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大槌とデザイン_Hiroto Kishima_2023.07

一章 海を歩く。

『ぼくのなつやすみ』というゲームがある。北関東の架空の村で9歳の主人公、ボクが夏休みの間、自然触れるというゆったりとしたゲームだ。
私も『ボク』のように夏を純粋に謳歌したい。学生の頃、夏休みをいかに無駄に過ごしていたのかやっと理解できる。みなさんも学生の夏休みを惰性と共に過ごしてしまい、後悔した思い出があったのではないだろうか。
夏休みの宿題は先に終わらせる派ですか?
それとも最後に慌ててやる派ですか?
私は宿題をやらずに登校し、毎回こっぴどく怒られる派でした。懲りない子供。

7月25日に吉里吉里海岸、そして29日には浪板海岸が海開きをし、いよいよ夏がやってきた。昨年に比べて気温が高く、連日真夏日に見舞われる大槌町。これは海で泳ぐととても気持ちが良いだろう。
海開きをするにあたり、24日に両海岸の安全祈願祭が執り行われた。朝から強い日差しが照りつける海岸で波の音を聞きながら粛々と開催される。大槌の海へ遊びにきてくださる方々が楽しい思い出を残せますように。
私もお手伝いをしていたのだけれど、前日からの体調不良も相まって、軽い熱中症のような症状に襲われてしまった。その日は午後からエアコンを効かせた自宅で休んだのだけれど、それからしばらく体調不良が続く毎日。ぐんぐんと上昇する気温に、どんどん吸われてゆく体力。あれ、去年よりも体力が落ちているような。
といわけで、今年の海開きでは町内配布のチラシを制作した。

遊泳情報についてはTwitterで毎日更新している。

今年から吉里吉里海岸にて「UMIDA吉里吉里」というトイレ、シャワー更衣室が完備された施設がオープンしている。ぜひ今年の夏も大槌町へお越しください。
さて、海開きが始まったということで、私も早速両海岸を訪れた。本当は人の賑わう昼間の様子を見学するつもりだったのだけれど、暑さにやられてしまい夕日が山間に沈み始める18時半ごろに向かった。案の定人の姿はなく静かなものだったけれどこれはこれで心地よい。浪板海岸の夕波の音を聞きながら、小一時間ほど黄昏ていた。熊が出るかもしれないのでとりあえず賑やかにしておこうと、ケータイでお気に入りの音楽を流す。とっても良い時間だった。

『少年時代』を流すには少し時期が早いかな?

7月8日(土)に吉里吉里海岸で行われた地引網体験。
当日、イベントの写真撮影を担当した。
たくさんの子供たちが集まり、漁師さんの指示に従いながら網を引っ張る。地引網ってこんな感じでやるのか、とカメラのレンズ越しに勉強になる。勝手なイメージだったけれど、網なのだから水は通り抜けるし、そんな重いものではないのかなと思っていたのだけれど、見ている限りかなり重そうだ。体験しないとわからないことがある。これはとても重要なこと。
今回はたくさんの魚が網に入り、魚の解説など参加した子供たちも元気いっぱいにはしゃいでいた。体験後はサーモンなどのお昼ご飯を堪能する。

網を手繰り寄せる。
大量だった!

8月20日(日)に第二回の地引網体験が開催される。一回目に参加できなかった方はぜひ二回目に参加していただきたい。詳しくは以下のチラシをご参照ください。

QRコードからお申し込みください。

二つ目の第二回開催体験イベントは8月27日(日)に行われる「おおつち里海ダイビングPart2」である。大槌の海の藻場再生を間近で観察することができる貴重なタイビング体験。今回はライセンスに有無に関わらず、初心者の方も大歓迎の内容になっている。こちらのチラシを制作した。
デザインは基本的に前回のものと同じく、裏面の内容をよりダイビングがイメージできるものに変更をした。お昼にはBBQ、ほたての浜焼き、そして大槌産の有機野菜を楽しめるらしい。こちらの野菜は同じ協力隊の方がやっている「Re-farm Project」からご提供いただく予定だ。大槌に住む様々な方々が繋がっていって、ひとつのイベントに関わっているのを間近で感じる。私ももっと積極的に関わらないといけないな。

初心者大歓迎!
インストラクターの方が丁寧に教えてくださるそうですよ?

二章 陸を泳ぐ。

七月の一番の大仕事は大槌まつりのポスター制作。
昨年に引き続き、今年も制作させていただいた。
昨年と違うのは、実際に大槌まつりを体験したということ。私はnoteでよく「体験すること」について書くのだけれど、「知らない」と「知っている」そして「体験した」の三つは全く違う。これは恩師からの受け売りでもあって、やはり大槌まつりを見て、実際に運営に関わって、見えてくるものは違ってきた。そんな気持ちで制作を始める。
今年は力強い神輿の写真と、波のイラストのデザインを考えた。大槌まつりの神輿渡御。曳舟と小鎚川渡御、実際に見て、なんて力強いお祭りだ、と息を飲んだのを覚えている。実際に大槌稲荷神社神輿渡御は誘導で一日歩いた。その力強さを表現しようと考えて今回の構図、デザインになった。
アドバイスをたくさんいただいた上で今回のポスターが出来上がった。昨年度よりもよりパワーがあり、目に留まるものに仕上がったのではないだろうか。しかし製作する上で私が表現したいことが先行しすぎるという課題も改めて見えた。物事を伝える順番について、もっと深く考えようと思う。

