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取材日記 孤独な社長は探偵を雇った

 探偵は浮気調査の仕事がほとんどだと思われがちですが、特殊な任務を請け負っている探偵社がありました。それは、依頼された会社に中途採用として潜り込み、誰が社長の悪口を言っているのか詳細なレポートをまとめたり会話を録音する仕事です。期間は最低半年、長くて1年くらい。

 真面目に仕事をして信頼を得た頃、社長が後継者として考えているナンバー2やナンバー3の社員に接触し、先に探偵のほうから悪口を仕掛けます。社長としては「そんなこと言ってはいけない。僕は社長を尊敬している」と言ってほしいわけですが、バンバン不平不満が出てしまい、たいていはガッカリするみたいです。当然、悪口を言った社員は次期社長候補からは外されるわけで…。

 とにかく、社長っていうのは孤独な職業です。なぜ、探偵まで頼むのかと言えば、周りはお世辞ばかりで本心を言わないので、だんだん信用できなくなるんでしょう。会社が大きくなればなるほど、部下に対する不信感は拡大するようです。

 ソ連のスターリンは、側近が信じられなくなって相当な人数を暗殺しました。北朝鮮の金正恩は兄までも殺しています。偉くなればなるほど、叱ってくれる人は消え、それがまた孤独感を増幅させます。部下を信じ、孤独に耐えられる者のみが、経営者や権力者として成功するのかもしれません。

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