無性愛者と修学旅行の夜

私は無性愛者だ。
厳密に言うと、恋愛指向が「アロマンティック」に相当する。
この世に生まれ落ちて、もうすぐ28年にもなるが、恋愛感情で誰かを好きになった事がないのだ。

最近Twitterのニュースで、無性愛者であることを公表した方の記事を見たが、そのTwitterのリプ欄に、物凄く共感できるコメントを見つけた。


「修学旅行の夜に、好きな人を聞かれる時間が辛かった」


すっかり忘れていた記憶だが、一気に記憶が蘇って、心にグサグサと突き刺さった。

あの頃は「無性愛」なんて言葉を知るはずもなく、ただ私はまだ好きな人に出会えてないだけだと思っていたが、確かにあの時間は、心臓がドクドク言うのが自分でも分かるほど緊張して辛かった。



敷き詰められた布団の上で、同じ部屋の子達で輪になって座り、カースト上位の女の子が「一人ずつ好きな人を暴露していこう!」と提案する。

誰得でも無い、罰ゲームのようなクソトークテーマだが、女の子達だけで秘密を共有する感じがワクワクさせたのか、なぜか多くの子がそれに乗り気だった。

もし、皆んな好きな人がいて、暴露していって、私だけ好きな人がいなかったら、どうしよう…
「皆んなは言ってるのに、筆者ちゃんだけ言わないなんてズルい!嘘つき!!」
なんて言われたらどうしよう…
そんな事言われるくらいなら、嘘で当たり障りのなさそうな男子の名前を出すべきか…
でもうまく演技できるだろうか…
誰のことを話そうか…
と、バクバクしながら考えていた。

結果的に言うと、私の場合は、私の前に「いない」と答えてくれた子がいた。
案の定、「絶対うそだー!!」とか言われていたが、私はここぞとばかりに、「そうだよね〜!!私もそうだよ!好きになれるようなやついなくない?!」とか盛り立てて、先に自分がいない事をアピールする事で、その場を逃れた。

今思うと、かなり場をしらけさていた気がするが、そんな事より保身が大事だった。

あの頃はだだ、嘘つきだと思われるのが怖かったのだ。


それからも、常に自分に好きな人はいないと公言してきた。

大学生ぐらいになってからは、普通の恋をする女友達に、どうやって惚れたのか質問攻めにした事が何度もあるが、結局私には理解できなかった。
優しくされたから…とか言われると、優しい男なんていっぱいいない?
とか言ったりして、めちゃモテ女みたいなつめ方をしたりした。笑

さぞ、うざかっただろう。


多くの人からすれば、恋をしない人間の事が信じられないかもしれないが、私からすると、恋をできる人間が不思議で不思議で仕方ないのだ。

私は昔から、アイドルや芸能人のオタクになりやすい性格なので、アイドルに対してかっこいいー!!!となる気持ちは理解できるのだが、身近にいる男子に対して、かっこいいー!!!となる気持ちは一ミリも理解できなかった。

今でも全然わからない。

もうアラサーなので、流石に諦めかけてはいるものの、まだ好きになれるような人に出会えていないだけ説を完全に捨てたわけではない。

だが、今のところ私は、これからもオタ活で楽しく幸せを手に入れようとしている😇

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