[祝宴の白姫]神崎蘭子が許せない

 アイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージ(以下デレステ)が、先日4周年を迎えました。先ずは、おめでとうございます。4年間続けてくださってありがとうございます。あなたがたの仕事は、私の心の糧です。
 デレステはとても素晴らしいゲームです。私はデレに担当を持つPですが、デレステには感謝してもしきれません。架空のアイドルだった私の担当を、歌って踊る、お仕事をする、肉を持ったアイドルにしてくれたのは、このデレステでした。
 私はこのデレというコンテンツが大好きです。アイドルが大切にされている様が大好きです。人気のあるアイドルが贔屓され、そうではないアイドルが淘汰される、なんだか妙に厳しいこのシンデレラガールズのことが大好きです。

 それでも[祝宴の白姫]神崎蘭子は、到底許せるものではなかった。
 私が許さなかったところで、デレステは続きます。もちろん、シンデレラガールズも続きます。私に許されてサービスを運営しているわけではありません。だからこれは、私個人の感じた、やりようのない、悲しみのようなものです。同意も、同情も、しなくても構いませんから、そう肝に銘じて、どうか読んでください。これは、あなたのような読者に読まれるために、書いています。

 なにが許せないか。衣装です。そして、3Dモデルです。
 ここ一年ほど、デレステの衣装の質がガクンと落ちました。2019年に入ってからはかなり顕著です。正直、目も当てられないと感じます。今回の4周年アニバーサリーの3モデルは、今までのアニバーサリーのものと比べて、全てお粗末だと感じます。この一年の不満が、アニバーサリーで噴出したので、この記事を書いています。
 大変申し訳ありませんが、この記事を書いている時点で、私はこのカードを所持していません。引けていません。許したくない衣装のために9万円を投資できるような金銭感覚もしていません。ですので、言及の中に、私が集めた情報では知り得ない間違った部分があるかもしれません。もしそのようなものがあれば、なにがしかの手段でご教授いただけると幸いです。

 神崎蘭子は、ゴシックアンドロリータが好きな、いわゆる「中二病」の女の子です。幻想と物語の世界に生きたいと願い、自らにロールプレイで暗示をかける。そのためにたくさんの語彙の勉強をしたり、自分でドレスのデザインを考えたりする、真摯な女の子です。
 今回神崎蘭子に与えられた衣装を見てみましょう。

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 下着!?!??
 神崎蘭子は下着モデルをさせられるためにステージに立つのでしょうか。私は、違うと思っていたのですが。
 私はアイドルがグラビアを撮ること、肌を露出することについて、それ自体が悪だとは思いません。ただ、これは、率直にダサすぎる。デザインがダサい。どのあたりが「ダサい」のかを紐解きましょう。

・ドレスとして上半身と下半身のバランスが取れていない
 衣装はトータルコーディネイトで印象を決定します。そのコーディネイトは、色を揃えればコーディネイトとしてOK、というものではありません。また、ドレスというものは、基本的にワンピース(ひと続きのパーツ、の意です)で構成されています。[祝宴の白姫]も全体の雰囲気を見る限りはドレスを意識してデザインされたように見えます。
 今回の衣装では、それが上半身と下半身のパーツに分けて構成されています。フロントから衣装全体を見たとき、上半身のパーツと下半身のパーツが違うテイストのものに見えます。下半身に比べて、上半身が軽すぎるのです。露出面積の問題もそうですし、単純に布の量が上下でかなり違いますね。しかし、頭に目をやった時に頭には装飾がたくさんついている。上から重・軽・重のコントラストになっています。
 ではどうして真ん中が軽いとアンバランスに見えるのでしょうか。スカートは基本的に「吊られているもの」です。その吊られているものの上が軽いと(しかもウエストのラインがV字で幅がほぼゼロ!)、スカートというパーツが安定しないように見えるからです。踊ったらずり落ちそう、というか。後ろから見た時にこの印象が薄れるのは、トップスの裾のフリルが見えない(=エアリーな印象を与える要素が隠れている)こと、ウエストに重いモチーフがあること、ウエストのラインとスカートのラインがしっかりと連なっていて「落ちなさそう」なイメージに引っ張られるからです。

