愛国自粛オタクは40年前から転生した聖戦士だ
葡萄さんがマスク聖戦士の漫画を投稿していた。
筆者は以前から「マスクと自粛に固執する愛国オタクおじさん」は聖戦士だと思っていた(事後諸葛亮ではない)
それをnoteに書こうと下書きしていたのだが、この4ページの漫画が全て言い尽くしてしまった感もある。
私は漫画が描けない。彼らオタクが昭和の時点ですでに聖戦士だったことを文章で記していきたい。
表現の自由の聖戦士=自粛聖戦士
以前noteにも書いたが、マスクと自粛に固執する自粛界隈の相当数は〝愛国オタクおじさん〟である。
愛国オタクおじさんの投稿を見ると「フェミニストから表現の自由を守る戦士」(略して表自戦士)であることが多い。
正確に言えば
「愛国自粛オタクおじさんの投稿をチェックすると表自戦士だった」
というより
「表自戦士の投稿をチェックしたら愛国自粛オタクおじさんだった」
のほうが近いかもしれない。
「表現の自由を守る」ことを標榜し、朝から晩までフェミニスト叩き・左翼叩きで盛り上がっている層は程度の違いこそあれ、ほとんどが自粛聖戦士だった。
「表現の自由」といえば聞こえはいいが、彼らが守りたいのはもっぱらエロ漫画と二次元美少女イラストである。
しかし本人たちは「自分たちが日本の文化を悪の手から守る」という宗教的な使命感に燃えており、それを揶揄して「聖戦士」や(性表現に固執していることを揶揄して)「性戦士」「性戦士様」とも呼ばれる。
表自戦士は漫画やアニメのような単純な世界観しか持ち合わせておらず、味方以外は全て敵だと思っている。
オタクの中にも「さすがにこんなイラストを公共の場に置くのはおかしいのでは?」と思う者も少なくないが、表自戦士はそれらを「フェミニストによる我々への不当な攻撃」と受け止め、イナゴのように批判のリプを投稿する。
表自戦士が教祖のように崇めるのが自民党議員の赤松健と山田太郎だが、オタクや自民党員にも赤松健の発言に疑問を感じたり気持ち悪いと思う者は大勢いる。
筆者は22年夏の参院選選挙のおり
「赤松健の発言は的外れ。崇拝している表自戦士も気持ち悪い」と投稿したところ、表自戦士の方から
「日本文化を破壊しようとする野党支持の極左フェミニスト」
という批判をいただいた。
筆者は学生時代に社会党の演説を単身で妨害しに行ったこともある。保守団体にも属していた時期もあるし今まで一貫して左派に投票したことはない。しかし彼らにとって「赤松尊師を批判するのは全て極左フェミニスト」ということになるのだ。
「自分に賛同しない者は全て敵」という単純で幼稚な世界観は、コロナ自粛聖戦士が
「自粛とマスクに反対する者は反ワクチン陰謀論者でロシア支持者」
と決めつけたのとそっくりである。
これは一部の野党支持者が
「自民党を支持しているのは統一教会の信者だ」
と荒唐無稽な主張をすることに似ているかもしれない。
第三者には理解不能な異常な論理だが、本人たちは「聖戦に参加し異教徒を攻撃する」という宗教的幸福で満たされている。
表自聖戦士と自粛聖戦士は現実のコミュニティに居場所がない愛国オタクおじさんの最後の駆け込み寺なのだ。
表自戦士は13年前から性戦士と呼ばれていた
2010年、東京都の「東京都青少年の健全な育成に関する条例」、通称「非実在青少年騒動」「都条例騒動」がネットを騒がせた。
簡単に説明すると「東京都の改正条例が可決されると全ての漫画が規制され、ドラえもんも少年ジャンプも全部読めなくなる。日本の漫画やアニメ文化が滅びる」と一部のオタクがヒステリーを起こしていたのだ。
もちろんオタクの中にも「君たちはネットのデマに騙されてるよ。冷静になろう」と説得を試みる者もいたが、聖戦士と化したオタク(バーサーカー?)はそれらの投稿へイナゴのように群がり批判や罵倒のリプライを飛ばした。
そもそも騒ぎの発端は「本来なら成人指定されるべき過激性描写のエロ漫画を一般誌に掲載し続け、行政側からの再三の呼びかけを無視し続けた」大手出版社の態度が原因だが、出版社側は「東京都から何の通告もないし話し合いにも一切応じてくれない」という言い分を繰り広げた。
当時から指摘されていたが、これは左派勢力が仕掛けた「石原都知事叩き」だが、角川書店を筆頭に大手出版社がオタクに愛想をふりまこうと条例への批判を表明したためオタクは「悪の東京都から表現の自由を守る聖戦士」と化したのである。
「コロナ5類化で日本が滅ぶ!俺たち聖戦士の出番だ!ネットに敵の批判を書き込もう!」
