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早川酒造を訪ねて(三重県・菰野町)

三重県北部、滋賀県との県境にあたる鈴鹿山脈の麓の菰野町(こものちょう)で『田光』『早春』を造っている早川酒造。早川酒造は1915年に創業しましたが、それまでは四日市で『紺政』という屋号で藍玉を造っていました。1959年の伊勢湾台風で蔵が倒壊し、現在の菰野町に移転しました。

蔵元の早川俊人さんは東京農大で醸造学を学び、山形県酒田市の『上喜元』で修行をしました。そのとき飲んだ雄町米のお酒が忘れられず、蔵に戻ってからもこのお米でお酒を造りたいと思い今に至ります。現在は一児の父。同じ三重県で『而今』を醸す木屋正酒造の蔵元、大西さんの影響もあり、最近一眼レフを購入したそうです。Instagramの写真のクオリティが上がったのはそんな秘密も。

『田光』は蔵のある地区の名前で、田光川が蔵の横を流れるのどかな土地です。稲作が盛んな地域のため、初夏には水が張られた圃場が太陽の光を浴びてキラッと反射し、秋口には頭を垂れた黄金色の稲穂が辺り一面に広がります。早川酒造では、そんな豊かな土地の名を冠した銘柄を2009年から販売しています。この美しい地区をもっと多くの人に知ってもらいたい、各地で活躍する方々が地元を思い出して飲んでもらえるようにとこの名前を付けたそうです。

田光は「まろやかでやさしく人を感じ心豊かになる酒」をコンセプトにお酒造りをしています。田光の原料となる、鈴鹿山脈の恵みを受けた豊かな伏流水は超軟水の部類に入ります。硬度が低いということはお米も溶けにくく、口当たりがまろやかなお酒になります。水の特性を生かした酒造りを心がける早川さんは、「きちんとこの地域の風土を理解し、それをお酒で表現したい」と言います。

早川酒造では米の品種は適地適作があると考え、その品種に適した栽培地の米を使用しています。菰野町の自然がある風景と、酒造りに関わる皆さんの人柄を、信頼のおける契約農家が作ったこだわりのお米と鈴鹿山脈からの柔らかい伏流水で表現しています。様々な人が関わるお酒造り、そうした人たちの優しさを体感していただきたいとのことです。

2023年は新しい高温山廃の手法でのお酒造りに挑戦し、販売する予定とのこと。「新しい取り組みのため、県内の研究者の方々にもご協力をいただいていますが、未知数のこともたくさん。どうなるか私としても楽しみです」と早川さんは語ります。今後はタンクも増え、少しずつですが生産量も増やし、人も増やしていく予定の早川酒造。全国の皆さんに一人でも多く『田光』を広め、その味わいとともに菰野町の情景が伝わるような酒造りをしています。

菰野町の東の桑名市では大ぶりでしっかりとしたハマグリが名産。鍋いっぱいのハマグリと『田光』をぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。

合名会社早川酒造
三重県三重郡菰野町小島468
Web:https://hayakawa-syuzo.com/
Instagram:https://www.instagram.com/tabika_hayakawa.brewery/

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