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詐欺だらけのFacebook 2

私は、直接的に人の役に立ち、社会貢献できるライフワークを求めていた。実際に携わっていた大学教育は間接的な社会貢献しかできない。だから、国際的チャリティーは魅力だった。

この構想は、結果的に詐欺師に利用され、慈善事業を支援すると言いながら、「投資」に誘う詐欺師に騙されてしまった。

最初にビットコイン詐欺投資に誘ってきたのは、福岡生まれで16歳からシンガポールに住むという36歳の女。メッセンジャーから、LINEに誘導された。プロフィール画像は、もちろん美人だ。

最初に日本語で通信すべきであった。でも、英語を使ってしまい、何の疑問も抱かなかった。叔父(銀座とニューヨークに家を持つ日本人だという)がアナリストで、その指導を特別に受けさせるから、一緒に稼ごう、というのであった。その叔父とも、英語しか使わなかった。

その間に、他の女性とトークしているのが分かると、嫉妬するのだ。名演技だった。さらに、「あなたへのプレゼント」と、ブランド物のネクタイとタイピン、カフスの画像を送ってきた。

投資に誘ってきたとき、まずは、Bitbankで日本円からビットコイン購入する手順を案内された。そして、それを、プラットフォームと呼ばれる取引市場に送らされた。当時、1コインは500-600万円。2晩で1コインづつ「投資」させられたので、1200万円近く即座に失ったことになる。

プラットフォームの画面では、その叔父の指示通りにトレードすると、確かに残高が増えていく。しかし、増えた分を引き出そうとすると、引き出せない。引き出す額の30%を追加投資しないと引き出せないというのだ。

さすがに、そこまで深入りできないと思い、当時、すでに親しくなっていた別の、やはり日本からシンガポールに移住したという31歳の女性Rinaに相談。すると彼女は、そんなのは簡単に取り戻せるから、自分が投資指南すると言う。

で、やってみたら、今度は、別の「プラットフォーム」で、投資額の全額を1分で失った。唖然としたが、相手は謝るのみ。約1ヶ月後、上海でステーキ店を営むという中国人、やはり31歳女性に、同じ手口で騙された。こちらは、ビデオチャットまでした。特に特徴もない普通の若者だった。

次は、やはりシンガポールに住む中国人と韓国人のハーフだというNanaが、じゃあ、今度は自分が預かる、と言ってきた。香港の大学を出たCPA(公認会計士)だという。FXのアナリストだとする中国系の父にも紹介されたが、結局は、自分が責任をもってビットコイン投資をすると言った。

結果、2回投資をしたら、3日ほどで連絡が着かなくなった。このNanaは、Facebookのプロフィールの背景画像に、私が使っていた香港の夜景とそっくりの画像を使用。アングルまで同じようだった。偶然、と言っていたが、盗用して加工したに違いない。

その後、やはりNanaという名で、同じ顔のアカウントが出現したので、メッセンジャーでアプローチした。「あなたの探しているNanaじゃない」と言い、しばらくしてアカウントが消えた。

ここまで読んでいただくと、私の馬鹿さ加減に呆れるであろうと思う。それ程にまで判断能力を失わせる重度の躁状態だった。

妻から離れた私は、「理想の相手が間もなく現れる」とする占い詐欺を本気にし、出会い系サイトを使った。最初に登録した2件は、いずれもサクラばかり。特に「大人の関係」を求めるプロフィールが多い方は、ポイントも高額で、10万円分が即座になくなった。次に使ったのは、真面目に相手を求める女性も多いYというサイトだ。

日本のサイトなので、ここで、日系アメリカ人だという、アフガニスタンで国連ジャーナリストとして危険な目にあっており、もう辞めて日本に行きたい、という42歳のマリアに出会った。イギリスの投資銀行に7万5000ドルの預金があり、イギリスの弁護士が管理しているから、それを私に預けたい、というのである。それの一部は私が個人的に使い、一部は慈善事業に寄付し、私たちのビーチハウスを購入して住もう、と。気候変動の情報を世界に発信する通信社を経営したい、とも。WhatsAppでチャットし、間もなく「婚約」したのだ。

