特発性炎症性筋症における悪性腫瘍リスクとスクリーニングの推奨

■ 皮膚筋炎の15-32%,多発性筋炎の9-15%に悪性腫瘍が合併する〔N Engl J Med. 1992 Feb 6;326(6):363-7〕〔Lancet. 2001 Jan 13;357(9250):96-100〕.

□ 胃癌や大腸癌,膵臓癌といった消化管腫瘍,肺癌,悪性リンパ腫,卵巣癌,乳癌,前立腺癌といったさまざまな悪性腫瘍が関連し, 筋炎発症後数年(2-5年)経過して発見されるものも多い〔Lancet. 2001 Jan13;357(9250):96-100〕.
・診断時のみではなく,診断後5 年間は悪性腫瘍の出現に注意すべきと言える.
・アジア人の皮膚筋炎,多発性筋炎では,肺癌と咽喉頭癌が最も多いとする報告もある〔ISRN Rheumatol.2013;2013:509354〕.

■ 筋炎疾患において,悪性腫瘍リスクに関連する因子 

(Rheumatology (Oxford) . 2021 Jun 18;60(6):2615-28)

□ 成人発症例の抗TIF1-γ抗体陽性の皮膚筋炎は悪性腫瘍との関連が高い.
□ 小児発症例ではリスクにはならない.
□ 抗TIF1-γ抗体陽性例では, 嚥下障害を伴うリスクが高く(OR 2.8[1.6-4.9]), 無痛性/非紅斑様の手掌皮膚病変を呈する (Clin Rheumatol . 2019 Aug;38(8):2171-9)(Clin Rev Allergy Immunol. 2016 Dec;51(3):293-302.). そのような症例では悪性腫瘍の可能性を考慮することが重要.

IMACSからの特発性炎症性筋症における悪性腫瘍スクリーニングの推奨

■ International Myositis Assessment and Clinical Studies Group(IMACS)による特発性炎症性筋症における悪性腫瘍スクリーニングの推奨では,
□ 筋炎のタイプ, 自己抗体, 臨床所見から悪性腫瘍リスクを評価し, それぞれに応じてスクリーニングの内容, 頻度を規定している(表X) (Nat Rev Rheumatol. 2023 Nov 9. doi: 10.1038/s41584-023-01045-w.)

□ 通常リスク群では特発性炎症性筋症診断時に基本的スクリーニング*を行う.
□ 中リスク群では特発性炎症性筋症診断時に基本的+強化スクリーニング**を行う.
□ 高リスク群では特発性炎症性筋症診断時に基本的+強化スクリーニングを行い, その後は年1回基本的スクリーニングを3年間継続する.
・高リスク群において初期のスクリーニングで悪性腫瘍が認められない場合, 上下部内視鏡検査やPET-CT検査を考慮する.
・>40歳発症の抗TIF-1γ抗体陽性の筋炎で, さらに高リスク因子を1項目以上認める患者群では最初からPET-CT検査による評価も考慮される.

□ また, 意図しない体重減少, 悪性腫瘍の家族歴, 喫煙, 不明熱, 寝汗などがあれば積極的に悪性腫瘍の検索を行うべき.

*基本的スクリーニングの内容
包括的な病歴聴取, 包括的な身体診察

血液検査(血算, 肝酵素, 血沈, CRP, 
蛋白免疫電気泳動, FLCの評価)
,
尿検査
, 胸部レントゲン, 
各地域/国の規定した年齢相応の癌検診

**強化スクリーニングの内容
頸部〜骨盤のCT検査, 
子宮頸癌検査
, マンモグラフィー, 

血液検査: PSA, CA-125

骨盤・経腟超音波検査(卵巣癌検索), 

便潜血検査.
アジア人では上咽頭癌リスクが高いため, 咽頭ファイバーによる検査も推奨される.

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