Subclinical Afへの抗凝固療法

■ 埋め込み型デバイスや, 経皮型デバイスにより検出されたAf症例をAHREs(atrial high-rate episodes)またはSubclinical Af(無症候性のAf)と呼ぶ.
■ AHREsにおける血栓症リスクは, いくつかのCohortの結果から, 症候性Afよりも低いと考えられている.
□ AHREsに対する抗凝固療法の適応は定まったものはないが, 24h以上持続するような症例や, Strokeのリスクがある症例では抗凝固療法を推奨する意見がある.

NOAH-AFNET 6: 高齢者におけるAHREsに対するNOAC(Edoxaban)を評価したDB-RCT.

(N Engl J Med. 2023 Aug 25. doi: 10.1056/NEJMoa2303062.)
■ 患者は65歳以上で, 埋め込み型デバイスによりAHREsが検出され, 今までECGでAfと診断されたことがない患者群.
□ AHREsは≥170/minの心房拍動が6分以上持続する症例で定義され, 
 さらに1つ以上のStrokeリスクを有する患者(CHA2DS2+V)を導入した.
□ 除外項目: ECGでAfが記録されている患者, 30日以内のACS, PCI, CABGの病歴, 余命が12ヶ月未満, 抗凝固薬が禁忌, DAPTが適応となる症例, 他に抗凝固療法が必要とされる疾患.

■ これらを満たす患者群をEdoxaban vs Placebo群に割り付け, 心血管死亡, Stroke, 塞栓症の頻度と発症までの期間を比較した.
 Edoxabanは60mg/d, 体重≤60kg, CCr 15-50mL/min, P-glycoprotein阻害作用がある薬剤との併用時は30mg/d
 Placebo群では偽薬またはアスピリンが含有されたものが用意され, 血管疾患や冠動脈疾患, 脳卒中の既往などによりアスピリンが適応と判断された場合はアスピリン含有Placeboが使用された.

■ 患者群
 75歳以上が2/3を占め, 平均年齢は77.5±6.7歳
 心不全 27.4%, HT 86.9%, DM 26.9%, 脳卒中/TIA既往 10%
 MI既往 26.4%
 AHREsの持続時間は2.8時間(0.8-9.4)
 CHA2DS2-VAScスコアは4[3-5]
□ コントロール群の多くでアスピリンが使用された

■ アウトカム
Studyは安全性の懸念より途中で中断
□ 心血管イベントリスクは両者で有意差は認めないが, Edoxaban群では有意に出血リスクが上昇する結果であった.
・脳梗塞 0.9%/y vs 1.1%/y, 
・脳梗塞, 全身性塞栓症 1.0%/y vs 1.5%/y
・Major bleeding 2.1%/y vs 1.0%/y, HR 2.10[1.30-3.38]

ARTESIA: AHREs(Subclinical Af)を認め, 且つCHA2DS2-VASc ≥3を満たす患者群を対象としたDB-RCT.

■ 患者は55歳以上(7例のみ55歳未満の登録者)

 75歳以上の他にリスクのない脳卒中既往がある患者も導入.
□ 上記患者群をApixaban 5mg/d vs ASA 81mg/d群に割り付け, 
塞栓症リスクを比較した
□ 24h以上Afが持続した場合は中断され, open-labelでの抗凝固療法に移行された.

■ 患者群
 平均年齢は76.8±7.6歳
 HT 81.5%, CAD既往37%, DM 29.1%, 心不全 28.3%, 脳卒中/TIA/塞栓症 9.0%
 CHA2DS2-VAScスコアは3.9±1.1, 60.7%が≥4であった
□ 年齢やStroke既往(およそ1割)など, 背景はNOAH-AFNETと同様と言える.

■ アウトカム
□ Stroke, 塞栓症リスクは有意にApixabanで低下;
 0.78%/y vs 1.24%/y, HR 0.63[0.45-0.88]
□ 脳梗塞がApixabanで有意低下する: 0.64%/y vs 1.02%/y, HR 0.62[0.43-0.91]
 脳出血は同等.
□ 一方で, Major bleeding, 特に消化管出血リスクは上昇する;
 Major bleeding: 1.53%/y vs 1.12%/y, HR 1.36[1.01-1.82]
 GI bleeding: 0.78%/y vs 0.44%/y, HR 1.76[1.13-2.74]


同時期に発表された, リスクのあるAHREsに対する抗凝固療法の大規模RCT.
双方とも, 抗凝固療法による出血リスクの上昇は同等に認められた
しかしながら, NOAH-AFNET 6では脳梗塞や塞栓症のリスク低下効果は認めず, ARTESIAでは有意にDOACで低下を認めた.

患者背景や母集団には大きな差は認めない.

考察では,
NOAH-AFNET 6では出血が増加したため早期に中断されており, 主要アウトカムであるStrokeや塞栓症の件数が少ない状況で終了した.
また, 主要アウトカムに心血管死亡が含まれていたため, 有意差が出なかった可能性を指摘している.

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