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仙台育英学園高校硬式野球部・須江監督

TVerで昨日放送の情熱大陸を観た。
今回出演したのは、今夏の全国高校野球選手権で春夏通じて東北勢で初めて優勝した、仙台育英学園高校硬式野球部・須江 航監督。

そう、名言「青春って、すごく密なので」が、今年のユーキャン新語・流行語大賞で選考委員特別賞を受賞し話題となった、あの監督だ。

この番組内でも、須江監督の一言一句が心に響く。
だから、忘れないように、このnoteに書き留めておこうと思う。

甲子園出場を果たすような強豪校の監督というと、昔ながらの厳しくどっしりとした貫禄のある人物を想像するが(そう、かの名監督M氏のような💦)、須江監督はまだ40前の若さで、フットワークも軽く、何よりもタブレットを活用してデータを分析し、そこからトレーニングのメニューや戦術を細かく組み立てていくタイプの監督だ。

3年生が引退したとはいえ、さすが強豪校、現在仙台育英野球部の部員は1・2年生だけでも80名余り。その中で試合でべンチ入りできる部員は、たったの18名(2022年現在)。それも監督が独断で選ぶのではなく、須江監督は細かい基準を設け、選手たちに明確に提示している。選手たちはただガムシャラに練習するのではなく、その基準を1つ1つをクリアしながら、試合に出場できる選手になれるよう目指していくのだ。

番組では、須江監督が練習試合の申し込みに奔走している場面が映し出された。仙台育英は夏の甲子園に決勝まで残っていたために、次の秋の大会が始まるまで、練習する時間がほとんど取れていないし、ましてや練習試合もできていない。
さすがに仙台育英といえども、3年生が抜けた後の新チームで試合を一度も経験せずに、ぶっつけ本番で大会に臨むわけにはいかないということだ。

ようやく甲子園出場経験も持つ強豪校との練習試合の段取りがつくと、ホッとして監督がひとこと、「練習試合のマッチングアプリが欲しい。」
上手いことを言う。多忙を極める監督の為に、誰かシステムを開発してあげて欲しいくらいだ。

そして甲子園後初めての新チームによる練習試合では、相手チームにコテンパンにやられてしまう。惨敗した部員たちを見ながら監督は言った。
「成功じゃ成長しないですから」
成功(つまりここでは甲子園優勝ということか)しても、そこから得られるのは2、3割程度。成功に意味がないということではなく、失敗からの方が多くのものを得られるということなのだ。

そして、須江監督自身は野球部の監督を、『甲子園優勝』を目指して部員たちを指導するために引き受けたわけではないと明言している。
その先の、彼らが大人になり、社会に出た時、あるいは家族をもったときに、人として正しい選択をして幸せな人生を送ることができるか、そこを目指して、日々彼らを指導しているんだと。

様々な情報が簡単に手に入る現在では、例えば野球の練習方法一つとってみても、いろいろな人がいろいろなことを言っており、どの練習方法が自分にとって必要なのか、どのやり方が自分に合っているのかなど、若い選手たちは迷走してしまうという。だから彼らの「思考の交通整理をするのが現代の監督の役割だ」と須江監督は言う。

そのような須江監督の考え方に、私はとても共感した。
私自身は中学校で英語を教えているが、私は今目の前にある『比較級』の用法をマスターしてほしくて英語を教えているわけではない。
もちろん、私が教えたことで『比較級』を理解し、生徒がテストで良い点数をとることができれば嬉しいが、それは目標の一つであり、教師をしている目的ではない。

彼らが学習を通して、考え、理解し、練習問題を解き、間違え、どうして間違えてしまったのかを考え、自分の中で理解できている部分と理解不足の部分を整理し、そしてまた新たな問題を解き、それが出来たら、さらに難易度の高い問題に挑戦し、間違え、そしてまた理解し……ということを繰り返し体験してほしいのだ。
その経験を通して、自分の長所短所を知り、それらを受け入れ、さらなる高みへ挑む。この一連の行動は、社会に出て仕事をし始めたときや、家族を持ったり、人の子の親になったときに、必ず役に立つと思うのだ。

もちろん、その行動(ステップアップ)に必要なサポートをするために教師の存在がある。たとえばわからなかった部分を細かく解説する、あるいはもっと挑戦したくなるような面白い活動や練習問題を用意し、彼らが能動的に取り組めるように見守り励まし続けるのが私たち教師の役割だと、私は考えている。

スポーツにおける選手生命は決して長くはない。ましてや高校の野球部員でいられるのはわずか2年と少し。でもそこで経験したことは彼らが将来生きていくうえで、大きな糧となることはまちがいない。
常にその先を見据えている監督に指導を受けているのならなおさらだ。
須江監督のような人に出会えたことは、彼らにとって一生の財産となるであろう。



追記①なにげなく着ている部員の練習着ひとつとってみても、市販のスポーツTシャツなどではなく、すべて仙台育英オリジナルのもの。親、学校、地域や後援会など、多くの人たちに支えられているんだなぁ……と実感。
追記②新キャプテンは2年生の山田くん。甲子園優勝校のチームを引っ張っていくのは相当のプレッシャーだと思う。迷いながら練習に励む姿に、かの名作少女漫画『青空エール』のキャプテン山田の姿と重なる。偶然にも名前も同じ。実写化されたらぜひとも山田役を演じてほしいところ。
(いやもう実写化されてるて……💦)




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