宇宙人(小説)

最近、いろんなことが起きる。

例えば、カルフォルニアで起きた竜巻。史上誰も見たことの無い規模の竜巻が、多くの人々の命を奪った。

北京では、コンピューターネットワークが機能しなくなり、産業上の多大な損失が発生した。

洪水、地震、大規模な火災、要人の誘拐等。

明らかに何か大きな力が働いている。

僕は、アパートで一人、夏の午後を過ごしていた。

エアコンも無い、蒸し暑い部屋。僕は汗をだらだら流しながら、漫画を読んでいた。

突然、窓の外が明るくなって、なおいっそう明るい直線的な光が、僕の部屋に差し込んだ。

部屋の空中に、銀色の球体が浮かんでいる。

球体が僕に話しかける。

「私たちは宇宙人だ」沈黙が流れた。

「陳腐な言い方ではあるが、一番わかりやすい言葉を選んでみた」

なんだ、これは。いくらするのだろう、この機械は。

「私たちは、この星のことが知りたい。協力してほしい」

「どうすれば、いいのですか」

「質問に答えてくれるだけでいい」

「はあ・・・・」

僕はとまどっていた。当たり前だ。

「地球人は何が一番大事だと思っているか?」

「何が一番大事・・・・?何だろう、う~ん」 

「即答できないのか?」

「いや、何がっていっても、人それぞれなんじゃないかと・・・・」

「我々は、偶然君を選んだわけではない。地球人の平均値として、君と君のほかに10人ほど選んでみた。アジアでは中国から二人、日本からは君だけだ」

「え、俺が日本の代表なの?どうして?」

「別に君が優秀だというわけではない。典型的な日本人ということだ」

「はあ」「質問に答えてくれ」

「はあ、大事なものって突然言われてもわからないな」

「大事なものだから、すぐにわかるのではないか。すぐにわからないようなものは大事ではないだろう」

「そう言われれば、そうも思いますが」

「質問を変えよう。君が好きなものはなんだね?」

「好きなものですか」しばらく考えた。

「女の子かな。きれい事ならなんとも言えるけど、本当に好きなのは、女の子に関することだね」

「それはSEXということだね」

「いや、僕は相手もいないし、お金もないから、もっぱらオナニーだけど」

銀色の球体は激しく回転した。

「言葉の意味がわからない。お金とSEXの関係は?」

「女性にお金を払ってSEXをさせてもらうのです」

「だってSEXとは男女両方の快楽であろう。なぜ、男性のみが金を払うのか」

「いや、よくわからないけど、地球ではそうだよ」

銀色の球体はまた激しく回転した。

「オナニーとは」

「自分で自分の性器を刺激して楽しむことです」

銀色の球体はまたまた激しく回転した。

「私たちは激しく混乱している。まず、他の星ではSEXが金でやり取りされるということが無い。そして、オナニーなどというものもない。SEXで充分ではないか」

「いや、だから、相手がいないから、やるんです。僕だって相手がいれば、やらないよ。まあ、相手がいてもやる人は、多いみたいだけど」

銀色の球体は神経質に回転する。

「それを見せて欲しい」

「は?」僕は驚いた。

「すぐにやってくれ。そうしてくれないと、君には消えてもらわなければならない」

「オナニーしないと?」

「そうだ」

僕はびびってジーンズとパンツを脱いだ。そしてこすり始めたのだが・・・・。

だめだ、緊張してできないし、何も刺激が無いと、無理だ。

「あの、何かHな写真か何か無いとできないのですが」

銀色の球体から光が出され、裸の女が浮かび上がった。

「コレは単なるイメージだ。触ることもできるが、本質は無い」

美しくすばらしいボディーだった。僕は最初は手でしごいていたが、堪らなくなり、女を押し倒した。そして、挿入し、やがて果てた。

床に精液が飛び散った。本質はないのだ。

「どう思う?」

「え?どう思うって・・・・」

「今君のしたことに対して、どう思う」

「どう思うって・・・・、どうも思わないです。気持ちよかったけど」

銀色の球体は不規則に回った。しばらくして言った。

「結論が出た」「はあ」

「コレはゲームだ。私たちは、自分たちの星を出て、他の星に行き、自分たちの支配下に置くゲームをしている。征服することが、目的ではない。私たちは平和を愛している。私たちは少し前に地球に来た。そして自然環境を少しいじって実験してみたり、支配層の人間を捉えて、国際関係に緊張をもたらしたりしてみた。おもしろいこともあったが、この星はどこか、他と違う」

「どこらへんが、違うのですか?」

「星自体の自然は美しいし、見るべき点はある。しかし、人間がひどい。さっきの君の行為は何だね。恥ずかしいとは思わないのかね。地球の人間の行為は一言で言って醜い。全宇宙的に考えて、美しくない。こんな星を支配してみても、例えそれがひとときの遊びであっても、かっこ悪いよ。こんな星に手を出したのが知れたら、他のやつらに何言われるかわからないよ。キャッチ・アンド・リリースが僕らの主義だから、もともと君らを傷つけるつもりはないが、

もうこの辺で帰ろうと思うね」

銀色の球体は回転を早め、窓の外へ飛んでいった。

僕は、遅い昼飯をラーメン屋で食った。

自分が地球を救ったのだ。そう思ってはいても、他人に言える話ではなかった。


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