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#16 覆水盆に返らず

 日本語は難しい。
 我が大日本帝国内ですら様々な言語が存在する。
 オーソドックスな関西弁からレクチャーしよう。
 机の上に紙屑が置いてあると仮定して
「それ、ほっといて」と言われたら、あなたはどう解釈するだろうか。

①放っておく(そのままにしておいて、触らないで)
②ほっておく(捨てておいて)
ネイティブな英語だと
③それhot it!(暑い!)
と聞こえるかもしれない(ない)

もちろん正解は②の「捨てておいて」である。

 広島では「とりあえず生(ビール)で」と注文するところを「たちまち生で」と言ったりするし、沖縄だと出来立てのご飯が運ばれてきて「あちこーこーしましょうね」となんのこっちゃわからん言語で同意を求められる。
※「熱いうちに食べよう~」の意味。

 さて、そろそろお盆が近づいている。
 一般的な会社ならお盆休みに突入するが、サービス業などは繁忙期になることがほとんどだろう。
 私も前回のサービス業から転職して、今年はお盆休みがある。
 社会人になってから9日連休とは、記憶を辿ってもなかなか無い。
 
 しかしのんびり全休しようとは思っていないので、明治村でバイトをしようと思い立って面接に行った。
 犬山市には、
【博物館明治村】
【日本モンキーパーク・センター】
【リトルワールド】
という三大観光地がある。
 この3つに共通するのが、

【株式会社名鉄インプレス】

南知多おもちゃ王国・ビーチランドも同社だが、とりあえず明治村だ。

 善師野伏屋で竹灯りのナイトウォークイベントを開催するにあたり、名鉄さんは後援として広告などをしてくださる。

 相当な下心があって、その1つである明治村で働いてみたいと思ったのだ。
 面接時間は15分程度と聞いていたが、実際は30分を要した。
 面接最終日で最後尾の私がひょっこり現れて「既に採用が決まってる方がいますので…」と冒頭に言われたため、こりゃ落ちたなと思っていたのだが、
「ところで、何故明治村で働こうと思ったのですか?」とよくある志望動機を訊ねてこられたので、実はカクカクシカジカで…と、名鉄さんの関わる場所で働いてみたいと説明した。

 そこから27分間。

 総務の方が「竹灯り」に対して異常に食い付いてしまい、終始談話状態となっていた。

 私が最も驚いたのが、この総務の方のアンテナの張り方である。
 私は今回の短期バイトを明治村に絞ったのには理由があった。
 明治村ではこの時期になると【宵の明治村】として、ナイトイベントを行う。
 内容も一読したが、そこに竹の灯籠を使ったようなものはなかった。

 総務さんは私が【何をしに来たのか】を素早く察知したのだ。
 そう、面接という名の「営業」である。

 名鉄という後援を得た善師野の竹灯りは、その1つの成功例を軸にグループ全体へ波及する可能性を秘めている。
 しかも【犬山市】というカテゴリーでみれば、全くの他県から参入するより敷居はぐっと低くなる。

 結果的に私は採用となった。

「経歴も面白いですし、人柄は十分わかりました(笑)」
と、質問内容を熱心にメモって面接を終えた。

 言葉は重要である。

 明治村が竹灯りなどを取り入れるかは問題ではなく、誰かの記憶に強く印象を残し、好奇心を駆り立てるプレゼンができるかどうか。
 尤も私は営業マンらしい企業相手のプレゼンなんてのは技術も話術も知識すらないので、日常会話の流れで「こいつ面白い…!」と思わせれるかどうかが最重要となっている。

一度相手に不信感を持たせれば、

 “覆水盆に返らず”

どんなに取り繕っても後の祭りである。

しかしこの言葉。
客観的事実の「してしまったことは元に戻らない」と、
主観的見解の「過ぎ去ったことは、くよくよしてもしかたない」
これらを併せ持つ諺(ことわざ)だと思った。

 やっぱり日本語って難しい。

 

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