012: 『頭のおかしな男の昔話①』

2023年1月26日(水)の備忘録 2 of 2

 祖母が信仰していたと記憶している不動明王にすがり、呪いの言葉を訴えました。「老人相手にオレオレ詐欺を仕掛ける奴がいる」「病み上がりの俺に架空請求詐欺の電話をする奴がいる」「この電話の後でも他の人を詐欺のカモにする」不動明王は仏法の守護神として見逃すのか?僕はもう限界だ!

 「どこかの住宅マンションを事務所にして集まって、詐欺電話を専門に架け続けているんだろ?!住宅のガスコンロのガス管にヒビが入ってガス漏れを起こしてしまえ!漏れたガスが充分に溜まったところで、タバコを一服するために火をつけろ!ガス爆発してマンションの部屋ごと吹っ飛べ!死なない程度に火だるまになって焼け出されるがいい!」

 九字を切った後で、恐る恐る携帯に耳を当てると、音も声も聞こえないのが不思議でした。ただ、まだ電話が繋がっている状態でしたので、送り付けた呪が戻ってきたら不味いと思って携帯をブッチ切りしました。日本の法律では呪で人の命を奪っても罪に問われることはありません。ただ、仏様の罰は当たりますけどね。

 僕が息を切らして、ゼイゼイしているので、父親が不審に思い、部屋に入ってきて「どうした?」と聞いてきました。「詐欺の電話が架かってきて、恐かった。」と答えたら。「そんなもん、すぐに切ってしまえ!」と言って僕から携帯を取り上げました。父親は携帯に向かって怒鳴っていましたので「もう、電話は切ったよ」と言って、とりなしました。その後は、「僕は無力な人間で何もできなかったけど、気は済んだから良いかな。まぁ、運が良ければお不動様が願いを聞き入れてくれて、やつらに仏様の罰が当たるだろう」と、僕は落ち着いた気持ちになりました。

 そんなことも忘れた、お正月のテレビを見ていた時の事だったと思います。全国のニュースがいくつか流れていました。そのニュースのひとつに僕はクギズケになります。あるマンションでガス爆発が起こります。消防隊が消火活動で部屋に入ったところ、火災が起きた部屋の中に携帯電話が100個以上散乱した状態を不審に思い、消防隊員が警察に通報したというのです。現場に駆け付けた警察官が応援を呼んで、捜査員が事情聴取をしたところ、ガス爆発の起きたマンションは『架空請求詐欺』の電話を専門に行う『かけ子』の事務所として使っていたマンションであることが暴露されたとのことでした。マンションの所有者にも捜査の手が伸びて所有する複数のマンションで架空請求詐欺が運営されていたことが分かり、その後、いくつかの詐欺グループが摘発されたそうです。

 『僕が詐欺電話を受けた事』と『詐欺グループが摘発された事』は、まったくの無関係な話なのでしょう。ただ、ガス爆発でマンションの部屋が丸焼けになったのにも関わらず、焼死した人がひとりも出なかったと、記憶しています。記憶しているというのはネットで約20年前のニュースを検索してみたところ、記事を見つける事が出来ませんでした。ひょっとしたら、僕の幻覚かもしれません。全国ニュースだったので、ニュースを記憶している方はいますでしょうか?

 お不動様は背中に炎を背負っている姿で有名ですが、悪さをした人でも、炎で人を殺すことはしない、優しい仏様なのではないかと思っている次第です。『頭のおかしな男に詐欺の電話を架けてはいけない』というお話でした。

ありがとうございました。

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