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傘に意識を向けたい

 私はしょっちゅう傘をなくす。今年に入ってまだ2ヶ月も経っていないのにすでに2本なくした。

 1本はしかも、お気に入りの傘で2代目だった。1代目との意図せぬ別れのあと、悲しみの淵でもう二度と離すまいと固く決意して再び呼び寄せたのに、一年も経たずにまた自ら手放してしまった。

 これ。緑の色がめちゃくちゃ好みで、ビニールだけどいい具合に高級感があって、本気でずっと愛せると思ってたのに。
 「一生大事にするよ」とか言って、2度も不義理をしてしまったらもう信じてもらえない。

 そして今日、今年2度目をやってしまった。会社から帰る電車を降りて、駅を出て雨が降っているのを感じてやっと気づいた。
 今日はコンビニのビニ傘だったのでまだダメージは少ないが、ちりつもである。

 私が傘をなくすのはだいたい電車の中だ。端の席に座り、手すりのところに長傘を掛けたまま忘れて降りてしまう。これがお決まりのパターン。今まで多分15本はなくしてきたけど、8割方このケースだ。本当に学ばない。
 長傘でなければいいのかというとそうではなく、折りたたみ傘だと濡れているのを手に持っているのが邪魔で床に置いてしまってなくすというパターンもある。

 お気に入りとの別れも2回とも電車の中だった。しかもあれだけ気に入っていたのに気づいたのはどちらも翌日とか数日後だった。
 降りたとき雨が降っていなかったからだ。
 一応電鉄には問い合わせしたが、取られてしまったのか、出てこなかった。

 三十路も過ぎたのでいい傘のひとつやふたつ持ちたいところだが、これではなくすのが怖くて500円のビニ傘しか買えない。
 傘をなくさない方法をそろそろ本気で編み出したい。どこかに掛けたり置いたりしないで手に持っていればいいじゃないかと思われるだろう。自分でもそう思う。でもそう思ってからかれこれもう10本くらい、なくしているのだ。無意識に放してしまうのだ。

 たぶん私にとって傘はすごく意識から遠いところにあるモノな気がする。雨が降っていなくても傘の存在を意識できるようになりたい。
 しばらくの間雨が降っても傘なしででかけて、傘の有り難みを感じまくったら傘のことをもっと気にかけられるようになるだろうか。

 明日も東京は夕方から雨のようだ。この先2週間ほど雨がちになるらしい。

 いい傘が欲しい。でも自分が信じられない。
 人生には悩みが尽きない。

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