足・足関節痛への対応(JAMA reviewより)

以前膝関節痛への対応のReviewがJAMAに載った.
参考(https://note.com/calm_hornet327/n/ne957045d89fb)

今回は足・足関節痛への対応のReview. (JAMA. 2023;330(23):2285-2294.)
足や足首の疼痛で最も多い原因である,
Morton neuroma(モートン神経鞘腫), 足底筋膜炎, アキレス腱症について説明されている.
・これらは非手術治療で改善が期待できる病態であり, 
評価方法や治療を知っておくことは重要といえる.


モートン神経症腫

■ 足の指間に神経腫を形成することで神経が圧迫され,
神経症状を生じる. これをMorton’s neuromaと呼ぶ
□ 組織学的には, 神経および神経周囲の線維化, 髄鞘の減少, 神経の肥大が認められる. 足底神経が圧排される
□ 多発性に生じることが多く, 最も多い部位は第3趾間神経.

■ Morton神経鞘腫の有病率は不明確であるが, 圧迫性神経障害で2番目に多い障害とされる(1番は手根管症候群)
■ 45-54歳で多く, 外科切除例の評価では女性が4:1と多い.
■ 第3趾間神経が87%と最も多い部位であり, 次いで第2趾間神経.
両側性が21%で認められる.

モートン神経鞘腫の症状/所見

■ 最も多い症状は足底の中足骨骨頭間の灼熱感.
□ 疼痛は隣接する2本の足趾へ放散することもある.
□ 他にはしびれ感や電撃感などもある.
□ 足幅が狭い靴を履いたり, 歩行, 足指を伸展させることで症状は増悪し,
安静により軽快する.

J Foot Ankle Surg. 2015 Jul-Aug;54(4):549-53.

■ 身体所見で有用なのはThumb index finger squeeze.
□ 症状がある指間部を母指と示指で挟み込むと疼痛が誘発される所見.
■ Mulder’s clickは患側足の中足骨頭部位を
片手で握り, 反対側の指で
足底のNM部に触れる. 足を強く握り、
足底部にクリックが生じる所見が陽性
■ Foot squeeze: 足を中足骨頭部で握り
疼痛が生じれば陽性

■ Morton’s neuromaの検査はエコーかMRI
□ エコーでは感度90%, 特異度88%, LR+ 2.77, LR− 0.16
□ 
MRIでは感度93%, 特異度68%, LR+ 1.89, LR− 0.19と
エコーの方が感度, 特異度共に良好.
■ エコーでは指間部の低エコー領域として描出され,
MRIではT1でIntermediate, T2でLow intensityとなる

Morton神経鞘腫の治療

■ 保存的加療: 誘因となる行動を避け, 圧迫を軽減するような靴を使用.

□ 
クッション性が高く, つま先が広い靴を履くことで症状が軽減する可能性がある.
 中足骨のパッドや神経鞘腫の部分のパッドがついている装具を利用する方法もある.
 ヒールが高い靴は避ける.
■ ステロイドの局所注射: DB-RCTにおいて, mPSLと局所麻酔薬の混合剤の局所注射(1回投与)は麻酔薬単独群と比較して, 有意に3ヶ月後の疼痛VASを改善させた(MD 14.1点[5.5-22.8]).
■ 保存的加療やステロイド投与により改善が乏しい場合(6週間程度フォローし判断), 外科治療が推奨される.

足底筋膜炎

■ 足底筋膜(Plantar fascia)は3つの筋膜帯(内側, 中央, 外側)から構成
□ 
踵骨の足底面〜中足趾節関節の足底板, 近位趾骨の足底板に付着.
□ 
足底筋膜は歩行時に収縮し, 足のアーチ(土踏まず)を安定化させる.

■ 繰り返す過度な負荷により, 微小な損傷が生じ, 筋膜炎を呈する. 特に内側の足底筋膜で多い.
■ 足底の踵骨部痛の鑑別では, 足根管症候群, バクスター神経絞扼, 踵骨ストレス骨折が挙げられる.
 
 足底踵骨棘は, 足痛患者で多く認められるが, 疼痛への関連性は不明.

