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Vol.71#挑め!Leading Article/叩き上げの労働党次席とその窮地

今日のテーマは”叩き上げの労働党次席Angela Raynerとその窮地”です。

🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸

労働党次席のAngela Rayner女史はまさに”叩き上げ”というべき経歴の持ち主です。16歳でシングルマザーとして学校を退学しましたが、ケアワーカーとして働き始めた職場での組合運動で頭角を現し40代で労働党の幹部まで上り詰めました。労働党が次の政権与党となるのはほぼ確実なため大臣職も目前です。
英国の政界は家柄の良いエリートが過半数を占めており、さながら裕福な中流階級の仲良しクラブの趣です。彼女のような現実の厳しさを肌身に染みて理解している人間が要職を担う事は大きな意義のある事です。
ところが、そんなAngela Rayner女史に所有していた不動産の売却益に関する脱税疑惑が持ち上がっています。追求する側が一転、追求される側に回ってしまいしどろもどろというわけです。
税務や申告は英国でも例に漏れず複雑怪奇なものにて、誰だって間違いを起こす可能性はあります。非があれば非を認めて、払うものを払って、前に進んでいけばよいわけですが、どうもAngela女史の状況説明は歯切れが良くありません。

脱税する隙などないサラリーマンの平和を噛み締めて、読み進めていきましょう。


◎今日のLeading Article:Angela’s Blushes

The Labour deputy leader remains evasive about her tax liability on a former home

Modern British politics too often resembles a middle-class club, with a sparsity of people who have experienced hardship at first hand and can speak with authenticity about the trials of life on a low income. The presence of Angela Rayner on Labour’s front bench goes some way to remedying this deficiency. The party’s deputy leader is no stranger to struggle: a single mother at 16, she experienced deprivation in childhood and strained finances as a careworker in her native Stockport.

Her visceral political tribalism, occasionally expressed in outspoken terms against her Conservative opponents, is nothing if not bracing.

Ms Rayner was the scourge of Tory sleaze during the reign of Boris Johnson, her tough upbringing adding spice to her attacks on the likes of Owen Paterson. But now, as power and a cabinet minister’s salary beckon, Ms Rayner is embroiled in a row over her tax affairs, which threatens damage out of all proportion to the £1,500 or so possibly involved. Ms Rayner is refusing to be frank about the status of a house in Stockport that she sold in 2015, possibly leaving her liable to capital gains tax. Her reticence in this matter is regrettable.

During an interview on BBC2’s Newsnight on Thursday, Ms Rayner was given ample opportunity to dispel any doubts about her conduct and lay to rest the speculation of the past few weeks. Yet, she signally failed to do so, refusing to explain why she was not, in fact, liable for CGT.

The former council house in Vicarage Road, Stockport, was bought by Ms Rayner for £79,000 in 2007 and sold by her for £127,500 in 2015. If it had been her principal residence she would been exempt from tax on the capital gain. But in 2010 Ms Rayner married and — it appears — moved into her spouse’s home. In terms of CGT liability, married couples are allowed only one primary home. A second home that increases in value is exempt from CGT only if the increase is negated by money spent on conveyancing and improvements.

There is no suggestion such major work was undertaken.

These two “get-out” scenarios were repeatedly presented to Ms Rayner by Nick Watt of Newsnight: either Vicarage Road was, contrary to what is known, her primary residence, or she had spent a large sum renovating the property. Ms Rayner repeatedly refused to say which was the case.

Instead she resorted to the kind of smoke-andmirrors approach she has in the past criticised Tory MPs for adopting. In place of an unambiguous explanation as to why she was not liable she relied on an unnamed tax expert who, she said, assured her that there was no tax to be paid. No details to justify this conclusion were forthcoming.

It would be the simplest thing in the world to disclose this advice and clear up this matter. Many people fall foul of the tax system through ignorance and, as Ms Rayner explained, people in her position in 2015 do not tend to have expert tax advice readily to hand. There is nothing wrong in making an honest mistake, owning up, paying up and moving on. Unfortunately, Ms Rayner has chosen to cry “smear” and is intent on toughing this affair out. If she has been so instructed by Labour media staff then she is poorly advised. The amount may be small but the principle is big: those who seek the power to tax the people of this country must be exemplary in managing their tax affairs. Ms Rayner may not be guilty of tax evasion but she is guilty of verbal evasion. This obfuscation must cease.

□解釈のポイント■■■

①beckon/手招きする、誘う

言葉ではないジェスチャーや視線で招くという意味になります。おいで、おいでみたいな感じですね。

次は労働党の政権で、自分は党の次席です。大臣職とそのビッグな給料はカウントダウン状態。まあ、人により程度の差はあると思いますが意識しちゃいますよね。そんな中での脱税疑惑です。
Rayner女史は2007年に家を買って、2010年に結婚し、2015年にその家を売っているのですが、その際にだいぶ値上がりしていました。制度上はその家が彼女の”主たる住居(Principle Residence)”であれば、資本利得税(Capital Gain Tax)の課税対象から外れるのですが、2010年に結婚した時にお相手のお家に引越したんじゃね?という疑惑です。仮に非を認めても払わなければならない金額も30万円程度です。

