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企画書「死刑囚転生《魔術学園連続殺人事件》」

キャッチコピー
平和だった魔術学園に、死刑囚が転生してきた!?
 
 
あらすじ
そこは、魔法学園青春コミック『マジ★マジカル』の世界。
主人公の少年・神無月は魔法の修行に勤しみながら、個性豊かな同級生たちと楽しい学園生活を送っていた。
しかし、そんなある日。平和な日常が一変してしまう。
現実世界で死刑執行された連続殺人鬼が、『マジ★マジカル』のキャラクターの一人に転生してきたのだ。そのせいで学園の学生たちが次々に殺されていく。
『マジ★マジカル』の世界は俺が守る!
連続殺人鬼はいったい登場人物の誰に転生したのか? 
そして、彼をこの世界から追い出す方法はあるのか!?
 
 
第1話
全寮制の魔術学園を舞台に繰り広げられる魔法冒険譚『マジ★マジカル』。
主人公・神無月は、選ばれし12人の生徒《時計盤》の一人だ。
最も優秀な生徒に与えられる伝説の杖《アロンズロッド》の獲得を目指し、日々修行に勤しんでいる。
魔術の実技も座学も平凡だが、最終的には自分が《アロンズロッド》を手に入れると神無月には確信があった。
――そう。自分がフィクション世界の住人で、さらには主人公だと彼は知っているから。
ライバルたちと時には反目しつつ、時には友情を育みつつ。楽しい学園生活を送っていたある日のこと。
学園の鐘塔で、少女の死体が発見される。めった刺しにされた上で、目玉をくり抜かれ、その穴にキャンディが押し込まれたという無残な状況――その遺体は《時計盤》の一人・弥生のものだった。
「弥生がどうして……?」
温厚で誰に対しても分け隔てなく優しい彼女が、こんな殺され方をするなんて。
しかも、魔術ではなく物理攻撃とはどういうことだ?
前代未聞の事件に、学園内は騒然となる。
級友の死にショックを受け、神無月が何の気なしに深夜の学園内を徘徊していると。
「……?」
使われていない魔導書保管庫から物音が聞こえてくる。
覗いてみると、そこにはなんと見知らぬ少女が倉庫を漁っていた!
「!」
姿を見られ、慌てて逃げ出そうとする少女。
神無月は反射的に捕縛し、彼女を尋問する。
「……もしかして、お前が弥生を殺したのか!?」
少女を弥生殺害の犯人ではないかと疑う神無月。
そんな彼に、少女は深い深いため息をついた。
「この私が誰だか、分かってないみたいですね」
「?」
「私はね、あなた達にとっての創造主……『マジ★マジカル』の作者・時野つかさですよ」
「!?」
彼女はなんと『マジ★マジカル』の作者だと言う。まさか作者自ら、創作物へと降臨してきたというのか!?
「で、でもどうして、作者がこっち側に?」
「想定外のことが起きたからです」
「?」
「最近“転生”という現象が様々な創作物に起きているのはご存知ですか?」
「う、噂には聞いたことがあるけど」
「それがこの作品にも起きたのです」
「!」
「本来はそれほど大騒ぎするような事ではないのですが……」
つかさは神妙な面持ちで続けた。
「どうやら『マジ★マジカル』に転生してきたのは――現実世界で死刑が執行された連続殺人鬼のようです」
「!!??」
 
 
第2話以降のストーリー
死刑囚が、『マジ★マジカル』の世界に転生してきた? 
作者・つかさからそう聞かされ、驚愕する神無月。
「じゃあこの前、弥生が殺されたのはもしかして――」
「ええ。転生してきた死刑囚の犯行です。きっと、これからも登場人物たちを殺害し続けることでしょう」
「お前、作者だろ! どうにかできないのかよ!?」
「一体、だれに転生したのか――この私にも分からなくて……」
転生してきた人物に関しては、作者でも与り知るところではないと言う。
「チっ。作者のくせに使えないな」
「……私にそんな口きくと、後で後悔しますよ」
「例えば?」
「あなたを殺せるのは、転生してきた死刑囚だけではないという事です」
「!!」
主人公退場を匂わせるつかさ。気を取り直し、神無月は問う。
「その死刑囚はどんな事件を起こしたわけ?」
つかさはポケットから、事件の詳細が記された新聞記事を取り出した。
死刑囚の名は真中零。
大学五年生(医大生)だった当時、一年をかけて十二人の人間を殺している。そのいずれも目玉がくり抜かれ、キャンディが詰め込まれていた。
「弥生が殺された時と同じ……」
「ええ。真中の死刑が執行されたのが、一週間ほど前。
作者としては複雑ではありますが、彼は『マジ★マジカル』の大ファンだったそうです」
「死んで、大好きな世界に転生してきたってワケか」
「自分の作品を守るため、死刑囚を追って私もこの世界へやって来たんです」
彼女は寝ている間だけ、“夢”として『マジ★マジカル』の世界へ来られるらしい。
「そんな殺人鬼、俺がぶっ倒してやる!」
覚悟を決めて宣言する神無月に、つかさは目を丸くした。
「……珍しく、主人公っぽいですね」
「だろ」
「普段は平凡でぐうたらで、いい所なんて何一つないのに」
「それ、作者のお前が言う?」
「私だって本当は完全無欠のイケメンを主人公にしたかったですよ。
――だけど、編集さんが『平凡なくらいの方が、読者が感情移入しやすいから』って」
「……オレ、お前のこと嫌いだわ」
会って早々、相性最悪の主人公と作者。
しかし、この世界を守りたいと言う共通の目的のため二人は手を組むことに。
  
