
美しく優しく気高き共犯者との共犯関係。それは悪魔の密約にしか映らないだろう。
しかし、これは美しい神に捧げたいという思いもあることをゆめゆめ忘れることなかれ。
ユリトはいずれ神王になる。偽りの神から神へと進化したホムンクルス。それの願いを叶えるのはユリトだが神王へと化させるのは我だ。
我が悉くの神を捩じ伏せ蹂躙し戦士を調伏し、彼を神王まで運び上げる。
その時に至る愉悦に我は意識を巡らせた。

その意味さえ知らない

真っ白な部屋に真っ白なベッド、真っ白なソファにテーブル。ユリトはベッドに座り、理人はソファに横になる。普通なら逆だと思われることもこの2人には日常茶飯事だった。
「そこは雪国だった、この意味が分からなかったんだよな。今も分かろうとは思わんが」
鍋島理人はそう言って本を放り投げた。三四郎、全然関係がない本だが文豪の書いた小説ということで括っているのだろう。
「お前、その頃から世とズレてたのか」
ホムンクルスのユリトでもその意味自体は分かる。雪国だった、の意味も雪国だったことを彼女が分からなかった理由も。

世間から、いや世界から彼女は外れている。普通なら「生きにくさ」を感じて心を病むだろう。
彼女が神殺しの専門家でなければ、この教団でユリトの片腕でなければ。

「ハハハ、我はその頃から世を儚んでいたからな」
「笑って言うことでもねえけどな」

ユリトは満更でもないといったような風に笑う理人に眉を顰めた。この謎の生き物、とお互いが思っていることだろう。まあ、両方の性を持ち、神殺しという常人では不可能なことを成していく時点で心がいつ破綻してもおかしくない彼女が既に狂っていてもおかしくはないが。

「我はお前に出会えて良かったと思っているぞ。本を粗末にしても怒らないからな」
「本を粗末にすんな。それだけじゃないだろ、お前はいつも言うよな。俺に「世界平和」を為せと。その実現の為なら何の手段も厭わないと」
「Yes,My Load」

そう畏まって跪き、笑みを浮かべる理人。相変わらず趣味は悪いし古いのだか旬なのか分からないネタを使うなこの生き物は、とユリトは思った。

「世界から争いを無くす、その為なら幾らだって力を振るいましょう。我が主」
「お前が裏切らないことを祈るばかりだよ」

ユリトは芝居がかった理人の台詞に呆れて肩を竦めつつ、江戸川乱歩の短編集を手に取る。
理人は「岸辺露伴は動かない」を読み始めた。勿論、漫画の方だ。読書会というよりお互い好きなことをしている。両者、相手の思想や行動の意味を考えない。裏をかかれたらかかれただ。
ユリトに不安はなかった。自分が間違えば理人は躊躇なく自分を屠るだろう、と。

その確信に意味なんて存在しない。それが心地よい。理人にだけは自分を断罪する許可を与えよう。いつからかそう思っていた。

理人は戦士を束ね、憎き鈴鹿姫を倒してくれさえすればいい。あの変態GMに一泡吹かせられればそれで良い。だから、どんな我儘も目を瞑ろうとユリトは思っていた。夜が明ける、風が吹く、そこに意味を見出さないようにお互いの行動に意味などないのだろう。ユリトの信実はただそれだけだった。

★★★

連投してすみません。創作男女の破片みたいなもの。狂った性自認両性の女の体を持った神殺しと神となったホムンクルスの話。申し開きは無いです。後でサイト作ったら格納します。


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