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石川県の変わった地名

加賀市沿岸部で見た地図が変?

 先日、旅行で沿岸部を走行中に現在の場所を確認するためマップ(iPhoneに標準搭載されているもの)を開いたら地図上に、カ、ヨ、よ、ろ、は、、、と疎に表示がありました(文章だけでは何のことかさっぱりわかりませんね)。
おそらくこれらの文字は地名だと思い、試しに文字を押してみると(確か、ヨ を押したのかな?)住所が石川県加賀市美岬町ヨとなっており、やっぱり「ヨ」というのは地名でした。
 ここまで読んでてもさっぱりなんのことかわからないと思うので写真をあげます。

マップ
石川県加賀市美岬町付近


ヨを押すと(文字部分を押すとその文字が太くなる)確かに地名であると分かる。


上図を見てわかると思いますが、付近には浜山、加保山、尻谷山といった普通の地名がある一方で、わ、れ、子といった一文字のものが点在しています。平仮名、カタカナ、漢字と様々。
 この先も(福井県から石川県に向かっている)一文字表記のものが続きました。
 新堀川を渡ると甲、乙とハ、ニという文字が目につきもしやと思い付近を見ると、イハニホへリヌと甲乙丙を見つけました。(前半部分では、ロとトとチが見つけられませんでしたが)これはいろは歌の最初の部分と十干の最初の4文字です。
 これは沿岸部だけでなく内陸側でもこの傾向は続きます。JR線沿いを見ると、福井県では一文字表記は一切なかったものが、石川県に入るとすぐに「エ」という文字があり、大聖寺駅、加賀温泉駅、動橋駅、粟津駅までこの地名が続きます。

(次の小松駅まで行っても一文字表記は見られるが、前川の少し手前から〜丁目という表記が表れるため、顕著に見られるという意味で粟津駅までにした。しかしこれは駅前だけであり、少し離れると一文字表記が一般的となった)

次の小松駅ではこの傾向が弱まりますが、その次の名峰駅からは再び一文字表記となります。


レレレ、ソソソと並んでいることがわかる

 手取川を越え、JR美川駅辺りに来ると同じ文字が連続して並んでいる場所がありました。またこの手前には、ルルル…、ヲヲヲ…という並びもありました。
 当然これらは別の地名であり、上図の「レ」を例にとると右端の「レ」は、美川今町レ、3つ並んでいる「レ」はそれぞれ美川新町レ、美川北町レ、美川中町レと別の地名です(ちなみに美川中町と美川南町もあり、そちらは「ロ」でした)。

金沢市三口町付近
水、木、金、土と曜日であることが分かる
金沢市三口町付近
少し離れると火が

突然GoogleMapsになりますが、そこは気にせず。
どうやらこのエリアでは曜日(火〜土まで)がありました。

二文字表記でも変わった地名が


卯乙

 まずはこちら。
卯乙と、干支(十二支+十干)です。
読み方はきのとう、おつぼつのうさぎ、おつぼくのう、いつぼう、といっぱいあるようです。
西暦でいえば最近だと1975年、2035年。干支は60年で一周(12と10の最初公倍数のため)するため、これに60を足し引きすれば他の年も分かります。歴史でしばしば干支を冠した出来事が登場しますが(有名な出来事として壬申の乱:672年、戊辰戦争:1868年、辛亥革命:1911年など。さらに甲子園:1924年完成、もある。)、卯乙を冠したものに馴染みがない(Wikipediaには卯乙の倭変:1555年が載っている)ので初めて聞きました。ちなみに今年は癸卯(みずのとう、きすいのとう、きすいのうさぎ、きぼう)です。

そろそろ閑話休題。次は数字が使われている例。数字というと◯丁目◯番というように頻繁に用いられているますが、ここでは漢数字のものを紹介します。

小松市野田野町付近
上図から少し北に行ったところ

四四、四五、四七…、下図では弍九、弍七と普段あまり見ない方の「2」を使った地名です。

小松市蓮代寺丁目付近

この辺りでは、数字+ 十干の組み合わせです。(右上にはル乙、と カタカナ+ 十干が見られる)

