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のほほん双六 #015 おはなし ブゥ家の三兄弟 06

第六話 「さらわれたブゥブ」

「あれ?夢かな?」

風がビュービュー吹いている。
あたりは真っ暗で風の音しか聞こえない。あとこの匂いと体がベタベタする感じー。ぼんやりと下を向いてみる。
「!」黒い水…海だ!海の上を飛んでいる?

「ぐうぅ…。」
僕を掴んでいる大きな鳥の足ー【災い】の足に力が入る。僕のお腹らへんでうっすらと緑の光が浮かんだ。妖精が口元に指を当てている。
大人しくしていろって事だね。
意識がはっきりしてきたらいろいろと思い出して来た。

僕は熱が下がり、布団でゴロゴロしていた。瑠璃色の鳥が飛んでいて綺麗だなと眺めているとブゥブブたちが戻ってきた。
起きてブゥブブたちのそばに行き、その姿に驚いた。

「その体中のキズはどうしたんだよ2匹とも。喧嘩したのか?なんで喧嘩を…」
ブゥブブブの後ろにいるのはオオカミ?頭の上にはさっき見とれていた瑠璃色の鳥がちょこんと乗っていた。

「あらら、連れてきちゃったんだねぇ。」呆れた声で妖精が言っている。
「ブゥブ、話を聞いて…」
逃げようとしてふらついて転んでしまった。すぐ立ち上がりそばにあったものを容赦なくオオカミに投げつける。
「彼は何も危ないことなどしないから!落ち着いて!」
産毛が逆立つ。あの日あの時のことを思い出す。
『父さん!母さん!!』

「ホォー」とひと声、フクロウが一羽飛んできた。
瑠璃色の鳥が、嬉しそうにピピッと鳴く。
「ここで会うなんて。元気にしてました?」
瑠璃色の鳥がフクロウに話しかけている。
「この方が、アタシたちに【幸い】のことを教えてくれたのよ。」

「さいわい?【幸い】って言った?」
僕の近くにいた妖精が怪訝そうな顔をした。
ほかの妖精たちもなんだか険しい顔をしているように見える。
【幸い】って何?と聞こうとしたその時ー

突風が起こり、あたりのものが蹴散らされた。
妖精たちに緊張が走る。ブゥブブが風で転がっているのが見えた。ブゥブブブは岩にオオカミと一緒にしがみついている。オオカミの手にはあの美しい瑠璃色の鳥が飛ばされないよう耐えている。

一瞬風が止んだ。
「あっ」どんどん地上が遠のいていく。体中が痛い。見ると鳥の足が僕を掴んでいる。二つの緑色の光が追いかけて僕の方に近づいてくるのが見えた。

笑い声が森中に響き渡る。なんて不快な声なんだろう、頭が痛くなってきた。笑い声のする方を見上げると【災い】がニヤリと不気味な笑みを浮かべ、

『お前たち、泉で待っているぞよ。』

【災い】はそう言い放つと翼をひと振り、あっという間にみんなが見えなくなった。
そうだ、あまりの頭の痛さに僕は気を失ってしまったんだ。

思い出したのは良かったけれども、僕はこの先どうなってしまうんだろう。
今夜は新月か。お月さんが昇っていたら少しは不安も和らぐのに。  ーつづくー

イラスト(挿絵)

ヒィーーッ

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