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大槌とデザイン_Hiroto Kishima_2023_05

一章 ぐるぐる。

一年前を振り返ると、5月25日に大槌に越してきたようで、令和になっても紙のスケジュール帳をやめられない私は、こうしてたまに過去の手帳のページをめくる。あっという間の一年、大槌にきてまだ右も左もわからないまま始まったサーモンまつりでは、テントを支える重りを泣き言を言いながらトラックに積んだ。事務局長が「両手で一つずつ持てるように」なんて冗談めいて話していたけれど、到底無理であるし、持てるようにもなりたくないとここに明確に記しておく。私、掃き掃除とかが似合います。

5月28日は「おおつち新山ヒルクライム」が開催された。
受付などの手伝いに参加し、早朝からおしゃっちにはたくさんのロードバイクが集まる。天気は肌寒く、曇天ではあったけれど、参加者の方々は力強い表情である。みなさん足の筋肉が素晴らしい。
新山までの山道を自転車で登ることすら凄いのに、なんと一位は約40分の記録だそうで、車と同じくらいじゃないかと驚愕する。
お昼にはMOMIJIのジビエカレーを堪能し、そして餅まきと力強いイベントだった。

がんばれー!
私は町方で終わり。ここから新山まで行くのかぁ…。

二章 ゆらゆら。

さて、今月の一番の仕事は6月18日に海づくり記念公園で開催される「第三回岩手大槌サーモン祭り・郷土芸能祭」のポスター、チラシだろう。
サーモン祭りのポスターとチラシを任せていただき、実はちょっとした目標であった、大槌まつりとサーモン祭りの製作物に取り組みを達成したのである。祭りのポスターは私が今まで制作してきたポスターと違って、賑やかさ、力強さなどが必要である。地域とデザインを学んでいく中でどの場所でも祭りはあり、今後、祭りのチラシなどを制作できます!と大きな声で言えるよう、スキルを磨く。
まずはポスター。
今回、チラシとポスターを分けて製作することに挑戦し、ポスターの方が少し早く皆様のもとへリリースする形になった。

とても良い写真を提供していただいた。

力強い写真を提供いただき、ビジュアルは写真をそのまま大きく使うデザインに決める。サーモンの色からオレンジをベースに、タイトルを写真の勢いに乗せてみた。街中でもご覧いただいていると思うが、思わず目に飛び込んでくるポスターに仕上がったのではないだろうか。

サーモン祭りのチラシ製作は、今まで一番難しく、苦戦した。
情報量が多いチラシをどのように整理すればちゃんと伝わるのか、混乱しないのか、本当に難しかった。一度自分の中で情報を噛み砕いてみたけれど、整理が足りず、ぐるぐると画面の中をカーソルが彷徨う。続々と追加情報が登場し、いつの間にか最初の情報が頭の中で消えてしまう始末。いろいろな方に相談し、なんとか校了したチラシ。
たくさんの出店が並び、アクアマリン福島による移動水族館もやってくる。そして外せないのがサーモンつかみ取りだろう。6月5日月曜日13時から予約スタートした。開始三十分で予約定員に達してしまい、驚きである。たくさんの予約のお問い合わせ、ありがとうございます。
同時開催の郷土芸能際では花巻から幸田神楽が特別出演する。町内からは8団体が演舞し、見どころ満載だ。
昨年、大槌に来て一週間くらいで開催されたサーモン祭り。あの時の力仕事はなんとか乗り切れたが、今年は今から怖いところである。車社会で一年過ごし、徒歩が顕著に減っている。間違いなく体力は落ちている。怖い、怖いよ。

