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なぜフィールドレコーディングはクリエイターのスキルを爆上げさせるのか?

今日も鹿がうまい!カナリーイエローです。

バグ鹿に遭遇したので至近距離で遊びまくる

ゲームオーディオ分野では「フィールドレコーディングはサウンドデザイナーとして早く成長できる」といった通説があります。

街なかで電車や自動車の音を録るのも立派なフィールドレコーディングだと思いますが、ここでは山や海に出かけて自然音を収録する活動を指します。

「音楽未経験の人がいきなりフィールドレコーディングを初めてついでに作曲もできるようになる!」「サウンドデザイナーになれる!」という話じゃなくて、そもそも土台となるスキル・経験があるのが前提だと思いますが…ゲームオーディオの人たちがこういった動画を投稿しているのはそれなりに根拠があるからでしょう。

まさにthe Hunter™の世界。

※これは埼玉

今回はフィールドレコーディングを実践することで、サウンドデザイナーとして何が得られるのかを紹介します。


能動的に聴くという意識

英語ではヒアリング(hearing)リスニング(listening)という単語があります。

ヒアリングというのはどちらかというと受け身になって聞き流すというニュアンスで、フィールドレコーディングの文脈では好ましくない意味で使われることがあります。一方でリスニングはもう少し集中して自発的に音を聴くという意味合いが強いです。

ミュージシャンやサウンドデザイナーが目指すべきはリスニングなのは言うまでもありません。屋外でマイクを立てて録音するコツは、何よりもその環境を「意識的に聴く」ことであり、この積み重ねがリスニングする技術を磨いていきます。

また、フィールドレコーディングに出かけなくても、普段の生活すべてが訓練であるとも言えます。意識して街の音や自分の出す音を聴いてみると、身の回りは音であふれていることに驚くでしょう。イヤホンは外して歩こう!

コントロールされていない環境での録音

パソコンですべてを完結させるデスクトップミュージック(DTM)が普及し、最近はAI作曲も人気になりました。マイクで音を録るという経験なしに曲を仕上げる人がこれから大勢出てくるでしょう。

しかし、どんなジャンルにせよ生音を収録する機会に立ち会ったほうが、よい音楽を作れるようになると思います。

録音スタジオで楽器を収録するのと比べて、フィールドレコーディングはトラブルがつきものです。風の影響、天気、湿度、思わぬタイミングで人や動物と出会うなど…とくにマイクが風に吹かれると台無しになるので、最近は音よりも風に敏感になった気がします。

こういった失敗を経験しておくことは無駄ではありません。パソコンの前に座っているだけでは得られない経験を、短期間で大量に浴びることになるので、結果的にミュージシャンやサウンドデザイナーとしてのセンスが磨かれていくのだと思います。

耳の感度を上げる

実際はそんなことはないんですけど、マイクから入って来る音をヘッドフォンで聴いていると、自分の耳が良くなったような気分になります。

人間は無意識のうちに音を取捨選択して聞いています。部屋の空調の音は慣れてくるとほとんど気にならなくなりますが、誰かが叫んだりすれば一気にその音に意識が集中します。

マイクはそんなことはしないので、常にすべての音が聞こえるままに入って来る。

そう、普段の生活でほとんど無視しているような小さなノイズも、良いマイクなら拾ってしまうのです。でもそういう音もずっとそこにあったはずで、われわれが無意識に耳の感度を下げているだけなんですよね。

フィールドレコーディングへ出かけるというのは、普段の生活でガバガバになった耳を、もう一度調整する機会だと言えます。

もちろん、感度を上げすぎるとまともに生活できないので、適度に耳をOFFにする習慣も大切だと思います。世間には「リラックスするための音楽」というジャンルがあるらしいが、とんでもない。本当にリラックスしたいなら、何も聞かないのが一番です。



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