このようなポスターになりました。

ついついポスターを校了すると、私の中でお祭りが終わった気分になってしまう。しかし本番はまだである。気を引き締めて行こう。神輿渡御のルートなど、そのほかの情報はポスターのQRコード先の協会HPで随時更新していく予定だ。SNS各種でも情報を発信していく。
一ヶ月後に迫ってきた大槌まつりを、皆さん、ぜひ楽しみにお待ちください。

三章 空に潜る。

4月より参加している「LIVE DESIGN school」のフィールドワークに参加できるということで、今回、福井県鯖江市のクリエイティブディレクター・新山直広さんが代表を務める「合同会社 TSUGI」を見学させていただいた。
15日から17日の三日間、新山さんの案内のもと、越前、鯖江の町工房をはじめクリエイティブに溢れる場所を見学する。福井県鯖江市は日本でも有数の工芸品の産地で、越前和紙、越前漆器、そしてメガネが有名だ。メガネのフレームの国内シェア率が九割を超えるという、まさにものづくりの町。私のメガネのフレームも鯖江で作られているのだろうか?

鯖江に降りると、むわっとした空気が出迎えてくれた。ものすごい湿気と陽射し。立っているだけで汗が流れる。福井に行くのは初めてだったので、北陸はこんなに暑いのかと驚いてしまう。
しかしこの気候が伝統工芸品を作るのにとても適した環境なのだとか。越前和紙を作る「瀧製所」を見学した際、湿気があるから和紙をゆっくり乾かすことができ、綺麗な形に仕上がるとお話しされており、また越前漆器では、漆は湿気があることで「定着する」と言う。初めて知ったのだけれど、漆は「乾く」という表現ではないらしい。
たくさんの職人さんにお話しを聞き、総じて感じたことは自分のものづくりに誇りとプライドを持っておられるということ。楽しそうに説明してくださる職人のみなさん。

新山さんにいろいろと案内していただいた。
越前漆器の「蒔絵」と呼ばれる作業。直近で見ると繊細な筆捌きに感動する。
越前漆器。最近はいろいろな形、色があるそうだ。
越前和紙の実演。職人さんのこだわりを感じる。

私が鯖江を見学しようと思った理由は、昔からものづくりの町であった鯖江と、一次産業が力強い大槌のそれぞれの観光のあり方、違いを見るため。
新山さんはデザインの力でまちづくりをされており、そして観光面にも携わっている。鯖江がものづくりに特化しており、観光についてポテンシャルがあったからたくさんの移住者や観光客が来る街になったのだろうか。今回、案内していただいた場所も二泊三日では足りないくらい、もっとみたい!と思う。観光資源の差、というのがあるのは事実として、果たしてそれだけが違うのだろうか。たくさんの事を吸収することができた三日間だった。

今月はデザインについて改めて考えることが多かったように思う。
月末に参加した日本を代表するグラフィックデザイナーで、日本デザインセンターの代表取締役でもある原研哉さんの講義では「世界は四角くデザインされている」という面白いワードがあった。確かに都会には四角いビルが並び、四角いエレベーターに乗って四角いドアを出ると、直線の廊下が続いている。これはとても面白い。では自然は丸なのかな?「人間は曲線に美を感じることができても〜」という話もあって、それは無意識の自然美みたいなものに繋がるのだろうか?
そして何より興味深かった話が「Global」な世界が進むと「Local」がより重要になるという話。グローバル化という言葉が浸透し、飛行機で世界中どこでも行けて、画面を通せば様々な国の人と会話ができる多様化した世界で、ローカル思考というか、私が大槌にきた理由の一つで、漠然と「その場所の価値を知りたい」と考えていたことがより深まったように感じる。今後加速度的に進むであろうグローバルな社会で、ローカルなコミュニティのそこにある価値を伝えられるようになりたい。

原研哉さん著『デザインのデザイン』おすすめです。

あとがき

あっちい毎日が続きます。
私の地元埼玉では連日38℃を上回っているらしいですよ。ずっと埼玉で生活出来ていたことが不思議でたまりません。「夏」と「田舎」は私の中で憧れでした。『ぼくのなつやすみ』や『ひぐらしの鳴く頃に』『夜廻』などの「夏と田舎」がテーマのゲームをしていたからでしょうか?
そういえば、はじめて「きっしー」と呼ばれたは去年の今頃のような気がします。協会のとある方が名付け親です。いつの間にかたくさんの人にあだ名で呼んでもらえるようになりました。はじめましての方に電話で「もしもし、きっしー?」と呼ばれた時は流石に驚いてしまいましたが。
伝染力すごい。
気軽に呼んでくださいね。

メガネをぶっ壊してしまったので、新しいメガネ鯖江で買えばよかったな。

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