②lay to rest/葬り去る

横たえ、永眠につかせるという事で葬るという意味です。この塊で使うとわかっていればスムーズに読めますね。

文中ではspeculation(詮索)を葬るという言い方で使われています。はっきりと当時の状況を明らかにしてしまえば、いらん事を推察される必要はないわけです。BBC2からインタビューを受けた際に、Rayner女史にはその機会があったのに、どうも歯切れが悪く。納税義務はなかった、でも詳細は言いませんという煮え切らなさにがっかりしているわけです。

③smoke-andmirrors /巧妙なトリック

煙がもくもく立ち込め、そして鏡。この組み合わせは手品ショーですね。
人がパッと消えたり、二つになったりする不思議の背後には必ず巧妙なカラクリがあります。政治の世界でも秘書の給与だったり、変なパーティーだったりと様々なカラクリが揃っている様です。

Rayners女史はこうした手品に対して一般人から乖離していない感覚でズバズバ言ってくれる役割が期待されていたわけで、自分でやってどうすんだよというツッコミです。

■試訳

現代の英国政治は往々にして中流階級クラブの様相を呈している。そもそも苦難を味わった人がほとんどおらず、低所得での生活における試練を妥当性をもって議論する事ができないのだ。
野党である労働党の幹部議員席にAngela Raynerが座っている事でこの欠陥が補われる部分があった。この労働党副党首は苦労を知っているのだ。彼女は16歳でのシングルマザー、子供時代の貧困を、地元のStock portのケアワーカー時代の苦しい家計のやりくりを経験している。彼女の建前抜きの政治スタイルは歯に衣着せぬ言葉遣いで表現され、対立する保守党に向けられた。これは痛快そのものであった。
Rayner女史は Boris Johnson政権下のだらしない保守党メンバーにとっては災難のような存在であった。生まれ育ちの大変さは彼女がOwen Patersonの様な人たちを非難するにあたってスパイスとなっていた。しかしそれが今、閣僚の権力と給与が手招きする中でRayner女史は自身の税務問題に関する論争に巻き込まれてしまっている。これによって発生する損害は実に不釣り合いな事に1500£かそこらである。Rayner女史は2015年に売却したStockportの住宅の状況について率直に語る事を拒否しているが、この売却によって彼女には資本利得税の納税義務が発生した可能性がある。彼女がこの問題について口を閉ざしているのは嘆かわしい事だ。木曜日にBBC2のインタビューを受けた際にRayner女史は自身の行動について疑惑を払拭しここ数週間の推論を葬り去るのに充分な機会を得たわけだ。にもかかわらず、彼女はそうする事ができず自分にCGT(資本利得税)の納税義務がない理由を説明するのを拒否した。StockportのVicarage通りにある元公営住宅はRayner女史により2007年に£79000で購入されたのちに2015年£127500で売却された。仮にそこが彼女の本宅であるとすれば資本利得税の課税対象からは除外される。しかし、2010年にRayner女史は結婚し相手の家に引っ越したように思われる。資本的な価値が上昇したセカンドハウスが資本利得税の課税対象から除外されるのは、その上昇分が修繕や改善の費用で相殺される場合のみである。そうした大規模な工事が実施された様子はない。
これら2つの”脱出”シナリオは何度もNewsnightのNickWattから停止された。Vincarage通りの家の方が一般に知られているのとは異なるにせよ本宅であるのか、あるいはその家を改築するのに多額の費用を負担したのか。Rayner女史はどちらなのかを発言するのを拒否しつづけた。そのかわりに彼女がとったのは過去に自分が採用した保守党の国会議員を非難した巧妙なトリックの様なやり方だった。なぜ自分に納税義務がないのかについてはっきりとした説明をすべき所で、彼女は名前を伏せた税務の専門家が納めるべき税金はないと確認してくれたのだと言い張った。この結論を正当化する詳細情報が発表される予定もない。このアドバイスを開示して、問題を片付けるというのは世界で一番簡単なやり方であろう。多くの人が無知によって税制をやぶってしまう。Rayner女史が説明したように2015年頃に彼女のような立場にあった人たちは専門家による税務的な助言など容易に得られるものでなかった。過ちを犯しても嘘をつかなければまずい事はなにもない。過ちを認め、支払いを行い、前に進む。不幸にも、Rayner女史は”泣き言”をさけびこの問題を耐え抜いてしまうつもりだ。彼女がもし労働党のメディア担当から何か助言されているのであれば、その助言はおそまつなものだ。金額は小さいかもしれないが信条は小さくない。国民に税を課す権力を志すものは自身の税金の管理を以て規範となるべきである。Rayner女史は税をごまかした罪には問われぬかもしれないが、言葉をごましかた罪には問われるだろう。こうした難読化はやめねばならない。

◇一言コメント:

British VogueにRayer女史のインタビューが掲載されています。ハリウッドスターやモデルが数多く登場する雑誌に労働党の幹部が取り上げられるという不思議さはありますが、英国の次期政権での活躍への期待が伺えます。

最近の日本の政治家で叩き上げといえば、、、菅義偉。
秋田から上京してダンボール製造工場で働き始めた所から総理大臣になっています。そういえば、彼は携帯料金安くしてくれましたね。

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