死刑囚がどのキャラクターに転生したのかを突き止めようとする神無月とつかさ。
「以前と感じが変わった人はいませんか?」
弥生が亡くなった今、神無月以外の《時計盤》メンバーは十名。
魔術師の家系ではないのに突然変異的に魔力が生じた、ガサツ男・睦月。
才色兼備の学級委員長、ヒロインポジションの如月。
かなりの無口で呪文以外を発した所を誰も聞いた事がない少年・卯月。
わんこ系男子であり、主人公の親友ポジションの皐月。
高い位置で結ばれたツインテールがとてもよく似合うが、一人称が「僕」の不思議っ娘・水無月。
根拠のない自信に満ち溢れた、究極のナルシスト男・文月。
エリート家系に生まれた気の強い、高飛車な美少女の葉月。
実戦は苦手だが、知識の量はすさまじい論破マン・長月。
ただ佇んでいるだけで、フェロモンだだ漏れのお姉さん系美女・霜月。
そして、天才魔術師と名高いイケメンで、主人公のライバル・師走。
「ホントは師走くんを主人公にしたかったんですよね~」
とつかさはため息。
天才クール系が好みのタイプらしいが、編集者から「こういうキャラクターは普通、ライバルでしょう!」と言われて泣く泣く平凡な神無月を主人公にしたと言う。
「人気投票でも、彼がダントツの一位ですしね」
「えっ!? オレ、主人公なのに一番人気じゃないの!?」
「はい。四位です」
突きつけられた現実に思わぬショックを受けるが、今はそんな事を憂いている場合ではない。
自分以外の十人の動向を注意深く観察する神無月。
しかし、真中零は転生したキャラクターを上手に演じているらしく、誰も彼も以前と変わらぬように見える。
しかし、この中に転生してきた死刑囚が確実にいるのだ。
神無月はつかさに問う。
「転生されやすいタイプとかっていないの?」
「今の流行は、間違いなく悪役令嬢ですね」
「!!」
ドンピシャで、悪役令嬢系のキャラクターがいるではないか。葉月だ。
「死刑囚はきっと、葉月に転生したんだ!」
「そんな単純に問題が解決するでしょうか?」
つかさは懐疑的だが、神無月は意気揚々と葉月の元へ向かう。
しかし、そこで待ち受けていたのは――。
「!!??」
なんと、既に彼女は殺されていた。
目玉をくり抜かれた眼窩に、キャンディが詰め込まれている。
弥生の時と同じ殺害方法。
「……葉月はじゃなかったのか」
新たな犠牲者が出てしまった事に、神無月は死刑囚への怒りを燃やす。
このままでは《時計盤》のメンバーが全員亡き者にされてしまう……。
もちろん、自分も例外ではない。
 
つかさは夜しか現れないため、昼の間は普段と変わらぬ学園生活を送る神無月。
弥生、葉月――と仲間を二人も失い、《時計盤》メンバーの中には落ち込む者もいたが、一方で《アロンズロッド》を手に入れるためのライバルが減った――と喜ぶ者もいた。
そんな仲間の態度に憤るが、真中零の目的は伝説の杖を手に入れることかも、と思い至る神無月。
アロンズロッドは最強の魔法の杖――手に入れれば、この世界を思いのままに出来る。
絶対にそれだけは阻止せねば……と神無月は、自分が《アロンズロッド》を手に入れるため――と厳しい修行に勤しむ。
その懸命な姿を一番近くで見守っているうちに、つかさは神無月を見直す。
「少しは主人公としての責任感が出てきたみたいですね」
「当たり前だろ。この世界は、俺のためにお前が作った世界。絶対にこの俺が守る」
「!」
最初は犬猿の仲だった二人に、いつしか深い絆が生まれ始めていた。
しかしその一方で、《時計盤》のメンバーたちは次々に殺されていく。
そんなある夜のこと。
過酷な魔術の修行に疲れ果ててうたた寝している所を、神無月は“何者か”に襲われる。
心臓に刃が突き刺さりそうになったその刹那。
「!?」
誰かが飛び出てきて、身を挺して神無月をかばう。
――つかさだ! 刃が体を貫通し、彼女はその場に崩れ落ちる。
「つかさっ!」
だんだんと冷たくなっていく体を抱きかかえながら、神無月は泣きながら彼女の名を叫ぶ。
「……うぅ。ポンコツ主人公を守る羽目になるなんて――」
「もう喋るな。今すぐ、治癒魔法で治してやるから……」
しかし、神無月の手元には今、魔法の杖がない。
なす術もなく、つかさの呼吸は虫の息になっていく――。
「『マジ★マジカル』を……お願いします」
そう言い残し、つかさは神無月の腕の中で絶命する。彼女を守れなかった――と絶望する神無月。打ちひしがれていたが……。
「この世界を守るんだ――!」
彼女の遺志を継げるのは自分だけ。
果たして神無月は、死刑囚・真中零の正体を突き止められるのか? 
そして、彼をこの世界から追放することは出来るのか!?

#週刊少年マガジン原作大賞

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