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電気鰻の夢見たり

ビリビリ

「いててっ!」

ふと体に走る痛みに目を覚ます。
忙しなくキョロキョロと辺りを見渡すと真っ白い空間の中に僕は居て、体を起こした正面にはヒゲの長いウナギが1匹ふわふわと宙に浮いている。

ウナギは僕を見ているよう、見ていないような
なんとも言えぬ腑抜けた顔をしていた。

「こら、このウナギめ。
お前が何かしたんだな?」

僕はウナギに大きな声で怒鳴った。
しかし、ウナギは上の空である。(ウナギなのに宙に浮いて上の空とは、なんとも珍妙ではあるが)

ビリビリ

「あいてっ!」

どうしたものかと頭を抱えているとまたビリビリときやがった。
なんということであろう、このウナギ
ウナギはウナギでも、電気ウナギと来た。

「こんちきしょうめ、電気ウナギなら電気ウナギらしく水の中に帰れってんだい!」

だがウナギは相変わらず呑気な顔である。
僕はもう我慢ならず、そのウナギの長ーいヒゲに掴みかかり「えい!」と一息に引っこ抜く

するとどうだろう、ウナギは穴の空いた風船のように萎んでいき
やがて薄皮一枚の姿と成り果ててしまった。

「ありゃりゃ、こんな小さくなっちまって」

僕はビリビリと、平たい電気ウナギだったものを引き裂いたのであった。

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