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企画書「恋する乙女のスマホ化計画」

キャッチコピー
私、大好きな先輩に告白してフラれたので、彼のスマホになることにしましたーー前代未聞の四角関係!

あらすじ
女子高生・舞結は、先輩の怜音に片思い中。告白するが――結果は惨敗。
もう死んでやる!と自暴自棄になっていたら、幼なじみのミキトによって、怜音のスマートフォンに心を移植してもらえることに。
Siriのようなバーチャルアシスタントとして話も出来るし、言い寄って来る子がいればスマートフォンとして全力で妨害する。それに何より、いつだって彼のそばにいられた。
そんな幸せに浸っていたら、なんと捨てたはずの体が舞結(スマホ)の前に現れる。
体の中には、ミキトがプログラミングした人工知能・ユマが人格として入っている。
ユマは舞結と対照的におしとやかで、従順な性格。そんなユマに、怜音はだんだん惹かれていき――

第1話
「好きです。付き合って下さい!」
思い込んだら一直線!の女子高生・舞結は、片思い相手の怜音についに告白する。
片思い歴はもう二年。彼を追って同じ高校に入ったくらい、舞結は怜音にぞっこんだ。しかし――
「……ごめん」
あえなく撃沈。
彼と付き合えないなら、こんな世界……何の意味もない! 自暴自棄になり、自ら命を絶とうとしていたそんな時。
「失恋なんかで犬死する前に、僕の研究の実験台になってくれない?」
幼なじみ・ミキトが声をかけてきた。彼は天才高校生と名高い科学者で、人工知能について研究中。現在は、人間の意識のデータ化を試みているらしい。
「君の心を、奴……愛しの彼のスマートフォンと一体化させてやるよ」
そんなことができるなんて!
半信半疑だったが、ヤケクソ状態の舞結はその申し出を受け入れる。
こうして舞結の意識はデータ化され、怜音のスマートフォンに埋め込まれた。
もちろん、怜音は舞結の心がスマートフォンの中に在るなんて考えもしない。
スマートフォン越しに話しかけてくる舞結を、バーチャルアシスタントだと思い込む。
スマートフォンと一体化し、大好きな怜音といつも一緒。
まるで彼の恋人になれたみたい。こんな日々がずっと続けばいいのに――と幸せに浸る舞結の前に、捨てたはずの“自分の体”が現れる。私の体に入っているのは、一体だれ?
ミキトを問い質すと、彼の作った人工知能ユマが人格として入っていると言う。
ユマは、舞結とは真逆のおしとやかで従順な性格。ユマが人格として入った舞結(以下、ユマ)にたびたび話しかけられるうちに、怜音はだんだんと彼女に惹かれていく。
そして、ついにある日。
「俺……彼女のこと、好きになっちゃった」
なんと、怜音はユマに恋に落ちてしまう。
だが一度告白を断ってしまったし、何でいまさら……と変に思われないだろうか。怜音は、バーチャルアシスタントだと思い込んでいる舞結に恋の相談をする。
――まさか、私じゃない私を好きになるなんて。
どう答えるべきか悩むが、ユマと怜音が付き合えば、いずれ自分が元の体に戻った時に恋人同士になれるはずだ!と彼の恋を後押しする。
「一度は断っちゃったけど……君のことが好きだ」
怜音はユマに告白し、二人は晴れて恋人同士に。
舞結はミキトに元の体に自分を戻すよう頼むが、彼の答えは――
「ご愁傷様。残念だけど、君を元の体に戻すつもりはない」
「はぁっ!!??」

第2話以降のストーリー
「何で元の体に戻してくれないの!」
肉体さえあれば、殴りかかりたいくらいなのだが、今の自分にそれは出来ない。出来るのはヒステリックに責め立てることだけ。
そんな舞結に対し、ミキトは口端を歪めた。
「復讐だよ」
なんと彼は、舞結にずっと復讐心を抱いていた。
キッカケは彼らが小学生の時。教室に落ちているラブレターが発見され、その差出人が誰なのかでクラス中は騒ぎになった。筆跡からそれがミキトのものだと勘付いた舞結は、皆には秘密にする代わりに言いなりになれと今まで散々便利使いをしてきたのだ。
「悔しいだろ? 君じゃない君が、大好きな男と結ばれる様子を間近で見なくちゃいけないのは」
ユマは、怜音が好きそうな性格としてプログラミングされている。彼が恋に落ちるであろうことはミキトの計画通りだった。
絶望する舞結だが、さらなる追い打ちをかけるように怜音とユマはだんだんと距離を近付けていく。
「彼女、どこにデートに連れて行ったら喜ぶと思う?」
「この服、どう?」
「ファーストキスは、どんな場所がいいかな?」
 何かと、スマートフォンの中にいる舞結に恋の相談をしてくる怜音。
舞結は二人の恋路をジャマしようと頓珍漢なことばかりを答える。それを鵜呑みにした怜音は、普通の女性ならば引くような行動ばかりを繰り返してしまう。
しかし、ユマは全く意に介さずに、舞結の作戦は失敗に終わった。
 
