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大槌とデザイン_Hiroto Kishima_2023.09

一章 刮目せよ

満月の夜は狼が騒ぎ出す。
夏の終わり、8月30日夜中から31日朝方にかけてスーパームーンが地球を明るく照らす。真っ暗にした部屋に月明かりが差し込む。月の光を浴びて、狼男になってしまったらどうしよう、なんて心配をすることはない。
時間を忘れるひととき。

いよいよ当日を迎えた大槌まつり。
私は今年もポスター、チラシなどを担当した。
15日、事務所で仕事をしていると近くで祭囃子の音が聞こえてくる。これから大槌稲荷神社の宵宮祭に向かうのだ。
16日は大槌稲荷神社の神輿渡御の写真撮影をした。曳き船まつり、そして13年ぶりとなる大槌川神輿渡御ではたくさんの観客が訪れ、中でも大槌川渡御では川沿いで神輿を待つ人々。魚市場から近づいてくる祭囃子の音がわくわく感を膨らませる。

蓬莱島へ向かう曳舟。
虎舞かっこいい。
大槌川の土手。いよいよ大槌川だ。
13年ぶりの大槌川渡御は大変な迫力でした。

17日の小鎚神社渡御では昨年に引き続き交通誘導を担当する。
昨年度よりも体の負担は少ないように感じた。でもたいへんでした、本当に。今回は「前捌き」という役割を仰せつかって、行列の先頭より先回りをし、車を止めたり誘導したりするわけなのだけれど、捌くって何事も難しいのです。この場合の「捌く」にはきっと「手際良く処理する」という意味もあるのだろうが、まあ当然の如く初心者には難易度が高いわけです。
というわけで、やはり適材適所って素敵な言葉ですよね!と思うわけでした。
大槌に来て、昨年は大槌稲荷神社、今年は小鎚神社と両神輿渡御を併走したわけだけれど、大槌のみなさんの力強さに敬服するばかりです。
交通誘導で余裕がなく、写真撮影まで手が回らなかったので今年は小鎚神社の写真はない。撮影できなかったのは残念だけれど、間近で神輿渡御をみることができたので、この光景を心の中に留めておこう。
あっという間に来年の大槌まつりがくるのだろうな。

まだ余裕があった小鎚神社神輿渡御スタートの時だけ。
桜木町のすっかり日焼けしたポスター。みなさん、お疲れ様でした。

5月から月二回、小鎚神社で行われた「かがり火の舞」も9月は吉里吉里虎舞、そして吉里吉里鹿子踊の演舞を最後に、無事終了した。今年は通行手形の代わりに各郷土芸能団体のポストカードを作り、町外からお越しのお客様にお渡しをする。こうして並べてみるとたくさんの種類の郷土芸能があるのだなぁと、そしてあっという間に終わってしまったなぁと感慨深い。かがり火の温かい光に照らされた境内で演舞する郷土芸能。
蒸し暑い夏が終わり、また長い冬がくる。

事務所の机で。

二章 思慮深く

10月28日に開催される「モモちゃん、元気イースね!フェス」のパンフレットを制作した。
青、赤、黄をベースに華やかで楽しげなイメージで制作したA4二つ折りのパンフレット。大槌の町方を歩きながら楽しんで欲しいということで、中面はエリアマップと詳しい出店場所、店舗などを記載した。このパンフレットを片手に町中を歩いていただければ嬉しい。

カラフルなのは久しぶり。
28日は大槌へ!