 同じドレスを意識してデザインされたであろう神崎蘭子の衣装から、[運命の待ち人]神崎蘭子と比較してみましょう。

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 いつみてもうっとりするほど素敵なデザインです。
 こちらはその特徴的なスカートから分かる通り、バッスルスタイルのドレスの意匠が施されています。正面からみた時にスカート内部にクリノリンが確認できます(本当に細かい!)。スカートは二枚仕立てになっており、上のスカートが前二箇所・後ろ一箇所の計三箇所でたくし上げられています。まるでアトリエピエロのような美しい仕立て。全面が真っ黒なので一見シンメトリーに見えますが、たくし上げの向かって右側の方が位置が高い、リボンの折りもランダムなど、遊び心がアシンメトリーに現れています。

 また、全体として黒を基調にまとめられていながら、黒の濃淡で美しく彩色を施し、差し色として赤・紫・青の色を慎重に挟んできています。紫を基準にしつつ明度を落とした赤と青を使用することで、蘭子の綺麗な赤い目を強調し馴染ませる効果があるうえ、差し色が全体のまとまりを邪魔することもありません。
 一方[祝宴の白姫]はどうでしょうか。白を基調としていますが、実のところ実に多彩な色が使われており、全体としてばらけた印象を受けます。一番わかりやすいのはスカートの裏地と花のモチーフの色の乖離でしょうか。スカートの裏地は彩度・明度ともに高い水色、一方ツインテールと腰のリボンに施された薔薇のコサージュは彩度が低く明度が高いピンク寄りの紫です。この色は蘭子の目の色と相性が最悪です。蘭子の目は彩度が高い赤。彩度がほぼゼロのグレーの髪が間に挟まるとはいえ、その目の近くにこの色を配置するのはいただけません。[運命の待ち人]のミニハットにあしらわれた蝶々の羽は、彩度が高い紫〜青のグラデーションになっています。この色なら蘭子の目の色に負けることもありません。

・とにかく身頃のデザインがアイドルの衣装として最悪
 後ろから見たシルエットとしてはウエディングドレスに近いものとなっています。ドレスらしい、背中の大胆なカッティングラインと首元のまるでセーラーカラーのような襟が幼さとセクシーさの共存になっており、蘭子の清潔さとアンバランスさが出ているようでとても可愛らしいデザインだと思います。
 が、前から見た時にどのような印象を受けるでしょうか。私にはネグリジェ、いえ、ベビードールの意匠に見えます。
 ネグリジェは男女ともに着用されていた、いわばパジャマです。寝室で楽に過ごすために作られ、名も「だらしない」を意味します。一方ベビードールは、同じナイティでもランジェリーに近い位置に分類されます。ベビードールの最大の特徴は「胸下切り替えから裾が広がっている」「レースやシフォンなどの軽い素材が使用される」という点にあります。そうです。ほぼ合致しますね。腹部が露出していることもあり、より一層その印象が強く残ります。また、胸元のデザインもほぼブラカップです(これは正直、恒常きらりの時点から気になっていたのですが)。胸の形を意識させるような切り替えに加え、アンダーバスト側に寄せられた布、まるでワイヤーが入れられているかのようなアンダーバストのライン、上下に沿って縁取られたフリル、すべて下着によくある意匠です。
 後ろから見ればコルセットに見えますが、それもおかしな話です。アンダーバストのラインから接続され体の前側で繋がっていない布が腰を補助できるわけがありません。ましてや前柄の裾には大きめのフリルがあしらわれ軽やかな印象を受けます。重く締められたコルセットとは正反対の雰囲気です。

