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東京都現代美術館へ行ってきた話

7月某日。
電車が止まって、何もかも嫌になったので会社を休んで清澄白河で降りた。

空は澄み渡っていて、夏を予感させるような日差しがあった。予感、というかもう夏なんだけど、数日前まで梅雨だったから自覚がなかったね。
小学校の頃は体調を崩しやすくてすぐ学校を休んでいたけど、仕事を抜けてきた母親とゲオでDVDを借りてきた時間が好きだったことを思い出した。


仕事をサボったものの、当然やることもないので、近くの美術館へ行くためにGoogleマップを起動した。東京は、どの駅にも近くに美術館がある(気がする)。
「仕事をサボって美術館へ行く」。悪くない響きだ。

「東京都現代美術館」というものが歩いて15分くらいのところにあったので、そこへ向かうことにした。

ところでわたしは現代アートはよくわからない。現代アートは、その「モノ」というより、知覚している自分がその作品を通して何を感じるか、その作品に込められた意図に価値を置いているという認識だ。それのせいか、美術館自体の雰囲気は、コンクリート製の無機質な外観とは裏腹に陽の光を集めるように柔らかくて、上野の美術館とはまた違った趣を感ぜられた。

「オラファー・エリアソン ときに川は橋になる」
「もつれるものたち」
「おさなごころを、きみに」
の3つの特別展が催されていて、3展示+常設展が3000円だったので、サボりにはちょうどいいなと、美術館に入り浸ることに。

以下、展示の写真OKだったところで、印象深かったところを、訪問順に抜粋してお送りします。
現代美術、写真OKなところ多くて嬉しいね。恋人や友人と思い出の1ページを彩れるから、デートには悪くない選択肢だね。

■オラファー・エリアソン ときに川は橋になる

北欧あたりの芸術家さんらしい。
環境問題に取り組んでいて、コンセプトとか作品に込めた思いが強い感じだった。

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クリティカルゾーンの記憶(ドイツ―ポーランド―ロシア―中国―日本)

芸術品を運ぶとき、普通は空輸らしいのだけど、環境に悪影響なので本展示品は列車や海運で輸送しました、とのこと。その軌跡を描いた作品らしい。

グレタさんを思い出し。わたしは環境問題を考えることはso coolだと思ってる(徹底できてないけど…)
ゼロ・ウェイストの本を買って読んだり、買い物するときは捨てる時まで考えるようにしてるようになったかな。

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サステナビリティの研究室

「サステナビリティ(sustainability)」とは、持続可能性のことであるらしい。
錬金術師のアトリエっぽくて好きだった展示。

オラファー・エリアソンの展示はインスタレーションも多いので、だれかと行って写真を撮り合うとかもよさそうだなーと。
知り合いの芸大生に現代美術ようわからんって言ったら「オラファー・エリアソンは現代美術の中でもわかりにくいほう」と言われて安心しました。

■MOTコレクション(常設展)

基本的に特別展しか行かないんだけど、常設展もかなり良かった。今まで常設展スルーしてたの、人生の損失かもしれない!

常設展は写真OKなところと写真NGなところが混在していたので注意が必要ですね。

草間彌生のちんこドレッサー(正式名称知らん)があって感動したんだけど、やっぱり草間彌生作品の本質って「気持ち悪さ」だなあって。エログロナンセンスの人ってのもあるんだけど。
草間さんの水玉が気持ち悪いって言ってた人がいたけど、やっぱあの水玉も草間さんの男性器モチーフの作品とかグロテスクな花とかの延長にあるんだろうね。
ちんこドレッサーに関しては、飾り立てる女性に男性の影が透けて見えて、そういう意味でも気持ち悪くて良かったなあと。

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オノ・ヨーコの「YES」があった。感動。(よく展示した!)

■もつれるものたち

なんだか全体的にわからなかった。
確かこの時点で結構疲れていた気がする。

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トム・ニコルソン「相対的なモニュメント(シェラル)」

モザイク画は結構好きなので気になった作品。
第一次世界大戦中に奪われたこのモザイク群を返還しようというプロジェクトがあるみたい。

あとは、映像作品でリウ・チュアン「ビットコイン採掘と少数民族のフィールド・レコーディング」は何となく気になったなあ。どこがっていうのは具体的には難しいけれども。なんだろうな。
ダムの激流の音、無数のビットコイン採掘用のCPU群の映像を眺めて、人間の作った社会システムと自然との共生とかをぼんやり考えていた気がする。少数民族についても映像にあった。人の居住区での営みを見るのは好きだけど、少数民族のそれは苦しいところもあるから、とても嫌な予感から底の部分だけ記憶が薄らいでいるのかもしれない。

■おさなごころを、きみに

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このイラストが気になって美術館へ行ったまである。
新世紀ヱヴァンゲリヲンの「Air/まごころを、君に」にタイトルが似ててイイな。いいタイトルだ、どっちも。

この展示では、のらもじ発見プロジェクトがかなりお気に入りだった。

町にある手書き文字を50文字分のフォントにするプロジェクトで、味わい深い文字たちが多い。
以前見つけた、緑に侵食されている電気屋さんの看板もあった。

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味わい深いソーシャルディスタンスもあったよ。

美術館は作品自体も良いんだけど、解説文が特に面白い。作品が生まれた背景や、作者の想いを文章に込めていくのが素敵だなあって。現代美術は特にその色が出やすくて、解説文読んでるだけで時間が溶けていく。

そういえば、アートグッズ売り場に、この世に二つと同じ形のない、鏡の破片のピアス(5000円)があって、こういうものにも意味づけをして価値を見出すのっていいなあと思ったよ。

文章活動を通して、自分の「スキ」をカタチにしたいとおもっております。かしこ。