ここから離れている石川県の能登半島でも、一文字表記の傾向がありました。さらにより能登半島の先端(北)に近い珠洲市や輪島市では少し違う傾向がありました。


珠洲市上戸町付近
珠洲市三崎町付近
珠洲市宝立町付近


輪島市町野町付近


 地名+一文字(十干、十二支、いろは歌など)です。

 ここで突然ですが、一枚目の画像に話を戻します。一枚目を少し南に移動させたものが下の画像。

加賀市美岬町付近

 子というのは十二支の子(ね)。さらに元大畠ト、元千崎ムと、地名+カタカナもありました。

「武宇為」という文字が

 最初は「武宇為」という並びを見ても何とも思わなかったのですが、これはいろは歌を変体仮名(平仮名の異字体。あ→阿、安など、い→伊、以など、う→宇、有など…)にしたものです。常ならむ有為の奥山の「む有為」の部分を平仮名にしたものです。
 ただ白山神社の北側にある興の異字体の意味は分からなかったです。 

 1枚目の画像以降様々な場所から変わったものを探しましたが、ここら(加賀市美岬町)だけで、いろは歌のカタカナ、平仮名、十二支、地名+カタカナ、いろは歌の変体仮名と紹介したほとんどがここだけで完結できたことになります。

 しかし様々な場所を探し、能登半島でも変わった地名を見つけられたので結果として良かったと思います。
 また下記サイトではさらに変わった地名について言及しています(このサイトを見て変わった地名を探すことにしました)。

 ただの文字列かと思いきや、実は耕地整理区と書かれていたり、千葉県旭市にもあったりと…。
 特に何かの言葉になっているのではないかと探しましたが、見つかりませんでした(ただ単に知識不足なこともあると思います)。 

 ただ曜日に関しては自分で見つけ(最初に木金土を見つけ)、検索をかけ、ゼンリンのTwitterからさらに火、水を見つけました。

白山市森島町付近

これも先ほど同じでいろは歌を変体仮名にしたものです。「ちりぬるを」の「ちりぬ」の部分です。

なぜ、このような地名なのか

 ここまで長々と変わった地名を挙げてきましたが、やはり理由を知りたいですよね。

 上のサイトを参考にします。
 どうやら「地租改正」が関わってくるようです。
地租改正というのは、これまで租(=年貢)として米を収めていたものを各地域の地租(=土地の税金)を地価の3%(不満による一揆が多発したための地に2.5%)納めるように定めたものです。
 ・このとき各土地ごとに「イロハニホヘト…」「甲乙丙丁…」などの「地番」が使われました。それが地租改正後も残ったということです。
(ただし都市部(金沢市と野々市町)は住居表示を変更したためこれには当たらない)
 ・その後、昭和の大合併や平成の大合併で住所が変わったところもあるが、地図を見る限り150年ほど経っていることを考えると、かなりの地点で残っているという印象です。
・ある程度の街では、〜丁目という表記だが(都市部の方が地名変更をしている傾向にあるだろうから)、少し外れると一文字表記が多い印象です。

最後に

 地図を見ていて偶然このことに気づけ、記事にしました(石川県には多くの場所で使われている為ただこれまで石川県に来たことがなかっただけかもしれません)。一文字表記の場所は非常に範囲が狭い為、ルーズにするとすぐ地図から地名が消えてしまう為探すが大変でした(またかなり拡大した状態のため広範囲を探すのが大変)。
 探すためのコツとして、住居表示の対象となった金沢市と野々市市の街のエリアは〜丁目が多いため避ける。ただし市内でも街から少し外れると一文字表記が表れる。また金沢駅の北側にある西念町では〜丁目とイの表記が混じりそれはそれとして貴重である。 
 また、ある程度住宅がある場所でないとそもそも地名が少ない。ただ一文字表記の変わった地名を探そうと思えば、少し山の方を探すのも良いと思う。

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