こちらのフェス、大きく三つのイベントに分かれている。
一つ目は「桃畑学園サーモンイベント」で、駅前や街中で桃畑学園サーモンを楽しむことができ、仙台のサーモン料理専門店「銀結び」店主の方を大槌にお招きしてサーモン料理を学ぶこともできる、まさにサーモンづくしイベントだ。
二つ目は「大槌元気市」。
こちらは昨年度も行われ、二回目となる。駅前エリアに出店が並ぶ。チラシ中面にもあるように様々な出店があるので、駅前エリアを回るだけでも楽しめる。
三つ目は「いす-1グランプリin大槌」だ。
京都府京田辺市から全国で開催されているいす-1グランプリが、なんと大槌町で行われるという。動画を見て予習をしたところ、事務イスに座り、二時間もの間コースを周回し、周回数を競うようで、なかなかシュールなグランプリだ。しかしなかなか奥深いらしく、毎年優勝している強豪チームがいるのだとか。ぜひ大槌のみなさんの祭りパワーを見せていただきたいなと思います。いす-1グランプリについては大槌商工会青年部様にお問い合わせください。

また別途、大槌元気市のポスターを制作した。
こちらは先駆者である鍬ヶ崎元気市様の力添えのもと、昨年開催した第一回のポスターを、許可をいただいた上でデザインを変えずにリニューアルしたものである。昨年のポスターを踏襲した理由は、大きな赤文字と濃い青のポスターを見て「大槌元気市だ」とすぐに想起してもらえるよう、という意図がある。イメージというのはとても大切で、例えば歩きながら横目に入るくらいでも、イメージがしっかりとついていればよく見なくても大槌元気市が頭に浮かぶ。これはとても重要なことだ。人の記憶に少しでも入り込むと、広告物として大きな効果を得たことになる。
有名なお菓子のパッケージも、多少デザインを変えたとて大まかには変わっていないでしょう?ポッキーのパッケージはみんなだいたいの想像ができると思う。

駅前に集合だ!

三章 妙案を!

先月に引き続きおおつちのあそび様の2つ目の体験ツアー「大槌名産!桃畑サーモンを釣って!捌いて!食べてみよう」のチラシを制作させていただいた。
こちらのツアーは10月9日の祝日開催で、大槌の桃畑サーモンとたっぷり触れ合える内容だ。釣りはもちろん、捌き体験、さらに味わうことまでできるのはとても魅力。「さけとサーモンの違い」の解説も、以前私も拝聴したのだけれど、今までざっくりと認識していた「さけとサーモン」を改めさせてスーパーのお魚コーナーで定番の鮭だが、この話を聞いてまじまじと見るようになりました。
話は少し逸れるけれど、メインの写真が個人的にとても好き。

魚も車も捌けない9月でした。

9月10日は「いわて若者フェス じぇじぇめんミーティングin久慈」に参加するため、初めて久慈を訪れた。
やっとこの地に降り立つことができました、久慈。
基本テレビを見ない実家でも、連続テレビ小説の時間だけは誰が言わずともついていて、やはり「あまちゃん」は記憶に残っている。当時は確か13歳くらいだった。そんなあまちゃんの舞台である久慈に十年の時を経て、こうして訪れることができるのはとても嬉しい。
「いわて若者フェス じぇじぇめんミーティングin久慈」は久慈を始め、沿岸北部で活動されている若い方々と交流をしながら、それぞれアイデアを出し合った。コミュニティデザインという言葉があり、場をつくる、ということはどこのフィールドでも重要なこと。私は今グラフィックデザインをやっているのだけれど、コミュニティデザインにも大変な興味がある。というのも、作って終わり、ではなく、半永久的な人類の場を作り出す、それが村となり町となるのだから、やはり私たちには「場」が必要だと思うのだ。グラフィックを生かしながら、人々が集まる場を作る、それが当面の目標である。

考える。

あとがき

「後の祭り」という言葉がありますが、あまりポジティブな意味ではありません。どちらかといえば今は「祭りの後」ではありますが。前後を入れ替えるだけで意味が変わる。難しいですね、言葉って。まあ日本語に限らず、どの言語だって順番があるわけですから、ちゃんと言葉の意味を理解して使いたいものです。日本に住んでいるのだから、せめて日本語だけでも正しく使いたい。
ところで、大槌まつりの三週間後は「産業まつり」そして10月月末には「モモちゃん、元気イースね!フェス」と、「祭りの後」というには些か盛り上がり過ぎている大槌町です。『一年中まつりの町』としてPRしても面白いかもしれないなと、秋空を眺めながら少しだけ思ったわけでした。

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