間違えた。
「改正都条例で漫画とアニメが滅ぶ!俺たち聖戦士の出番だ!ネットに敵の批判を書き込もう!」
この条例は石原都知事が発案・推進したわけではないが、東京都の象徴である石原氏への様々な攻撃(著書や本人への罵倒や中傷)がネットに投稿された。
言論の自由を守るために立ち上がったはずのオタク聖戦士だが「気に食わない奴は死ね」「嫌いな奴の作品を貶めよう」という幼稚な世界観が彼らの行動原理だ。
都知事の殺害を描いたコラ画像に聖戦士たちは大喜びした。
漫画家の平野耕太氏は「リイド社なら『スイス銀行に入金を確認次第、行動を開始する』」と、まるで漫画ゴルゴ13による都知事暗殺を暗喩する投稿をした。
筆者はこの投稿に対し
「平野氏の投稿は『言論の自由を守る』どころか『言論を暴力で沈黙させるのを肯定している』ようなものじゃないか」
と投稿したところ、いつのまにか氏にブロックされていた。RTも引用も一切していないのでエゴサーチで発見されたのだと思う。
コロナ騒動でも「自粛やマスクやワクチンに反対する者に実力行使をしたい」という投稿が喝采を浴びていた。
2年前、筆者は昔とった杵柄で有志を募り、陰謀論団体の演説を批判(妨害)しに行った。
だが彼らを暴力で沈黙させようとか、ましてや殺意を抱いたことはない。日本人同士、話せばわかるの精神だ。
思うに実際に対話や暴力を行使する覚悟のない者ほどネットに「死ね」「殺せ」と威勢の良い投稿したがるのだろう。
去年から「反ワクチンは死ね」「ノーマスクを殺害したい」と絶叫する自粛界隈の人たちは完全に一線を超えてしまったように思える。
13年前の聖戦士(性戦士)批判の足跡
当時の多くのオタクは都条例騒動が左派の扇動だと見抜いていたため、保守側もリベラル側も共闘してオタク性戦士を批判していた。そのときにフォローした数名は今回のコロナ騒動でも「荒唐無稽なワクチン陰謀論は批判するが自粛やマスクには固執しない」という姿勢を貫いている。
ツイッターが日本語対応した2008年には「性戦士」という単語が投稿されているが、表自戦士を初めて「性戦士」と揶揄した投稿は2010年5月あたりが最初期と思われる。
当時の聖戦士の狂いっぷりはすさまじく、筆者も友人2名から「東京都の条例で漫画やアニメが滅ぶぞ!」というメールが送られてきた。
もちろん一部のオタクしかそんなヨタ話を信じていなかったが、それが「真実に目覚めた選ばれし聖戦士」という正義感を加速させたのだと思う。
これは2021年頃の反ワクチン陰謀論者の行動に近いかもしれない。
「ネットで知った真実。すなわち『ワクチンによる人口削減計画』を一人でも多くの無知な大衆に知らせなければ!接種を阻止しなければ!」
という使命感に駆られ、SNSでの過剰なリプライや関係部署への電話攻勢、会場への妨害行為を繰り返した。
それを医クラが集中的に拡散したことで「ワクチンに反対する者」のイメージがどんどん悪化してしまったと思う。
2010年当時の表自聖戦士は、まるで友人に総当たり勧誘するネズミ講のように、友人・知人・ミクシィやツイッターのフォロワーに「真実」を知らせまくった。
否定されると敵認定し集団で群がって攻撃した。
また、交渉や話し合いを提案した者は裏切り行為として罵詈雑言を浴びせまくった。
あちこちのSNSや掲示板で「正義に目覚めた性戦士の布教がウザい」と煙たがられ、2ちゃんねるにスレが立ったのは2010年3月17日である。
【愚痴】非実在青少年なんちゃら関連がうざい【ガス抜き】
【愚痴】非実在青少年なんちゃら関連がうざい【ガス抜き】
「都条例反対に参加しない奴は死ね」と書いたオタクが、13年後にまた「自粛やマスクに反対する奴はコロナに感染して死ね」と叫んでいるのだろうか。
コロナ自粛推進派もツイッター以外のSNSでは全く見かけない。愛国自粛オタクも夏が終わる頃には5類化で発狂した事を忘れているだろうか。
5類に賛成した人たちが感染して死にますように、と呪っている人たちは今たくさんいる。
【愚痴】非実在青少年なんちゃら関連がうざい3【ガス抜き】
2010年の聖戦士はツイッターで叫ぶだけで実害はなかった。2023年の自粛聖戦士は実際にクレームの電話を入れたり、正常化を推進する人々に誹謗中傷の投稿をしたりと多大な迷惑をかけている。
オタク性戦士の絶叫も虚しく10年12月13日に条例は可決。
性戦士様を揶揄する同人板のスレは11年7月28日の投稿を最後に過疎り、難民板のスレも11年12月19日を最後に書き込みは止まった
