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がん闘病中に嬉しいことがありました

二回目の術後2週間経ち、経過は順調で食事量も増えて来ました。けっこう食べられます。食べ過ぎて苦しくなることもありますが、食べられないよりは、はるかに良いと思います。

年明け早々に抗がん剤治療を控えているので、体重も増やして体力をつけておこうと日々、食べています。

食道がんの体験とは少し外れるのですが、嬉しい出来事があり、更にがん治療に力を与えてくれたので書いておきたいと思いました。

マリー・ローランサンに「Le Calmant」という詩があります。堀口大學さんの素敵な邦訳でその一節を記すと。

死んだ女より もっと哀れなのは 忘れられた女です。

ローランサンは、ピカソやブラックと同時代の画家です。詩人のアポリネールと恋に落ちましたが、「ラ・ジョコンダ」盗難事件を機にローランサンは、心を残しながらアポリネールの元を離れます。アポリネールが悲しみの中で編んだのが「ミラボー橋」と言われています。

その後も二人は文通をしていたのですが、それぞれ結婚します。でも、ローランサンはアポリネールの結婚に深く傷付きます。そして、アポリネールは結婚した年にスペイン風邪で37年の生涯を閉じました。

「Le Calmant」には、その時の自分が投影されているのかも知れません。

ローランサンは、1956年に72歳で亡くなりますが、遺言でアポリネールと交わした手紙を胸に抱いて埋葬されたそうです。

彼女は「忘れられた女」だと思っていたのでしょう。でも、女性だけでなく、男でも「忘れられる」のは辛いことです。

一般的にがんキャリアになると、人は遠ざかっていくものらしいです。そして、やがて忘れられます。闘病中に人が離れていくのは、いまのところ僕は経験していませんが、想像しただけで悲しくなります。

SNSを通じて20年以上も交流のなかった人と繋がりました。驚いたことに、僕の事を覚えていてくれたのですね。

本当に、嬉しかった。絶対にがんを克服してやろうと思いました。

だから、周りにがんキャリアの知人がいたら、声を掛けてあげて欲しいと思います。励ましとかはなくて良いんです。ただ、「あなたのことは忘れていませんよ」と伝われば、それはその人に大きな希望を与えてくれると僕は信じます。

ちなみに、ローランサンは忘れられた訳ではなかったようです。本人は知らなかったでしょうけど、アポリネールの枕元にはローランサンの絵があり彼はその絵を見ながら亡くなったのでしょう。きっと、彼女の事を思いながら。

映画になりそうなエピソードだと思います。


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