盛り沢山の内容。
本当に難しかった。


5月27日から小鎚神社で開催される「三陸大槌町郷土芸能かがり火の舞」。
夕日が沈み藍色の空が広がる頃、本物のかがり火を焚いて幻想的な雰囲気の中で大槌の郷土芸能が演舞される。昨年に続き、今年もお手伝いをさせていただいた。
今回、町外からお越しで有料のお客様に、チケットの変わりにポストカードをお渡しすることにし、そのデザインをさせていただいた。写真は同じちおこの北浦さんから提供いただき、地域おこし協力隊コンビで制作を進める。せっかくポストカードを作るのであれば、その日に演舞される郷土芸能団体のポストカードを制作するのはどうかと提案し、採用していただいた。毎回違うポストカードになる予定なので、集めてみてはどうだろう?
第一回は吉里吉里大神楽と向川原虎舞の二団体。二枚のポストカードがセットになっている。
次回は6月10日、城内大神楽と安渡虎舞の二団体。こちらも二種類のポストカードを制作する予定だ。ぜひお越しください。

こんな感じで制作しております。
吉里吉里大神楽。見つめ合う二者。
向川原虎舞。笹の奥から今にも飛び出しそうな雰囲気。

三章 てくてく。

5月から参加している「Live Design School」でとても興味深い話があった。それは「地域とデザイン」について、デザインだけではなくいろいろなことに挑戦してみる、という話。
例えば田植えをしてみる、祭りに参加してみるなど、そしてこれに似た話を地方移住の後押しをしてくれた私の恩師も言っている。その恩師は「知らないことは罪である」が口癖で、地方とデザインを勉強したいと相談したらなぜまだ東京にいるのかとさらりと言われハッとした。デザインのことだけを勉強しても意味がなくて、その場所に触れ、知るということが重要であると。おそらくだけれど。GWに久しぶりに恩師と会い、現状報告をした。「いいじゃん、楽しそうじゃん、やってみなよ」と相変わらずてきとうな話の中でちょっと重要な話を聞くことができた。それは私だけの秘密。
さて、今回のスクールで「地域とデザイン」について改めて考えさせられたわけである。
しかしそれも良い話だけでは終わらない。
意見交流の中で「なんでも屋」になってしまった経験があると聞いた。その方は「デザイナーならこれできるでしょ」みたいな、双方の理解が足りず、お願いごとを叶えるという構図になってしまい悩んだという。いろいろなことに触れるということ、そしてなんでも屋になっても仕方がない、このバランスをどのように身につけるかが鍵のようだ。
大槌に来て一年。私はまだまだ勉強不足を痛感している。
まずは学ぼう、そして触れよう。悩むのはできるようになってからだ。

休日に山田の「鯨と海の科学館」へ行った。
大槌、山田は鯨を食べる文化があると聞いていた。小学生の頃、鯨肉は給食で食べたような気がする。それ以来食べる機会がなかったので味は忘れてしまった。鯨をはじめとする海洋生物の説明、そして鯨の骨格標本は圧巻である。

鯨が泳いでいる。
快晴で心地よい。

その足で昨年公開された新海誠監督の新作映画『すずめの戸締り』の作中で登場する扉が山田にあるということで、半年の月日を経てようやく見に行った。山田の海をバックに扉が立っており、この扉の奥はどこでも繋がっているわけではないけれど、ロマンがある。そして扉の前には物語のキーとなる、主人公すずめが幼少期に座っていた黄色い椅子。今にも動き出しそうだ。

この扉の奥には…?

あとがき

GW後半は扁桃炎を発症し、せっかくの休みを無駄にしてしまいました。喉が腫れて固形物が食べられず、5日くらいゼリーとヨーグルトで生活していたら今度は腹痛に襲われました。はあ、弱っちい体です。
私の中で5月は暑いイメージです。
埼玉の5月はカラッとして日差しが強く、関東独特の湿り気を帯びた生暖かい風もない、割と好きな時期でした。しかしまあ、大槌は寒いですね。昼間は暖かいといえど、夜になると肌寒くまだコタツの中でぬくぬくとしています。寒暖差で体調をまた崩しそう。
これからイベントが続き、体力勝負の現場へ参加することが増えます。体力をつけることは早々に諦めているので、せめて大人になろうと思いました。

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