【生成AI】人工知能の歴史を学ぶ、エキスパートシステムの誕生とその現代的意義
前回の記事では、チューリングテストについて取り上げ、AIが人間らしさを持つかどうかを測る試みについて紹介しました。今回は、その続きとして、AIの進化の中で重要な役割を果たした「エキスパートシステム」について掘り下げていきます。エキスパートシステムは、特定の分野において人間専門家の知識と判断力を再現することを目指したもので、1980年代に広く注目されました。
エキスパートシステムとは?
エキスパートシステムは、特定の専門知識を持つプログラムであり、その知識をもとに高度な判断を下すことができます。医療診断や財務分析、法的判断など、専門的な知識が要求される分野で、エキスパートシステムは専門家を補完、あるいは代替する役割を果たしました。このシステムの心臓部を成すのが「知識ベース」と「推論エンジン」です。
知識ベースと推論エンジンの働き
知識ベースには、専門家が蓄積した知識や経験がルールや事実として保存されています。この知識は、専門家へのインタビューや文献調査を通じて収集され、論理的に整理されます。そして、推論エンジンがこの知識を使用して、与えられたデータや状況に応じた結論を導きます。
例えば、医療診断システムでは、患者の症状を入力すると、推論エンジンが知識ベースのルールをもとに、可能性のある診断結果を提示します。このプロセスは、複数の要因を総合的に評価して最適な判断を行うものです。
エキスパートシステムの開発プロセス
エキスパートシステムは、いくつかのステップを経て開発されます。まず、解決したい問題領域を特定し、その分野の専門家から知識を収集します。次に、その知識をもとに知識ベースを構築し、推論エンジンを設計します。システムを実装し、テストを行った後、ユーザーインターフェースを開発して、実際の利用に供されます。
このようなプロセスを経て作られたエキスパートシステムは、高度な専門知識を必要とする分野で大きな役割を果たし、時には専門家以上の精度で問題を解決することができます。
エキスパートシステムの現代的意義
現代においても、エキスパートシステムの概念は利用されています。たとえば、法律や金融の分野では、過去の判例や規制に基づく判断が求められるため、エキスパートシステムのようなルールベースのアプローチが有効です。
一方で、現代のAI技術、特に機械学習やディープラーニングが登場し、エキスパートシステムを補完、または置き換える形で発展しています。これらの技術は、エキスパートシステムが苦手とする新しい知識や変化に柔軟に適応する能力を持っており、エキスパートシステムの限界を克服する方向へと進んでいます。
エキスパートシステムの未来
エキスパートシステムとチューリングテストは、AIの進化を理解する上で重要な要素です。人間の知識と判断力をシステムに移植する試みとしてのエキスパートシステムは、今後も特定の分野で活用されるでしょう。また、現代のAI技術と組み合わせることで、より高度な知識処理や意思決定を実現することが期待されています。
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