 さて、こちらも先ほどの[運命の待ち人]神崎蘭子と比較してみようと思います。[運命の待ち人]も胸が強調されるようなラインのデザインですが、アンダーバスト側はコルセットに区切られ、デコルテ側はボレロに区切られているため、品の良い印象でまとめられています。また、バスト部分のデザインもフリルのついた前立てを中心に、縦ラインがあしらわれており、バストそれ自体を強調する目的よりもより「ドレスシャツ」らしい仕上がりになっています。
 また、コルセットもよりコルセットらしく、後ろ側で絞られ、前面の二箇所で切り替えられています。スカートに合わせ後ろ上がりになっていますね。また、コルセットとスカートの接続部分も見てみましょう。一般的にコルセットは中に芯材が入っており硬く、逆にスカートは柔らかい素材が使われることが多いパーツです。それに倣い、スカートの方にギャザーが寄せられ、綺麗な波ができています。つまり、ここでもきちんと布としての辻褄が合わせられているのです。項目が前後しますが、前述したバランスの観点においても、上から軽・重・重となっており、しっかりと地に足のついたデザインになっています。

また、この形の前身頃の話をしたところですので、もうひとつ引用しなければならない衣装があります。[憧れへのステップ]乙倉悠貴です。

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 こちらも「胸下切り替え」で「裾広がり」です。しかし、こちらは本当によく練られたデザインに思えます。どこが違うのでしょうか。
 まず第一に、露出の範囲が全くもって違います。[祝宴の白姫]では胸下まで切り込みが入っていますが、こちらは胸下に太いベルトが巻かれており(後ろ側にホールと紐が見えるためベルトと判断しました)、露出はその下からです。これは乙倉本人のいう「ちょっぴりセクシー」の範囲内のように思えます。そして、ウエストの下側もスカートのウエスト部分がきちんと芯材の入ったようなデザインになっておりスカートの見た目の安定性としてもかなり高いものになっています。デコルテ〜背中にかけてもチュールで覆われて単なる露出となっていないことも追い風になって、きちんとした「お洒落着」に見えますね。レースらしいレースがほとんど使われていないことも起因しているように思えます。
 (しかしこの衣装、可愛いですね。上半身と切り替えより下でチュールの種類が違うのも細かいし、チュールのふちを飾るフリルもそれを飾るステッチも素敵。靴も可愛い。中のスカートのプリントもとても凝っています。本当に可愛いな〜!)

 話を[祝宴の白姫]に戻しましょう。これはなんのために、誰のためにデザインされたものなのでしょうか。全体として「清潔」を表す白を基調にし、蘭子らしくフリル・レース・リボンのモチーフを随所に忍ばせておきながら、なぜ前身頃だけこんなにちぐはぐなデザインなのでしょうか。ベビードールは、ドレスではありません。そして、神崎蘭子はベビードールをドレスにしたがる女の子だとは思えません。というか、蘭子の知識の範囲を考えたとき、神崎蘭子は果たしてベビードールを認識しているのでしょうか。プロデューサーという肩書きを与えられたプレイヤー、つまり、私は、何も知らないかもしれない神崎蘭子に、この衣装を与えたという設定を付与されなければならないのでしょうか。

