Acute Lupus Hemophagocytic Syndrome

症例: 中年の女性. 汎血球減少.
 半年前〜日光過敏, 数ヶ月前より手指, 肘などの多関節炎を認めていた.
 近医での血液検査では正球性貧血, LDHの300程度の上昇も認められていた.
 数日前より39度台の発熱, 強い倦怠感があり, 血液検査にて汎血球減少, LDH 2000台, フェリチン 9000台, TG 390と高度上昇を認め紹介.
 
 検査の結果, 骨髄より血球貪食所見が認められた. 補体は低値, ANAは強陽性, 直接クームス陽性などのAIHA所見もあり, SLEに伴うHPS: Acute lupus hemophagocytic syndromeと診断された.


血球貪食症候群:


Hemophagocytic Lymphohistiocytosis(HLH), Hemphagocytic syndrome(HPS)などと呼ばれる. HLHが主流.

・感染症や自己免疫疾患, 薬剤などによりマクロファージが活性化し, 網内系での血球貪食が生じ, 肝脾腫や汎血球減少を生じる病態である.
・背景疾患には先天性(遺伝性)と後天性に分類され,
 先天性: 家族性HLH(Farquhar disease), 免疫不全症候群(Chediak-Higashi syndrome, Griscelli syndrome, X-linked lymphoproliferative syndrome)が含まれ,
 後天性: 感染症(EBVが代表. 他にもウイルス感染, 細菌感染, 結核性など), 悪性腫瘍(悪性リンパ腫が代表), 自己免疫性疾患(SLEやAOSD)などがある.

日本国内のHLHの原因疾患

2001-2005年に診断されたHLH 799例中, 567例で原因を評価した報告
(Int J Hematol. 2007;86:58-65.)
・原因は, EBV関連が最多
で163例, 他の感染症が138例
 リンパ腫関連HLHが108例, 他の悪性腫瘍関連が24例
 自己免疫性疾患が53例, 家族性が20例.
・年齢と原因の関連性
 EBV関連は若年で特に多い.
他の感染症も若年で多いが, どの年代でも生じ得る.
 高齢者ではB cell(IVL)やT/NK-cellリンパ腫に伴うものが多い.
 自己免疫性疾患の多くは<30歳で生じている.
 家族性は若年性のみ(<15歳).

自己免疫性のHLH

自己免疫性疾患を背景としたHLH症例276例の解析では,
(Lancet 2014; 383: 1503–16)
・SLEが133例, AOSDが54例と最も多い.
・他に報告があるのがRA 18, 血管炎 11例, IBD 11例.

SLEによるHLH = Acute Lupus Hemophagocytic Syndrome(ALHS)

・SLE患者で生じるHLH.
・他に原因となり得るViral infection, lymphomaを認めず,
SLEのみしか原因疾患が無いもので定義される.
・ANA高値, 低補体例が多く, 免疫複合体が関与している可能性が示唆されている.
(Internal Medicine 1998;37:550-3)

Literature reviewよりALHS 93例の報告

(Lupus. 2015 Jun;24(7):659-68.)
・ALHS診断時の年齢は30.4±14.5歳
 男女比は18:75
SLEの発症時にALHSで発症した症例が53%であった.
他臓器障害の頻度

・心筋炎を合併する頻度が高く, 予後に影響するため注意が必要.

他の報告より, (Clin Rheumatol (2014) 33:281–286)
・低補体血症は78%, Ds-DNA抗体陽性が79%
・ANAは通常高力価で陽性となることが多い

ALHSの治療

・治療はSLEの治療と同じように, ステロイド, HCQ, IVCY, Cniが選択肢となる.
・IVIGも行われる.

・治療反応性は, (Lupus. 2015 Jun;24(7):659-68.)
 ステロイドでは39%(36/92)
 CyAは63%(19/30)
 IVCYは88%(15/17)
 IVIGは55%(17/31)
 RTXは60%(3/5) 

・先ずはmPSLパルスを行い, 血球減少が高度の場合や感染症が除外しきれない状況で, IVCYが使用しにくい場合はIVIGが選択肢として挙がる.
・それでも反応が悪ければIVCY, Cniを選択する形が初手治療となる.

また, 前述の報告(Lupus. 2015 Jun;24(7):659-68.)より,
ALHSにおいて,
・CRPが低値, 貧血が高度ではない症例はよりステロイド単独への反応が良好であり,
・フェリチンが高値, 白血球減少が高度ならばCniへの反応がより期待できる, との解析結果がある

・この報告ではさらに7例の自験例の解析において, 抗Ds-DNA抗体陰性例もCyAへの反応性を期待できる結果であった.

・治療選択の参考としたい. 

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