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中国の推しが銀幕に現れた日

7月6日、グランドシネマサンシャイン池袋にて、【乘船而去(邦題:船に乗って逝く)】を観てきました。

2週間ほど前、友人との待ち合わせまで、ちょうど池袋の広場のベンチで、それとなく時間を過ごしていました。
いつもの癖でXを開くと、面白映画とOpen Culture Entertainmentが主催する『電影祭』の投稿が目に入りました。
もともと中国の映画を観るのは好きなので、「どんな映画やるんだろう?」とよくよく目を通すと、

「船に乗って逝く」

というタイトルが目に入りました。

待って、これもしかして…
頭に浮かんだのは、推しの何圳煜が出演していた映画「乘船而去」でした。
邦題は初めて見たので確信がありませんでしたが、予想は大当たり。
日本の大スクリーンで何圳煜が見られることが確定した瞬間でした。

【そもそも何圳煜って誰という方へ】
何圳煜(He Zhenyu)1999年生、香港出身。
創造営2021出演、最終順位51位。
今はフリーの俳優・歌手。北京舞蹈学院を卒業。

当日は、土砂降り雷もなんのその!ウキウキで池袋に向かいました。
むしろ、監督も何圳煜も雨男らしいので、「さすが」くらいに思いながら。(中国各地の舞台挨拶でもかなりの確率で雨降ってた)

何圳煜は、葛兆美演じる老婦人・周瑾の孫、阿涛(タオ)役で出演しています。

映画はとっても良かった。
田舎で1人で暮らす母親に迫った死をめぐり、葛藤する家族の人間模様が繊細に描かれていました。人の死とそれに向き合う家族の話ですが、見る側の感情を無理に煽るわけでもなく、静かに淡々と進んでいくストーリー。この映画の中の出来事は、遠い世界の話ではなく、誰もがいつか向き合うことになる問題。だいぶ先のことですが、わたしも2人キョウダイなので自分の親の老後のことも考えてしまいました。

あと映像がとっても綺麗で、
特に印象深いのは、タイトルにもなっているのシーン。田舎の水辺の風景が美しく、櫂で船を漕ぐ音がとても心地良かったです。
撮影場所は監督の故郷でもある浙江かな?
憧れの場所。いつか行ってみたい。

では、ここからはオタクとしてのレビューです。
ここからは多少のネタバレを含みます。ご了承ください!!!

まず、何圳煜思ったよりいっぱい映った!セリフもあった!
今回何圳煜は主演ではなく、あくまで脇役。ポスターにも予告にも姿はないし、まあチラッと出てくるだけと期待しすぎずにいようと思っていました。
でもこれが嬉しい誤算。
池袋のスクリーンで、推しの顔をこんなにどアップで拝める日が来るとはね。

予告が終わり、本編に画面が切り替わると、聞こえてきたのは聴き慣れた声。なんと何圳煜のモノローグから始まり、何圳煜のエピローグで締め括られる作品でした。
セリフ自体は多いわけではないですが、物語のキーとなる存在でもあり、軸となる部分の語りを任されていたりと、生きたバイプレイヤーという感想!決してモブではなかった。

役所としては、周瑾(おばあちゃん)が溺愛する孫。阿涛は学校もやめており、親元を離れて、横店で役者を目指して孤軍奮闘中。お坊さん役のためにただ1人頭を丸めて掴み取った大事なチャンス。大好きな祖母かそれとも夢か、揺れ動く青年の姿を精一杯演じていました。
阿涛が祖母に買ってもらったバイクで道路を駆けるシーンのセリフが印象的でした。阿涛がエキストラでキョンシー役を演じるシーンで、ちょっと笑いが起こったのもいい思い出です💭

話が進んでいくと分かることですが、阿涛の親は離婚しており、またどちらも再婚済みで母には別の子供もいる。両親は健在でも、阿涛は少し孤独な様子で、大事な報告も母親ではなく、おばあちゃんにしていました。そんな阿涛と外婆はどこか通じ合うところがあったのかな…。

監督のREDより

知ってたけど、何圳煜は坊主姿が絵になる。劇中の阿涛と同じように、本人もこのために頭を丸め、バイクの免許も取ったそうです。
生まれ育った香港や母親の実家がある広東からは遠く離れた北京の大学に通い、一人芸能の夢を追っている圳煜。実家に帰る度に、自分がいないうちに家族に何かが起きてたらどうしよう?と不安になると。阿涛という役は共通点も多く、感情移入もしやすかったと話しています。

個人的に何圳煜の特徴的な声(高めで、地でちょい電子っぽい声)が好きで、でも俳優向きかどうかは不安な面もあったのですが、ちゃんと溶け込んでて、むしろ沢山使われてて、しかも吹き替えじゃなかった!(これ重要)

彼は今は事務所も辞めてフリーだし、創造営後は目立った活動もなく、推し活といえば、ごくたまーに投稿されるSNSの投稿にいいねを押すくらいで、明星!アイドル!というよりも、限りなく一般人に近い状態で…。
でも、本人はこっそり前に進んでいて、オーデがあったのか、コネか何か、そこはよく分かりませんが、とにかく“いい”作品で仕事ができたこと、何圳煜の経歴にこの作品が刻まれること、そしてそんな作品が日本で公開されたことがとてもとても嬉しい。

超人気な俳優が出演しているわけでも、有名な監督の話題作というわけでもなかった“乘船而去”。推しが初かつ唯一の出演作が、数ある中国映画から選ばれて、日本で公開されたというのも、きっと何かの縁。

石の上にも三年!細くも永く応援してみるものだとしみじみと感じた一日でした。
これから俳優かアイドルか、どの道に進むとしても、のんびり応援していきたいです。

やま

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