・髪型のアレンジが合わない上に相乗効果で悪い影響を及ぼしている
 蘭子のツインテールは、普段はもっと上の位置で結ばれており、きつくカールしています。今回は位置が下げられ、緩やかな巻きにされていますね。
 これは正直、完全なる悪手だと思います。前身頃のデザインがナイティのようであるとは前述した通りですが、「結ぶ位置が下」「カールが緩い」というのは、そういう「休息」と「隙」の印象を与えます。ですが、神崎蘭子がこのセットを披露するのは休息の場でしょうか。真逆の場所ではなかったでしょうか。そして、神崎蘭子は人前に出るのに、そういう類の隙を見せるような人でしょうか。
 [祝宴の白姫]のツインテールは異様に「気の抜けた」印象を与えます。普段より位置が低いことに加え、耳あたりからのカールの形がランダムで、毛束の量がカールの房ごとに異なっています。とてもではないがコテで巻いた整然としたカールにはなっておらず「下手なスタイリストの練習台にされた」ようにしか見えません。ふつう、どんな「ゆるふわカール」でも、美しいものであれば「カールの始点」「毛束の量」は一定になっており、そして「その束がどのようにカールアイロンに当てられたか」は見たらわかるものです。それがわからないような髪は、「ボサボサ」に分類されます。
 髪のカールというのは基本的にはコテに巻きつけられて形作られます。つまり、カールした毛束は平たいものです。ドリルツインを思い出してもらえれば想像がつきやすいと思います。毛束の分厚いものは、いくつかの毛束に分けられ同じようにカールを当てられた後、同じ束に統合されて作られるものです。内巻きや外ハネは概ね髪を前後にブロッキングして何度かアイロンを当てて作られます。
 だからこそ、佐藤心のツインテールは「重い」のです。あれを見れば、彼女がヘアセットにどれだけの時間と労力をつぎ込んだかがわかります。
 それから、髪の分け目もそうです。普段の神崎蘭子の分け目を是非3Dモデルで確認してみてください。特にうなじ〜耳の位置までが美しい。綺麗なジグザグわけになっています。しかも、毛の流れが意識され、きちんと下から上に引っ張られていることがわかります。対照に、[祝宴の白姫]ではまっすぐの分け目にされています。蘭子のいつものツインテールは汎用ですから、これが初めてです。また、汎用では分け目〜ツインテールの結び目までの毛の流れが一貫していたのに、今回のツインテールはその流れがぐちゃぐちゃになっています(これは重箱の隅をつつくような、少し意地悪な指摘ですが)。
 もちろん、いつもよりも緩い・おとなしい髪型がふさわしい衣装もあります。例えば[サークル☆オブ☆フレンズ]城ヶ崎莉嘉は普段のツーサイドアップをハーフアップにトーンダウンしています。しかしこれは[祝宴の白姫]のような「いつもより抜けた」印象を与えるものではありません。むしろ、上品にまとめた時にふさわしい髪型を選んだ、スタイリストの意図が見えます。
 また、色に関しても今回は普段から変更されています。普段は頭頂部〜毛先にかけてグレーが濃くなっていますが、今回は毛先がややピンクがかった、ツインテールにあしらわれた薔薇のコサージュと同系色になっています。これも正直、悪手だと思います。グレーの髪というのは難しいものです。彩度をほぼ持たないグレーは周囲の色の影響を受けやすく、周りに配置された色で錯覚を起こします。今回は彩度の低いピンクに引きずられてグレーが拡散し、ややグレージュに近い茶色の混ざった色に見えます。これもおそらく、[運命の待ち人]と比較するとわかりやすいでしょう。周囲に黒や彩度の高い色が配置されることによって、蘭子の髪のグレーがキュッと引き締まった印象になっています。また、ツインテールが下がったことにより頭の上部に視線が集められなくなり、全体として印象が横に広がっています。そうなった時、触覚の部分がかなり野暮ったい印象を与え、シルエットとしてもイマイチな仕上がりになっています。

・靴の形が時代遅れ
 ダサい。裾広がりのヒールがただとにかくひたすらダサい。00年代のレイヤーか?
 いや00年代のレイヤーですら構図を駆使して隠してた
 ボディラインに売ってる。

 現実の服飾に準じろ、現実でありえないからクソだ、というつもりは毛頭ありません。しかし、現実で流行している型というものには必ず「流行している必然性」というものがあります。美しいと人に認められるものは人に認められるだけのロジックがあるのです。それを無視して美しいものを作ろうというのは、いわば鳥人間で太平洋を横断しようという試みのようなものなのです。先人の知恵をなぜ活かさないのか。飛行機に乗ってください。実際、先人の生み出したものに沿って作られた3Dモデルはこんなにも美しく、可愛らしく、可憐に仕上がっています。私は、これらのSSRが、3Dモデルが、本当に大好きです。

 ここまで読んでいただきまして、どうもありがとうございます。再度申し上げますが、私はデレステが嫌いなわけではありません。少なくない額を課金してきているとも思います。
 ではなぜ盲目的な信者を辞めこうして文を認めているのかと言いますと、「担当のSSRが来た時に同じ悲しみを味わいたくない」という、その一点に尽きます。
 どうかこれ以上の悲劇が繰り返されませんように、と、心から願っております。

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