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【エッセイ】蛙鳴雀躁 No.15

 2月14日午後1時開演。花組公演『アルカンシェル』。
 千秋楽はもう少し先ですが、私と娘たちにとって、れいちゃん (柚香光様)&まどかちゃん(星風まどか様)の舞台を観る最後の日となりました。
「コンビもえ」という俗語がありますが、まさに彼女たちがそれでした。
 この2年半、愉しませてもらいました。
 
 本作の演出家である小池修一郎先生は、二人をさして、「正しく運命の神が定めたコンビ」と公演プログラムに書いておられます。

 宝塚大劇場で『うたかたの恋』は三度、上演されています。
 初演は、麻実れいさん&遥くららさんでした。この時は、四千人収容の旧宝塚大劇場だったこともあり、入りが悪く、観劇に行く日は午前の部は3階で観て、午後からは1階で観ていました。
 いまは亡き柴田侑宏先生の傑作ミュージカル。どうして、満席にならないのか、残念でなりませんでした。
 幕開き、大階段に、深紅の絨毯が敷かれ、そこに白の軍服姿の麻実さんと純白のドレス姿の遥さん。幕が降りる前は、白一色の雪景色が紙吹雪となって二人を包む――。
 ヨハン・シュトラウスの名曲「美しき青きドナウ」の調べとともに忘れがたい作品でした。
 二度目は、麻路さきさん&白城あやかさん。
 このお二人も、美しいコンビで見飽きることがありませんでした。
 夢が叶ったと思いました。
 まさか、大劇場で三度目があるなんて――。
 昨年1月、れいちゃん&まどかちゃんの『うたかたの恋』が上演されて、観ている間中、夢心地でした。

 今回の作品でも、「美しき青きドナウ」が随所に流れていました。

『ドナウ、ドナウ
 そを巡る、追想は
 靄のごとく
 我らを包むのだ』

 儚く贅沢なひとときを、ありがとうと心の中で言いながら家路につきました。
 いつかどこかで、「正しく運命の神が定めたコンビ」の舞台が観られる奇跡の日を願って……。

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