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全テ嘘ダラケ #5「にちようび」

日曜日。
週に一度の休日。
フルリモートで毎日家で仕事をしているとはいえ、休日の家はやはり違う。
早起きしていつもよりきれいに髪を整え、洗濯をして布団を干す。晴れの日曜は最高だ。
向かいの保育園も、日曜だけは閉まっているので静かだ。空っぽの砂場は、いつもより少しだけ広く見える。
紅茶でもいれて、ゆっくり本でも読もうかな。
明日からまた、きっとがんばれる。



◆other side1
日曜日。
週に一度の休日。
疲れ切った手足を放り出す。奮発して頼んだデリバリーのピザは、食べ切る前にチーズがすっかり固まってしまった。
保育園の開園は7時、閉園は未定。18時までに延長保育の依頼があれば、21時だろうが残っていなければならない。朝と夜の交代制なんて形だけ。
「◯◯ちゃんを一人にしたらかわいそう」などと卑怯な言葉を使い、先輩保育士は自分の家庭があるからと先に帰る。
その言葉、かける相手を間違ってない?

わたしの家は、特別裕福ではなかったが、母親は専業主婦だった。学校から帰ってくると一緒におやつを作ったり、テレビを見たり、ご飯の準備をしたりした。
そういう風景は、「古き良き時代のもの」になってしまったんだろうか。

他は知らないが、うちの園児たちは静かだな、と思う。わたしなら、暗くなっても親が来なかったら、みんなの親は迎えに来るのにうちだけ来なかったら、保育士とかいう知らない大人がどう宥めようと叫び泣くに違いない。保健所に置いていかれた犬みたいに、捨てられたと信じて泣き続けるだろう。いろいろな感情を通り越して、感心してしまう。

子どもは減っている。なのに、保育士は足りない。
親の、子への愛情のかけ方も、きっとさまざまなのだろうが。

わたしは何を憂えているんだろう。
なんだかすごく、歪で大きなかたまりにぶつかってしまいそうな気がして、慌てて目を閉じた。



◆other side2
きょうは、にちようび。
なんにちかにいちど、やってくるにちようび。
なんでしってるかっていうと、
にちようびだけ、わたしのかぞくがべつのひとたちになるんだ。
このひとたちといちにちだけすごしたら、またいつものかぞくにあえる。
そうおもえるから、このひとたちといてもたのしいんだ。
あーあ、はやくあしたにならないかなぁ。



おしまい

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