信じていい嘘

(「女は~」とか「女風ユーザーは~」など非常にデカイ主語を使っていますが戯れ言ですのでお目こぼしいただけたらと思います。)


生きていれば名字なんてコロコロ変わる
女なんてそんな生き物だ
ファミリーネームに執着なんかなくていい

一年と持たなかった結婚生活を終えた時にそう思った。
今でもそう思っている。


名前は大切だ。
マスク社会において顔のパーツの記号性が1つ2つ失われたこの時代であっても、名前は大昔から変わらず個人の看板であり言霊であり呪い/祝福であり、記憶や思い出である。

名前はまた仮面である。
別の名前を名乗れば別の人間になれる。
名字がコロコロ変わり、源氏名もいくつか抱え、友人らは戸籍の名前とは全く関わりの無い愛称で呼ぶ。
いくつもの名前があり、いくつもの仮面が足元に散らばっている。

女風遊びをするにあたって新しく名前を作った。半年ほど前のことである。
その名前、またこれまでの源氏名や愛称らは、かりそめのもので決してわたしの真実ではないけど、虚構にしては多くのアイデンティティが食い込んだ姿に仕上がっている。
セラピスト/キャストさんの源氏名もそうでしょう?
ユーザーさんもそうだと一方的に信じている。

ユーザーのフェイクの名前は使い心地がいい。
仮面だからこそさらけ出せる本心がある。
知人がいないとわかっているから見せられる痴態がある。
仮面の盾に隠れてたまに攻撃的になってしまうのは反省しなければならない。

セラピスト/キャストさんの源氏名の仮面はどうなのだろう
自分が源氏名で商売していた時は店が好きだったらその名前は好きだし、店が嫌いだったら気に入らなかった、くらい単純な感情だった。
源氏名が好きでなかった時は上手に仮面を被れていなかっただろうなと思います。
給料もろてんねやったら上手に仮面被らなあかんね、仕事やねんし。と今になれば思う。当時は若かった。

セラピストさんに何人か会ったなかで、ひとりだけ仮面がずれているな、と感じた人がいた。
会話や性戯の巧拙ではなく、また源氏名と付き合った時間の長さも関係なかった。
彼はきっと無理をしていたのかもしれない。
なんというか、素顔と違う姿のブランディングをして「無理しているな」っていうのが伝わったのかもしれない。

源氏名はもちろん素の姿と違う自分を演出するために必要な小道具である。
女風ユーザーだって、素のあなたに惚れて口説いてエロいことする手順が面倒だから虚構のあなたを信じて予約するんだ。
でもね、素の姿からあまりに離れた仮面は辛いでしょう。
源氏名なんて所詮嘘なんですから、ほころびが出るでしょう。
男が女を騙しきれるでしょうか?きっと難しいです。
仮面のずれた隙間から、彼の苦しい息遣いを聞いた心地になりました。

風俗遊びの時間なんて何もかも虚構だと思っています。あなたの言葉もわたしの「好き」も。もしかしたら押し付けあった肌の熱もこぼれた息も液も。
みんな封筒の中で重なる銀行券が見せた幻かもしれない。

性欲を愛と勘違いしたら地獄に行こう。
そこは彼の腕のなかと同じ暖かさで、死にたいくらいに居心地がいいらしい。


だから源氏名はたったひとつ、その時間のなかでユーザーが信じていい嘘だと思っています。
その嘘を信じなければ風俗遊びははじめられないから。


セラピストさんが質問箱を設けていることもよくある現状ですが、わたしは彼らの源氏名をつけた由来だけが知りたい。
答えてほしい言葉をもらいたくてする質問は空しい。
その他の類いの質問も、結局彼らの仮面が商売の言葉で返すものばかりだ。
でも源氏名に関わるそれだけは、素顔に一番近い部分にあると信じたい。


セラピストさんたちは自分の源氏名を気に入っているだろうか?
あなたたちの源氏名は看板であり言霊であり呪い/祝福であり、誰かの記憶や思い出である。
虚構の愛の思い出、銀行券の見せた記憶。
それでも120分見たその幻のお陰で生きていける今日があるから、思いの依り代としてあなたの源氏名を愛するしかない。
誰かに愛された記憶の保管庫としてあなたの源氏名を大切にしてくれたら幸いです。

まあね、愛着なんて後からついてくるものですものね。
わたしもコロコロ変わる名前たちを愛していきます。

言いたかったこと!
⇒仮の名前は風俗遊びを楽しむのに必要な小道具ではあるけどあまり素の姿から離れた姿のブランディングは化けの皮が剥がれるからスケベする気持ちにならないよ!
世間の思う男前でなくてあなたの中の男前を仮面を透かして見せておくれ!


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