011: 『頭のおかしな男の昔話①』

2023年1月26日(水)の備忘録 1 of 2

約20年前にあった話です。

『架空請求詐欺の電話』

 精神病院から退院して数か月が経過した後に、実家で療養をしている時でした。確か、年末が近づいた頃だったと思います。その当時の僕は、精神的に疲れ切っている状態でした。精神病院を退院したとはいえメンタルはボロボロだったのです。そこへ僕の携帯に見知らぬ電話番号から着信がありました。

 それは、若い男性の声でインターネット動画サービスの高額な未払い料金を請求する電話でした。僕は全くの身に覚えのない利用サービスの請求でした。つまり、噂の架空請求詐欺の電話だったのです。精神病で病み上がりの人間に『架空請求詐欺の電話』をされた時の精神的ショックは、詐欺の電話だと分かっていても傷害罪が成立するのではないかと思えるほど苦痛でした。

 恐くて、まるで全身が焼かれヒリヒリする感覚に包まれました。「精神病で自宅療養している最中に詐欺の電話を架けてくることないだろ。」『恐怖』と『絶望』、『怒り』と『憤り』、『人生の理不尽』。様々な感情が沸き起こりました。

「絶対に使っていません!」「絶対に使っていません!」「絶対に使っていません!」僕は三度、畳みかけるように怒鳴りつけました。

 その時、ふと気が付いたことがありました。「コイツは専門の詐欺集団の一員だ。これまでに僕以外にも電話を架けているし、今後も架け続けるだろう。」そして、僕の心の中に義憤が沸き起こり「どうにかしてやろう。でも、自分はあまりにも無力だ。しかも、何もできない」と思いました。次に、こうも思いました。「どうせ私は頭のおかしな人間ですよ。恐怖と怒りの炎で心が浄化されて純粋になっているのを利用しようじゃないか。」そうです、子どもの頃に祖母に教えてもらった『早九字護身法』を使おう。右手の人差指と中指を立て刀に見立てた『刀印(とういん)』を用い、空に格子模様を描き結界を張る(九字を切る)ことにしたのです。

 ガチ切れした僕は、怒りに任せて「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」と九字の呪文を心の中で唱え、携帯電話に向かって刀印を降り下ろしました。その当時付き合いのあった霊感の強い友人に九字を切る所を見てもらったことがあります。九字を切った瞬間に指先から三角定規のような影が飛び出して飛んでいくのが見えたそうです。ただ、同席した別の友人の指先からは早九字を切っても、何も出ていないということでした。

 思いっきり、携帯電話に向かって(当時はガラケーでした)指先から念が飛び出して携帯電話に叩きつけるイメージで刀印を何度も降り下ろしました。まだ、通話が繋がっていると思いました。だから、声は一切出さずに九字の呪文を心の中で唱え、刀印を降り下ろしました。素人の僕が、携帯を通して遠隔でどれだけのことができるか分かりませんでしたが、我を忘れて狂ったように、九字を切って刀印を降り下ろしました。

(つづく)

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