■ 足底筋膜炎の頻度
□ 
成人例の1.10%[1.06-1.34]が過去1年以内に足底筋膜炎の診断を受けた報告がある. 女性と男性の差はほぼなし.
□ 
45-64歳で多く報告されている.
■ 
リスク因子は足関節背屈性の低下, 肥満, 長時間の立ち仕事がある.

足底腱膜炎の症状/所見

■ 
疼痛は通常足底の踵付近の疼痛であり, 早朝や休憩後の最初の1歩で最も強くなる. また長時間の立位で増悪する.
■ 
踵内側の触診による圧痛が最も一般的な所見.
足の受動的な伸展により増悪することがある.
■ 
エコーでは, 足底筋膜厚を評価し, 足底筋膜炎患者では有意に肥厚を認める. (MD 2.00mm[1.62-2.39])

足底筋膜炎の治療

■ 
Self-limitedの経過であるが, 数カ月〜数年持続することもある.
 
□ 80.5%[73.5-85.6]が1年後も症状が残存.
 
□ 44%[35.9-51.8]が15年後も症状が認められた.
■ 症状を誘発するような運動を避ける.
またストレッチ, 装具の使用, 局所注射(ステロイド)などを組み合わせる.

アキレス腱症

■ 慢性経過のアキレス腱障害は, 腱の踵骨付着部, またはアキレス腱の中間部に障害が生じることが多い.
■ アキレス腱付着部よりおよそ2-6cm上方に疼痛を生じる場合(アキレス腱中央部障害), 他のタイプよりも保存的加療で改善しやすい.
 
□ 繰り返す微小な外傷に対する治癒反応の異常による変性であり, コラーゲン繊維の消失やIII型コラーゲンの増加が認められる.
□ アキレス腱症の頻度はおよそ0.2%程度
 
 陸上競技に参加する選手では6%が罹患していた報告もある
・ランニングが最も多い誘因となる活動.
・また高齢ほどリスクとなる. 男女差は無し
・キノロン系抗菌薬もリスクとなる

アキレス腱症の症状/所見

■ アキレス腱の中央部に疼痛があり, 安静→活動時に疼痛が誘発される
□ 疼痛は軽い運動で軽快するが, 高強度の運動や長時間の運動で増悪.
■ 所見ではアキレス腱中央部(付着部〜2-6cm)の圧痛と触知可能な肥厚を認める(健側と比較する)

□ Painful arc sign: 足関節の背屈/底屈時に, 圧痛を伴う腫脹部位が移動する所見
 感度 42%[23-62], 特異度 88%[74-96]
□ Royal London Hospital test: ニュートラルボジションで認めたアキレス腱の圧痛が, 足関節の背屈と共に消失する所見.
 感度 54%[34-73], 特異度 86%[72-95]

■ アキレス腱症の診断後に, アキレス腱断裂が認められる例が4.0%.
□ 50-59歳で最も多い(4.3%)
■ 断裂時には強い疼痛が出現し, その後早期に改善する経過となる.
■ 断裂の他の症状としては下腿近位筋の筋痙攣, 患側足の脱力感, つま先立ができないなど.
 所見としては腱の連続性の消失, 足首の後部の出血斑,
スクイーズテスト(感度 96%[93-99], 特異度 93%[75-99])が挙げられる.

アキレス腱症の治療

■ 疼痛が強い患者や歩行が困難な場合は早期に整形外科コンサルト.
保存的加療でも改善が乏しい場合もコンサルトを行うべき.
■ 保存的加療ではEccentric trainingが推奨.
 
□ 段差のある場所に立ち, 患側足の母指球に全体重をかけ, 足首を底屈させた状態で開始する.
 
□ その後, 踵を前足部よりも下の位置までゆっくりと下ろし, その後に健側の足も使用して開始位置まで復帰させる.
 
□ 1日2回, 3セット(1セット15回). 最初は患側の膝を伸展させて, 次に膝を軽度屈曲させて行う
□ 1年後のアキレス腱に関連した症状の有意な改善が証明されている

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