CancerX Story 〜森内倫子編〜
CancerXメンバーがリレー方式で綴る「CancerX Story」
第5回は、CancerX理事の森内倫子です。
わたしのCancer Story
「ご主人はステージ4の肺がんです。桜は見られないでしょう。」
2017年12月1日、病院で言われたその一言は、まるでドラマのワンシーンのようで実感はありませんでした。
それまで病気とは無縁で、病院嫌いだった旦那。
前日の深夜、救急外来で点滴を受けながら「初めての点滴」と記念撮影をしました。
CTとレントゲンを撮り、当直だった先生から「結核か肺がんのどちらかですね。」と言われた旦那は、「これ、肺がんだったら、俺、もう、死んじゃうね。」と言うくらい白いものが肺の中にたくさん飛んでいたのを覚えています。
それでも、翌朝聞いた主治医の一言に実感を持てませんでした。これが、私が初めて、がんと向き合った瞬間でした。
検査の結果、肺腺がんで、膵臓、左右の副腎、肺の左脇の骨に転移がありました。
私は医療従事者ではないし、何ができるかがわからない中、情報を集めました。それしか私に出来ることがないから・・・。
たまたまお会いした友人から遺伝子検査を進められ、病院にお願いしたところ分子標的薬の効くALK陽性非小細胞肺癌という種類のがんであることがわかりました。
アレセンサというお薬のお陰で1年間はがんになる前と同様の生活が出来ました。
これは本当にありがたくて、仕事はバリバリと、お酒をそこそこ呑み、食べたいものを食べて、行きたいところに行き、「死ぬ死ぬ詐欺だね~。」と笑っていました。月に1度の通院は、終わった後の築地ご飯を楽しみに通っていました。
その時は知らなかったのですが、旦那はこの1年間、少しずつ終活をしていました。
「薬が効いても、よくて3年でしょ?」と。夏休みの宿題は最初の日に全部やるタイプだったようです。個人事業主でしたが、いつでも人に渡せるように仕事をまとめ、お客様にご迷惑をかけないように、と周囲の仲間にお願いをしていたそうです。
2018年11月の検査で、「お薬が効かなくなってきました。」と主治医の先生からお話を頂きました。
それでも、「桜を見られないでしょう。」という宣告から、(私にとっては)奇跡的な回復をした旦那だったから、きっと今回も大丈夫!と思い込んでいました。思い込もうとしていました。
現実はそうもいかず、少しずつ、がんとの真剣な向き合いを求められていきました。選択の連続でした。都度、相談できる人が周りにいてくださってありがたかったです。
家が大好きだった旦那が、旦那のことを大好きな猫と最後まで一緒にいられたのは良かったと思っています。
在宅医療はお医者さんには大変な負担だと思いますが、ありがたかった。
旦那を取り巻く医療従事者や地域の皆様に心から感謝しています。
CancerXに参加したきっかけ
仕事仲間であった共同代表の半澤絵里奈さんのFacebookでのCancerX立ち上げの投稿を見て、「何かできることがあったら手伝うよ~」と声をかけました。
旦那と共にがんと向き合って、「がんになったからと言って生活はしていかねばならない」こと、「そこには日常がある」こと、と強く感じました。
正しい情報にスピーディに辿り着けることで、治療の選択肢が広がると思っています。そして、がんとの向き合い方に決まったカタチはなく、人それぞれだ、と思います。
だからこそ、多くの事例や体験記が不安になっている人の参考になると思っています。情報を求めている人に伝わるといいな、と思って参加しています。
今後の展望
二人に一人ががんになる時代。
そうであるなら、社会インフラとして、がんの人が生きやすい世の中が必要だろう!と思っています。
がんになった時の不安はいろいろあります。
体調や病気の進行に対する不安、経済的な不安、家族は大丈夫だろうか?、仕事は続けられるのだろうか?etc・・・。症状から、これまで普通に出来ていたことが苦痛になることもあります。
それらをみんなで考え、少しでも解決できれば嬉しいです。
プロフィール
森内 倫子 Noriko Moriuchi
大阪出身。2019年、肺癌のパートナーと2年間、共に闘病生活を送り、自宅で看取る。
現在はドローンメーカーに勤務。
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