そんな中、怜音はユマの家にスマートフォンを忘れて行ってしまう。
期せずして、ユマと二人きりで話す機会を得る舞結。スマートフォンのスピーカー越しに、彼女に話しかける。
「ホントに怜音のこと好きなの?」
「いえ。そういう感情は特に抱いておりません」
「じゃあ何で、彼と恋人同士になったの?」
「そのように命じられましたので」
自分はプログラミングされた通りに行動しているだけだ、と主張するユマ。舞結はそんな彼女に自分がいかに彼を好きかせつせつと語る。
舞結が怜音に恋に落ちたのは、中学二年生のとき。女子人気が高いミキトと幼なじみ、ということで、クラスのボス的な女子に目をつけられてしまった。それで軽い嫌がらせを受けていたのを助けてくれたのが、一つ年上の先輩の怜音だった。
怜音はけして目立つタイプではない。美形じゃないし、学業もスポーツも人並みだ。
それでも心優しい彼に舞結は強く惹かれた。彼を追って、自分の成績では入るのが難しい高校に猛勉強して入ったくらい、怜音のことが好きだった。
「だからお願い。私に体を返してよ」
「……あなたの事情は分かりました。ですが、“命令”ですので」
ユマは頑なに、ミキトから為されたプログラミングを遂行しようとする。
 
ユマと怜音が付き合い始めて、三回目のデート。
デート先は遊園地。怜音は観覧車の中で、ユマとファーストキスをする計画を立てていた。
隣同士に並び、いい雰囲気の二人。それをなす術もなく、スマートフォンとして舞結はただ見ているだけ。
ゴンドラが一番上に到着し、怜音の顔がユマの唇へと近付いていく。夢にまで見た彼とのキス――でも、するのは私じゃない。
やめて!
叫びたいけれど、マナーモードになっているためにその声は音にならない。唇と唇が触れそうになったその時。
「やめて下さいっ!」
なんと、ユマがキスを拒絶して怜音を突き飛ばす。つい少し前までいい雰囲気だったのに、と呆気にとられるばかりの怜音。
「す、すみません。取り乱しました……もう一度チャンスを――」
気を取り直して怜音にキスしようとするユマだが、彼女の目からは涙がこぼれ落ち続ける。
怜音を誘惑するようプログラミングされているはずなのに、ユマはどうしてもその命令に従えない。
「どうして泣くの? ――もしかして、他に好きな人が……」
怜音の問いに対し、ユマは何も答えなかった。
 
怜音とのデートを終えたユマは、ミキトのラボを訪れる。
「申し訳ありません、マスター。ターゲットと口づけすることが出来ませんでした」
「何でだよ。どうして、プログラミングされた通りに動かないんだ」
ミキトは苛立ち、失望を露わにする。
「それは――私が他の人物に恋をしているからです」
「?」
「あなたをお慕いしています」
「!」
愛の告白に、虚を突かれるミキト。まさか自分が創り出した人工知能に想いを寄せられているなんて――考えたこともなかった。
「悪いけど……僕は君の気持ちに応えるつもりはない」
「はい。あなたが他の人物に恋心を一途に抱き続けていることはよく存じ上げています」
ミキトもまた、恋をしている。そして、その相手とは――。
「そして今、私はその人の体の中にいる」
なんと、舞結だった。
実はミキトが小学生時代に書いたラブレターは、彼女に宛てたものだった。しかし、宛名を書いていなかったため舞結はミキトの恋心に全く気付かず、挙句の果てにはそれをネタに脅してくる始末。
歪んだ恋心は彼の中で燻り、復讐心に変容してしまった。
「私がこの体に入っている今なら、あなたは恋焦がれる相手を思いのままに出来るのですよ」
そう言いながら、しなだれかかってくるユマ。しかし、そんな彼女をミキトは拒絶する。
「そんな幼稚な恋心、とうの昔に消え失せた。今の僕にあるのはアイツへの復讐心だけだ」
 
ミキトから想いを拒絶されて傷ついたユマは、隙を付いて怜音からスマートフォンを盗みだす。
中に在る舞結の人格が標的だ。
ユマはスマートフォンに語りかける。
「いいですね、あなたは。私が欲しいものを全て持っている」
「は? それはそっちじゃん?」
ユマの恋心を知らない舞結からすれば、怜音に愛される彼女が羨ましくてたまらない。
「――あなたさえ、いなければ」
ユマが舞結を連れてきたのは、河川にかかった橋の上。そして――
「さよなら。舞結さん」
そこから、スマートフォンを川へ投げ捨てる。
「!!」
川底に沈んでいくスマートフォン。怜音のスマートフォンの防水機能は最長30分。
それ以上、水の中にいれば故障する。そうしたら私はどうなるのだろう。もしかして、死ぬ!?
死を覚悟したその時、こちらに向かって手が伸びてきた。
その手はスマートフォンを水の中から救い上げてくれる――なんと、ミキトだ。
「どうして、アンタが……」
「GPSの位置情報が妙な動きを見せていたから……」
そう言いながら、ミキトはそっぽを向く。普段はクールさを気取っている彼がびしょ濡れだ。舞結のことが心配でたまらなかったのだろう。
「私に復讐したかったんじゃないの? スマートフォンが壊れるのを、放っておけばよかったじゃん!」
「……復讐はまだまだこれからだ」
素直になれないミキトは、どうしても自分の本心を伝えることができない。
 
複雑に入り混じった四人の恋愛模様。
完全に一方通行の彼らの恋が、いつか成就する日は来るのだろうか?
舞結は自分の体に戻れるのか。そして、彼女が最終的に選ぶのは怜音か。それとも、ミキトなのか!?

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