(記録として魚拓を貼っておくが長いので見る必要はありません)
これ以降2ちゃんに新たなスレが立つこともなく騒動は鎮静化した。
本来ならばこれによって実際に規制を受けたエロ漫画を手に持ち
「この漫画が規制されました!表現の自由の侵害です!」
と叫ぶのが筋だと思うが、法案の成立直前だけ「この法案が可決すると日本が滅亡する!」と大騒ぎする野党やマスコミと同じく、オタクはもう表現の自由に関心を示さなかった。
彼らは聖戦に参加する一体感や興奮が欲しかっただけなのかもしれない。
我ら聖戦士の忠告を無視するならいっそ滅びてしまえ症候群
23年春、ようやくコロナが5類化決定の報道に接し自粛界隈では
「感染爆発して阿鼻叫喚になればいい。そうすればノーマスクどもは過ちに気づくだろう」
「感染拡大して大勢死んでほしい」
と、もはや自説のために死者の増加を願う投稿がツイッター上に散見された。
残念ながら大量のイイネやRTを集めバズった投稿は削除されたが(もしそういった投稿を知っている方がいたらコメント欄かツイッターのDMでURLを知らせてほしい)、自粛界隈の多くが「感染拡大して死者・重症者が増加してほしい」と願っていたのだ。
このとき真っ先に思い出したのがかつての表自聖戦士である。
先鋭化した表自聖戦士が「そんなに俺の忠告に従わないなら、表現規制されて阿鼻叫喚になるのが楽しみだ」と発言し批判を浴びたのだ。
感染拡大を防ぐのが悲願ではなかったのか?
表現規制を食い止めるのが目的だったんじゃないのか?
なぜ「自分の忠告に従わないならいっそ最悪の結果で大惨事になり、奴らに俺の正しさを分からせてやる」という発想になるのか。
まるでゲームや漫画に出てくる「信じた正義に裏切られ、逆恨みで復讐鬼と化した悪役」のセリフではないか。
聖戦士は自分を正義のヒーローと信じて戦っていたようだが、結局は復讐鬼と化した哀れな悪役にしかなれないのだ。
オタク聖戦士の起源は昭和にあり
さらに遡ると「自分は正義を守る選ばれた戦士」という妄想の起源は平成ではない。
1983年(昭和58年)に公開されたアニメ映画「幻魔大戦」は、前世から転生した光の戦士たちが世界中から結集し、宇宙からやって来た暗黒の勢力と戦うストーリーだ。
この予告編に出てくる
「すでに100億の宇宙は暗黒と化した。地球を護れ!目覚めよ超能力者たち!日本、ニューヨーク、そして世界各地から!ひとり、またひとり!地球最後の闘い(ハルマゲドン)に結集せよ!」
という煽り文を
「すでに全世界の国々はコロナに敗北した。日本を護れ!目覚めよ聖戦士たち!日本、ニューヨーク、そして世界各地から『マスクを死守する日本人の道徳心の高さ』が賞賛されている!日本存亡の戦い(コロナ5類化)に結集せよ!」
に置き換えても全く違和感を感じないことに気づいた。
最終戦争(今ならコロナ5類化?)に備える目覚めた戦士
この映画は日本中のオタクに影響を与え、83年を境にオカルト雑誌「ムー」の文通募集欄は
といった類の所謂「戦士症候群」「前世少女」と呼ばれる投稿で埋め尽くされた。
天使の王国 平成の精神史的起源
関係者を取材した浅羽通明によれば「前世投稿」の83%が女性。中高生がそのほとんどを占め、特に高校2年生が多いとある。
また86年に「超能力が目覚めない、仲間の戦士が見つからない」などの悩みを書き残した18歳の少女が都営住宅の11階から妹と一緒に飛び降り心中した事件についても触れられている。
この異様な現象を危惧したムー編集部は、とうとう88年5月号を最後に前世投稿は一切掲載しない方針を決めた。
前世投稿についてはこのサイトも。
このnoteでは前世少女の思い出が書かれている。
ムーが前世投稿を掲載しなくなった1年後、麻原彰晃が作った宗教団体は「オウム真理教」に改名。
「地球最後の闘い(ハルマゲドン)に備える」という教義で多くの信者を集め、7年後に死傷者6,300人を出す地下鉄サリン事件を引き起こした。
「幻魔大戦」を製作した角川春樹氏はオウム事件についてこう語っている。
「戦士の皆さん、目覚めて一緒に戦いましょう」
と呼びかけた女子高生たちも今では5〜60代。
そのうちの何人かはツイッターで5類化反対を叫ぶ聖戦士になれただろうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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