見出し画像

久しぶりに難しかった

(患者さんの了承を得て、書いてます)

本日のカテは、婦人科の患者さんでしたが、
実は前回、ある栄養動脈にカテーテルが入らなかった患者さんへのリベンジマッチでした。
他にも栄養動脈が複数あるので、そのうちの1本が入らなかった、ということだけですが、「がんカテは技術面は100点出して当たり前。問題は100点の状態で入れた抗がん剤とビーズが効くかどうか」が本質。

カテーテルは、高濃度の抗がん剤とビーズを腫瘍に送り届けるための「道」です。
その道は、できる限り上質でなくてはなりません。
カテが上手くない先生がやれば、カテやワイヤーを動かす刺激で、その道が細くなったり、途中で閉塞したりしてしまう。そしたら良い治療になりません。

がんカテの本質は、がん種や病態にあった抗がん剤を、適切なタイミングで、適切に入れること。入れる作業、つまりカテ技術は満点であって当然だと思ってます。

通常の肝転移の治療なら、狙った血管に対して通常10秒から30秒で、ワイヤーも使わずに入ります。肝転移の通常の治療の方が、入室してから退出するまで1時間半くらいですが、そのうち抗がん剤を入れる時間が30分以上、そして施術前後の看護師さんたちによる準備で相当時間とられるので、僕が実質カテを動かしてる時間って本当に僅かです。カテは、時間をかけるほど、栄養血管が狭窄し、動注の条件が悪くなります。速いことは、正義です。以前、ある医者から、速すぎると効かない、とわけのわからん言いがかりをつけられたことがありますが、今思えばジェラシーだったのかな。

とにかく、勉強にくる若い先生方も驚くほど、ずばっと瞬殺(殺してはいけませんね)的にカテを目的の血管に入れる方ですが、前回は2時間かけても入らなかった血管、理由は、入口が細すぎる、でした。個人が特定されないように、血管の名前は書きませんが、普段はあまり治療しない血管です。そして、うちではカテの前に造影3DーCTであらかじめ治療する血管を三次元で作成し、治療戦略を立てるのですが、その絵を見て、確かにこれは挿れるのは不可能かも・・と思って前回やりました。結果、ダメでした。

今回は、事前に、カテを担当する技師が、超正確な三次元のCTをさまざまな角度から作成してくれて、前回と形状の異なるカテを選びました。こういう絵作りは、カテのことがわかっていないと出来ません。今担当されている二人の技師さん、本当に成長がはやくて、今では注意することが皆無、褒めることばかりで、助かってます。で、その絵を見ながら昨日思ったのは、「やっぱり無理かも」でした。
どうしても細すぎる。物理的に無理すぎる。

それでもやりました。
患者さん本人とは、結構なんでも話す仲なので、あと僕はスタッフと患者さんと瀬術中に会話をしながら、患者さんの情報取りやスタッフの集中力を維持するようにしてます。ですので、結構、しゃべりながらカテします。
そんな僕が、今回はかなり本気すぎたのか、2時間、ずーっと、その1本の血管にアプローチしてました。無言で。無言です。
集中しすぎて、時間がどのくらい経ったのかわからなかったです。
最終的には、入りませんでした。いや、やはり、カテより細くて入らなかった。
でも、入り口になんとかカテを押し付けて強引に動注してきました。
そして、他の血管も、この患者さんは骨盤領域の治療なんですが、毎回血流の状態が変化する特殊な方でして、IVR-CTで全て血流を確認しながら治療をなんとか3時間以内にやりきりました。

僕にとって2時間越えのカテは普段ほとんどしません。皆さん、そんなにかからず終わりますから。3時間は、50超えてるおっさんにはしんどかったですが、先日勧められて受けた鍼灸の施術のおかげで腰痛などなく、今もこうして比較的元気にブログ書けてます。
なんとか、やりきれてほっとしています。

今、カテをしたり外来に通院されている患者さんの多くが、僕が8年間、年2回続けてきた講演会をきっかけに、僕の治療を受けるようになりました。
今では、ある事情から、この講演会ができなくなっています。

ですので、患者さんたちからは、無理のない範囲でブログで情報発信してほしいと言われています。調子のいいとき、少し余裕のあるとき、今日みたいに休憩時間に書くようにしたいと思います。


それにしても、うちのがんカテチームの結束は強い。
本当に、みんな、よくやってくれます。頼もしく成長してくれています。感謝。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?