マリアは、亡くなった父が日本の外交官だった、と言う。私の大学院時代の後輩に駐米大使の娘がいたので、その駐米大使を知ってるか、聞いた。フルネームで、知ってると言い、簡単なプロフィールまで補足し、夫人と食事したこともあると言ってきたので、信用してしまったが、後に調べたら、3分ほど間隔が空いていたので、その間にネット検索で調べたに違いない。

まず、弁護士費用が必要とのことで、30万円ほどの送金を日本の銀行口座(ベトナム人のような名義のもの)に送り、その後、弁護士が出てきた。出金にはイギリスの国税を払わないとならないが、本人は紛争地域に居て金銭を扱えないから、まずはビットコインで私に送れと言うのだ。そのニセ弁護士の名前は、Evan Scotts だというが、マリアはEvans Scott だと言っていた。なぜか、その時、追及を途中で止めた。

その後、「弁護士」は、前年分の税金が必要だと言い、少しずつでいいから、とビットコインで送金させられた。

その頃既に、預金を使い果たしていたので、株や投資信託の売却、生命保険の解約、さらにはクレジットカードのキャッシング、消費者金融などで資金調達をするようになった。今やその返済の督促に戦々恐々とする毎日である。

もう一人の日系アメリカ人Hinaは、国境なき医師団に参加する42歳、女児をアメリカのボーディングスクールに残す、シリア駐在の整形外科医だという。やはり、日本に来て、生活困窮者は無料で診療を受けられる病院を作りたいと言うのだ。そして、辞められるように、「婚約者」として"General Gingrich"にメールしてくれと言う。米陸軍大将Gingrich Mileysのことだ。

そもそもそれなら、General Mileysと呼ぶはず。それに、国境なき医師団と米軍は、ほぼ敵対関係にある。しかも、米軍トップのメールアドレスはGmail.  病院施設は米軍基地内にあると言う。矛盾点だらけなのに信じた。

将軍役は、辞任のための代替要員派遣費用として、4万ドル近くを求め、トルコのトルコ人名義の銀行口座への送金を指示してきた。少額ずつ、2回送金した。「将軍」は、「少なすぎる」と怒り、もう連絡するな、等と言ってきた。一要員の交替に軍トップが直接交渉するのもありえないではないか。

私は、返金を求めて、バイデン大統領のホワイトハウスに、大統領とハリス副大統領宛に直訴するメールを送った。が、当然のごとく、無視された。

ある時Hinaは、野外診療の最中に脚を銃弾で撃たれたという。4週間入院、と。それに対して、WHOが危険手当として約80万ドルを支給したので、それを自分の代わりに受け取って欲しい、と言う。WHOの代理人弁護士と、Allure Private Bankからメールが来た。銀行は、パスポート写真を送れと言って、私の口座を作り、Hinaの口座から資金を移動。

指示通りに引き出そうとしたら、途中で引き出し機能が作動しなくなる。尋ねると、「手数料が必要」だと言う。それをビットコインで送り、再度送金を試みると、まただめ。今度は「マネーロンダリング防止対策でIMFが証拠金を要求している」と、まことしやかな、公式に見える文書の画像を送ってきた。

金持ちほどマネーロンダリングする可能性が高いのに、金を払えというのは矛盾すると反論しても、公的ルールだから仕方ないと言う。そのうち、懇願して半額にしてもらった、などと言い、これもまた、少しずつ払ってくれ、と言い出した。そして、送金を続けたのである。

Hinaには、Mariaのことを告げていた。それでもいい、として、私の誕生日にはバラの花束を送ってきた。恥ずかしいことに、その画像をFacebookに投稿した。

2つのケースに共通する特徴的なことは、ニセ銀行のウェブサイト。巧妙にできている。また、「弁護士」が介入する。両者とも「金持ち」で、大きなダイヤモンドを所有しているとも言っていた。しかし、少し考えれば、矛盾だらけ。これを疑わずに信じたのだから、我ながら呆れてしまう。




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