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資料整理日記③

地獄狼が主役の作品群のうち唯一単行本化されたのが「ながれ者の系譜・地獄狼篇」(写真①、1973年、青林堂)
これはヤングコミック1972年1月12日号~3月22日号に掲載された全6話に、旧作を修正した2話が加えられている。
その加えられた2作のうち一つが、漫画パンチ1969年8月13日号に掲載された「愛は死の臭い」という作品で、「THE OUTLAW IN THIS JUNGLE~」と冠された、地獄狼番外編3作の一作目」(写真②)
 
それで、今回確認された原稿を見ると、写真③が漫画パンチ掲載版で、写真④が単行本収録版になる。
一見すると、古い原稿③をコピーして、登場人物の顔に口髭を描き加えただけで④が作られているようにも思える。しかしながら、現物を良く見ると、実は両方とも紙に直接描かれた原画であるのが判る。
両者の描線が細かいところまで一致しているため、おそらくはトレス台で下から光を当てて描いたのでは推測されるが、太陽光を表現する点線が一致していない(写真⑤)ことから、そういう枝葉部分はトレスなしで描いたと考えられる。
 
新しい原稿のために旧い原稿を潰すことにいささかのためらいも見せなかった(他の作品における修正改変状況からそう思える)真崎守が、このケースで旧原稿の上描き修正やコピーを使わず同じ絵をもう一度描く手間を掛けた理由は何か?それは、旧い方の原稿が二色カラーで描かれていたからではなかろうか。
もちろん二色カラーでもそれを流用して単行本化は出来るし例は沢山ある。しかし、これに先立ち同じ青林堂から単行本化された同シリーズ「ながれ者の系譜・股旅篇」の酷過ぎる印刷状況(雑誌掲載時には判るカラー部分が判別できないほど潰れている)を見ると、カラー原稿のモノクロ印刷に作者が懸念を感じたのでは?
あくまでも私の推測に過ぎないが、そんな風に思える。


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真崎守ご本人とご家族の協力の元、全資料を整理しています。 日本のアニメや、マンガの土台を作る時期に活躍し、コミケの前身とも言われるグラコンを主催した真崎守の全仕事をまとめていきます。

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